低炭水化物ダイエットを行う際の注意点は?

数あるダイエット法の中でも、男女問わず浸透しつつあるのが「低炭水化物ダイエット」。ごはんやパンなどの炭水化物の摂取量を減らしてやせるダイエット法だが、適切な方法を守らないと、脳や体臭、体の老化へも影響することをご存じだろうか。

今回は、低炭水化物ダイエットの注意点について、医療法人社団一信会 ティーアイクリニック 理事長の田原一郎医師にお聞きした。

低炭水化物ダイエットとは?

低炭水化物ダイエットとは、1日の食事の中で炭水化物を減らしてやせる方法だ。主な炭水化物は、ごはん、パン、麺類など。特に夜の炭水化物を減らす人が多い。

このダイエットのメカニズムについて、田原医師は次の2点をあげる。

やせる理由1. 摂取カロリー減少

「炭水化物のカロリーは4kcal/gなので炭水化物を減らせば、単純に減らした分のカロリーを抑えられます」。

やせる理由2. 血糖値への影響

「炭水化物は摂取すると糖質となりますので血糖値が上昇します。血糖値が上がるとインスリン分泌量の増加により、摂(と)った食事が脂肪になりやすくなります。また、時間が経つと急上昇の反動で急下降し低血糖になりますが、低血糖になると脳が糖を必要とすることで、食欲が異常に高まる食欲亢進(こうしん)の原因になります」。

つまり、「摂取カロリーが減る」点と、血糖値への影響により「脂肪になりにくくなる」「食欲亢進を防ぐ」という3つの流れがやせるメカニズムになるというわけだ。

極端に行うと、脳やニオイなどに影響

このように効果的なダイエットだが、どんなダイエットも"やりすぎ"は禁物だ。低炭水化物ダイエットを極端に行った場合、どんなマイナスの影響が起こり得るのかについてもしっかり理解しておこう。

影響1. 集中力の低下、無気力

「三大栄養素の一つである炭水化物を摂取すると、分解され糖質となります。糖質は脳の栄養に必須のものであり、極度の不足により、集中力の低下や無気力の原因になり得ます」。

影響2. ケトン臭

「炭水化物摂取量が極度に不足すると、体は脂肪を分解してエネルギーを得ようとしますが、それにより"ケトン臭"が発生します。このケトン臭は口臭のほか、汗や尿を介して体臭の原因になる可能性があります」。

影響3. 老化

「極端な制限で筋肉量が減ると基礎代謝量も下がります。基礎代謝量が減少すると、脂肪の燃焼効率が落ちます。また筋肉量の減少により、糖質代謝も低下します。ひいては老化の原因になり得るので注意しましょう」。

食べ順も大切

「健康的かつキレイにやせる」ためにも、低炭水化物ダイエットをする際の注意点を覚えておこう。

「極端に摂取制限をしすぎないことが大切です。厚生労働省より定められている『日本人の食事摂取基準』での『三大栄養素産生バランス』において、摂取カロリーの50~70%は炭水化物によるものが推奨されています。このバランスで食事摂取をすると代謝効率が上昇するというもので、総カロリーのうちこの比率程度は摂取するのが望ましいと思われます」と田原医師。

そして、「"食べ順"により血糖値の上昇を防ぐことができるといわれており、食物繊維、タンパク質、炭水化物の順に摂取するとより効果的です」と語ってくれた。

ダイエットをしていると、"短期間でもっとやせたい"と欲が出てしまいがちだが、無理にやせても健康被害が出てしまっては意味がない。低炭水化物ダイエットのように、やせるメカニズムが確立しているダイエット法だからこそ、適切な方法で行うようにしよう。

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記事監修: 田原一郎(たはら・いちろう)

医療法人社団 一信会 ティーアイクリニック 理事長

平成11年に日本医科大学医学部を卒業後、日本医科大学附属病院 第一外科に勤務。平成19年より平成立石病院や都内美容クリニックなどで実績を積む。 平成24年に医療法人社団 一信会 ティーアイクリニックを開院。同クリニックが監修する糖質制限食専門レストラン「TI DOCTORS RESTAURANT(ティーアイドクターズレストラン)」のオーナーも務める。


医学博士
日本医科大学大学院 分子生物学分野
学位論文;Systemic Cancer Gene Therapy Using Adeno-associated Virus Type 1Vector Expressing MDA-7/IL24
アメリカ遺伝子治療学会にて講演後、Molecular Therapy(Impact Factor 7.149)掲載
日本外科学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医