アドビ システムズは、11月8日に東京・丸の内のJPタワーにてクリエイティブフェスティバル「Create Now / PLUS ONE DAY」を開催した。ここでは、アドビ製品のツールを使用するためのコツやユニークな使用方法を様々なジャンルのクリエイターが披露した同フェスティバルのセッションから、代官山スタジオ 映像プロデューサーの藤本ツトム氏が、4Kオーバーの動画から切り出す静止画の可能性を語ったセッションを紹介する。

藤本ツトム氏

代官山スタジオで動画を扱うようになった経緯

藤本氏が映像プロデューサーを務める代官山スタジオは、主にフォトグラファー向けのサービスを行うスタジオであり、動画制作のサポートを行うようになったのは最近になってから。動画を扱うようになったのは、映像作家に動画から静止画を切り出す方法を問われることが多くなったことや、4Kフォーマットが写真のフォーマットに近いと考えるクリエイターやフォトグラファーが増えてきたためだという。

藤本氏は、これはフォトグラファーを経験した自分の考えですがと前置きして、「2K(HD)サイズの映像では、写真のデリケートなライティングや繊細なレタッチが見えませんでしたが、4Kの映像からはそれが見えるようになりました。さらに、4KカメラでRAWデータが収録できることも写真出身のクリエイターにとっては魅力的で、写真で培ってきたRAWデータの現像技術が役立てます」と語り、写真の技術を持ったクリエイターにしかできない映像を作りたいとコメントしている。

Premiere Proが実現した写真と動画のクロスオーバー

今回のセッションで紹介されたソフトはPremiere Proだ。同ソフトを使用する理由として、プロフェッショナル向けの動画編集ソフトであること、そして、ほとんどの業務用フォーマットにネイティブで対応し、簡単な操作で現像が行えることを挙げている。なお、現像という作業が存在しなかった動画編集業界の方法でRAWデータを扱おうとすると、かなり手間の掛かる作業になってしまうとのこと。この点について藤本氏は「写真の世界と動画の世界が近づき、クロスオーバーが発生している時期は初めてだと思います。それを可能にしたのはハイエンドで大きな筐体の動画編集専用システムではなく、Premiere ProをはじめとしたPCベースの環境です」と語った。

Premiere Proを使った静止画切り出し作業などを実演

Premiere Proを使って動画から静止画を切り出す作業の実演も披露されている。作業の手順は、切り出したいコマを選んだ後に、フル解像度表示を行ってフォーカスなどを確認し、問題がなければフレームを書き出すためのボタンをクリックするだけだ。書き出す際にファイル形式を選ぶこともでき、書き出した画像はPhotoshopで読み込んで、必要に応じてレタッチなどが行われる。こうした作業は、実際の業務でも導入されており、広告などでも撮影した動画から静止画を切り出して印刷物に流用する機会が増えているという。動画から静止画を切り出して流用すると、コスト削減や制作時間短縮といった大きなメリットがあるため、広告代理店などには最初からこのスタイルを提案することもあるのだとか。

解像度に関する解説は図解を交えて行われた

ただし、動画の解像度は72dpiで撮影されているのに対して、印刷物は300~350dpiがベースとなっているので注意が必要。たとえば2K(HD)の動画から切り出した静止画は、印刷物にすると写真のサービス判程度のサイズとなってしまう。それが4Kであれば、4倍の面積の印刷物に対応可能だ。さらに大きな、新聞広告などに使用する画像は4Kカメラでも対応できないので、スチールカメラでの撮影も提案している。5Kや6Kのカメラも登場しており、6Kであれば切り出した静止画でA3サイズの印刷物に対応できるため、今後はさらに大きな印刷物作成も動画から切り出すスタイルで行われるようになるだろう。また、動画はストロボを使った撮影は行えないが、最近ではカメラ側の機能によって対応できるようになっているとのこと。

セッション終盤で藤本氏は、現在の4Kカメラは片手で持てるほど小型化しており、スチールカメラと同じ感覚で撮影することができる。そのため、ファトグラファーが動画に進出し、RAWデータの現像技術なども含めたファトグラファーにしか撮影できない動画作品も増えるだろうと語っていた。