IDFといえばIntelの新製品発表の場であるから、それなりに新製品や新コード名のラッシュとなるのは何時もの事ではあるが、それにしても今回の新製品ラッシュは壮絶なものがあった。そんなわけで、とりあえずは直近の話題であるPenrynについてまとめてみたい。
Penrynの正体
Intelはかねてから2年毎に新アーキテクチャを投入することを公言している。逆に言えば、今回投入するPenrynは、新アーキテクチャというわけではなく、あくまでもMinor Version Upということになる(Photo01)。
Photo01:Intelの"Tick Tock"モデル。PenrynはCore 2のプロセス微細化&マイナーバージョンアップ版で、2008年のNehalemが新アーキテクチャ、2009年にはこれを32nm化したWestmereが投入され、2010年にはまたもや新アーキテクチャのSandy Bridgeが投入される。 |
では、どんなVersion Upが行われたかという事をまとめたのがこちら(Photo02)である。Wider Dynamic ExecutionについてはRadix-16 Dividerとセマフォ関連命令の高速化、それとIntel VT関連命令の高速化、L2キャッシュは容量を6MBに拡張、Smart Memory AccessについてはSplit Load Cacheの改良とStore Forwardingの改良、及びFSBの高速化が挙げられている。Advanced Digital Media BoostはSSE4の搭載とSuper Shuffle Engineの搭載が、また省電力に関してはDeep Power Down Technologyの搭載がそれぞれ挙げられている。これらについてもう少し細かく説明してゆきたい。
Wider Dynamic Execution
まずWider Dynamic Executionだが、基本的には従来のConroe世代と全く違いがない。これに関してMooly Eden氏(Photo03)は「Penrynは、アーキテクチャレベルではMeromと同じであり、マイクロアーキテクチャレベルでもMeromと同じ。ただしちょっとしたTweak、つまりRadix-16やSuperShuffle Engineといったものが追加されているだけだ。我々はこの世代では45nmプロセスの移行に主眼を置いており、必要以上の機能を追加するのはリスクが高くなりすぎる。言ってみればPenrynというのはMelomからちょっとした外科手術、例えばFace Liftingを施すようなもので、アーキテクチャ全体の見直しといった大掛かりな外科手術を施すわけではない。そうした見直しは次のNehalemで行うことになる」とラウンドテーブルで語っており、結果として言えばデコーダ~リオーダバッファに関して言えば(SSE4対応でデコーダに多少のエントリが追加されたほかは)ほぼ手付かずといって良い。
現行のCore Microarchitectureで弱点とされる64bit周りの機能不足(例えばMacroOps Fusionが使えないといった話)に関しても、Pat Gelsinger氏(Photo04)によれば「そうした改良は行っていない」との事で、従って基本的な部分には全く手が付いていない事になる。ただそうは言っても現在のCore Microarchitectureが十分高いIPCをたたき出している上に、45nm世代で大幅な動作周波数アップが期待できるとあって、基本的にはこれはそれほどウィークポイントとは判断されていないようだ。
Photo04:Senior Vice President, General Manager, Digital Enterprise Groupの、やはりお馴染みPat Gelsinger氏。IDFが終わったあと上海経由で来日し、20日に日本で行われた発表会に出席。発表会の直前に「お前、いつ帰ってきた?」「昨日の夜11時にウチに着いた」「俺もホテルに着いたの昨日の夜11時だ」なんて会話を交わす。Exectiveというのも大変である。 |