メガネは視力矯正に大切だが……

インターネット上で見かける「これ、本当? 」などと感じる健康に関する「都市伝説」の真偽に迫る本連載。今回のテーマは「度が合っていないメガネやコンタクトレンズと視力の関係」だ。

近視や乱視などの目のトラブルを抱えている人にとって、メガネやコンタクトレンズは日常生活のQOL維持のために必要不可欠だ。

特にメガネはいい物を1つ購入すると、長年にわたって使用する人も少なくない。いい物であるがゆえに、「最近、ちょっと見づらくなったな……」と感じていても、結局見えているため、買い替えを控えていないだろうか。ただ、ちょっと待ってほしい。これまでにこんな話を聞いたことはないだろうか。

「度が合っていないメガネ・コンタクトレンズを使用し続けると、視力が低下する」。

もしもこの話が本当ならば、不要な視力悪化を招いている可能性がある人が、多数いることになる。果たして、このいわれは単なる「都市伝説」なのか、それとも真実なのだろうか。

あまきクリニック院長の味木幸医師に話を聞いてみると、この都市伝説は「真実」だという。

「昔はいろいろな理由から、子どもには度数が弱めのメガネをかけさせる風潮が眼科医の間でもありました。ただ、ごく最近は、仮性近視ではない固定した『近視』『遠視』『乱視』には、適切なフル矯正に近いメガネをかけさせる方が良いと考えられる傾向にあります。子どもも大人も、その個人特有の生活習慣によっては、メガネの度を変える方がよい場合もあります。コンタクトレンズも同じです」。

近視を引き起こしている可能性

日本人の多くが近視とされているが、この近視は度が合わないメガネやコンタクトを使用することで引き起こされている可能性があるという。

私たちは物を見る際、"レンズ"の役割を果たす「水晶体」の周囲の筋肉(毛様体筋)を収縮させて"レンズ"の厚みを変えることで、対象物にしっかりとピントを当てる。近視用のメガネは毛様体筋の調整範囲を手助けし、遠くの物も見やすくしてくれるが、度が合っていないレンズの使用は毛様体筋の調整力を弱めてしまう。結果として、さらに視力が損なわれてしまうわけだ。

「人間は生まれてから成人するまでに視力が変化し、40歳以降は眼球そのものが変化するなど、見え方が年齢によって変わります。そのため、メガネが一生にわたって同じ度数であることは珍しいです。毛様体筋の調節力は、生まれた瞬間から65歳頃までほぼ直線的に衰退することを知っていてください。また、極度に近くを見る作業の多い受験生や、デスクワーク族などの職業の人は、その近い距離に合っているメガネも必要です」。

自分の目に合わないメガネやコンタクトを使用していると、視力が低下するだけではなく、眼精疲労や頭痛、吐き気などといった症状を引き起こすことも。「見えているから問題ない」などとメガネやコンタクトを買い控えていたら、「自身の健康」というこれらのアイテム以上に高価な"対価"を支払わないといけなくなることを覚えておこう。

※写真と本文は関係ありません

記事監修: 味木幸(あまき さち)

あまきクリニック院長、慶緑会理事長。広島ノートルダム清心高校在学中に米国へ1年の留学。米国高校卒業後に母校に戻り、母校も卒業。現役で慶應義塾大学医学部入学。同大学卒業後、同大学眼科学教室医局入局。2年間の同大学病院研修の後、国家公務員共済組合連合会 立川病院、亀田総合病院、川崎市立川崎病院・眼科勤務。博士(医学)・眼科専門医取得。医師として痩身や美肌作り、メイクアップまでを医療としてアプローチする。著書も多数あり。