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鉄道ニュース週報

86 阪急電鉄の伊丹空港連絡線構想は「勝算あり」実現性は高い?

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長らく都心直結線を持たなかった伊丹空港に、阪急電鉄が鉄道乗入れを検討中だという。9月1日、全国紙などが一斉に報じた。宝塚本線曽根駅から分岐し、大深度地下を通って伊丹空港を結ぶ。路線長約3~3.5km、予算は約1,000億円から数千億円と、記事によりばらつきがある。いずれにしても、実現すれば梅田~伊丹空港間の鉄道最短ルートとなる。

阪急電鉄が伊丹空港への鉄道乗入れを検討していると全国紙などが報じた

現在、伊丹空港に乗り入れる路線は大阪モノレールのみ。この路線は⼤阪中⼼部には向かわず、北側から東側へ回り込むルートとなっている。現在の終点は京阪本線と接続する門真市駅。他に蛍池駅で阪急宝塚本線、千里中央駅で北大阪急行線、山田駅で阪急千里線、南茨木駅で阪急京都本線、大日駅で大阪市営地下鉄谷町線というように、途中駅で大阪中心部から放射状に延びる路線と接続する。将来はさらに9km南下し、東大阪市の瓜生堂駅まで延伸する計画がある。もともと堺市までの環状線として計画された路線だ。

大阪モノレールの伊丹空港乗入れは1997年だった。この路線のおかげで、⼤阪中⼼部の多くの地域から乗換え2回以内で伊丹空港に到達できるようになった。大阪中心部へ向かう最短時間は蛍池駅で阪急宝塚本線に乗り換えるルートで、所要時間約25~30分となっている。ちなみに空港リムジンバスだと、梅田までの所要時間は最短で約30分だという。

報道の通りに阪急宝塚本線の支線が伊丹空港に乗り入れるとどうなるか。現在の阪急宝塚本線の時刻表を見ると、梅田~曽根間の所要時間は準急で11~12分。そこから約3kmの延伸というと、曽根~豊中間に相当する。所要時間は約4分。梅田~曽根~豊中間は15~16分。遅くともこの程度の所要時間で梅田~伊丹空港間を運行できるだろう。大型投資案件であり、都心~空港直結をアピールしたいはずだから、曽根駅乗換えは考えにくい。

梅田駅から伊丹空港まで最速で結ぶ列車を設定するとどうなるか。阪急宝塚本線では急行も設定されていて、停車駅は梅田駅・十三駅と豊中~宝塚間各駅となっている。梅田~豊中間の所要時間は12分。十三駅通過という大胆なダイヤを組めば10分で到達できそうだけど、現状では特急「日生エクスプレス」も十三駅に停車するから、ノンストップ特急はなさそう。12分でも梅田~伊丹空港間直通効果は大きく、現在の蛍池駅乗換えの約半分となる。ライバルがいない状況で無理をする必要はない。

阪急宝塚本線曽根駅付近(出典 : 国土地理院ウェブサイト)

建設予算の約1,000億円は、約3kmという距離で考えれば相場通りといえる。地下鉄の建設費はキロあたり約200億~300億円、駅の建設費も約200億~300億円といわれる。伊丹空港新線は約3kmで1駅の新設。少なめに見積もっても約800億円、多めに見積もると約1,200億円となる。

数千億円に膨らむと予測する報道もあるけれど、これはおそらく、新線を複線で建設した場合、曽根駅で分岐させるには地上高架部分の拡幅や用地買収が必要になるからだろう。ただし、航空写真を見る限り、曽根~岡町間は線路の西側に余地があり、上下線の間に留置線もある。そんなに難しくはなさそうに見える。約3kmであれば単線の整備でもいいかもしれない。単線であれば、留置線部分を地下へ降ろしていけばいい。

このあたり、阪急電鉄がもともと伊丹空港への分岐を考慮して作ったのではないかとも思える。曽根駅付近は1994年に上り線が高架化、1997年に下り線も高架化され、2000年に現在の2面4線の駅が完成した。線路脇の余地はこの高架工事の名残といえるけれども、新線分岐の余地として確保しているようにも見える。一部は豊中市の施設になっている。この施設の移転を解決できれば、すぐにでも工事に着手できそうだ。阪急電鉄は新大阪駅乗入れのための用地を確保しておくなど、用意周到なところがある。

阪急電鉄は1970年代にも伊丹空港乗入れを計画しており、先に計画されていた神戸本線の神崎川駅と曽根駅を結ぶ急行線に接続しようというプランがあったようだ。この急行線は宝塚本線の乗客増に対応するためだったといわれている。急行新線なしには伊丹空港方面列車の梅田駅乗入れは難しいと判断され、急行線計画の中止とともに空港新線の計画も立ち消えになった。

1991年に成田空港へJR東日本と京成電鉄が乗り入れ、1998年には羽田空港へ京急電鉄が乗り入れた。1992年開業の新千歳空港駅、1993年開業の福岡空港駅などの成功例を見れば、伊丹空港駅はもっと早く阪急電鉄が乗り入れても良かった。これまで阪急電鉄が慎重だった背景には、伊丹空港の立場が不安定だったからかもしれない。

伊丹空港の正式名称は「大阪国際空港」。開港は1939(昭和14)年で、戦前は軍民共用、戦時中は陸軍の軍用空港となり、終戦後は占領軍の伊丹エアベースとなった。民間空港としての再出発は1958(昭和33)年から。1970年に2本目の滑走路が長さ3,000mで新設され、大型旅客機に対応した。1994年に関西国際空港が開港すると、国際線は関空へ移り、伊丹空港は国内線専用空港となった。

伊丹空港は大阪郊外の田園地帯に作られた。その後、市街地の拡大で空港周辺に住宅が増えた。一方、大阪の発展とともに伊丹空港の発着回数は増え、機材の大型化、ジェットエンジン化によって騒音問題が大きくなった。夜間飛行差し止めを求め、住民から国に対する訴訟も起きた。さらに1970年代から、「関空を建設し、伊丹空港を移転する」というプランが取り沙汰された。阪急電鉄が当初の空港線計画を取りやめた背景には、「いつか消えるかもしれない空港のために線路を作れない」という事情があったようだ。

しかし関空が着工し、伊丹空港の廃止が検討される頃になると状況が変わる。「関空は大阪都心から遠くて不便、伊丹のほうが便利」という声や、航空機の技術の進化で騒音が減り、付近の環境も整備されたことから、沿線住民や自治体などが態度を一変し、廃止反対方針となる。伊丹空港は国内線専用空港として存続が決まった。

関空の経営が思わしくなく、関西の政財界が関空の支援に傾くと、当時の大阪府知事は再び「伊丹廃止、関空に一本化」の方針を掲げた。これでまた伊丹空港の存続が危うくなりかけた。結局、国の空港民営化の方針に沿う形で、2012年に関空と伊丹空港は経営統合され、関空の赤字を伊丹空港の黒字が補うという枠組みが決まった。これで伊丹空港は存続、関空と棲み分ける形で落ち着いた。伊丹空港アクセスに投資できる環境が整った。

一方、阪急電鉄は「なにわ筋線」北梅田駅(仮称)と十三駅を結ぶ連絡線構想を表明している。将来は新大阪駅への延伸も視野に入れている。この路線はJR西日本や南海電鉄と合わせた軌間で建設される予定で、宝塚本線とは直通できない。しかし十三駅で乗換え可能となるから、大阪南部や新大阪駅から伊丹空港へのアクセスも改善される。

航空業界に目を向ければ、伊丹空港のアクセスが改善されることで、東京~大阪間の新幹線の乗客に対して優位性をアピールできる。リニア中央新幹線や北陸新幹線の新大阪延伸などで落ち込むと思われた国内線航空にとっても朗報だ。そうなると、阪急電鉄に対して航空業界から支援も考えられる。

少子化時代を迎え、関西圏の大手私鉄も沿線価値向上に力を入れている。新居を構える住民の奪い合いになるからだ。その点で阪急電鉄は、伊丹空港、関空、新幹線、リニアへのアクセスを手中に収めることになる。伊丹空港乗入れは阪急電鉄にとって勝算あり。むしろ、やらなくてはいけないプロジェクトかもしれない。この路線の実現性は高そうだ。

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第86回 阪急電鉄の伊丹空港連絡線構想は「勝算あり」実現性は高い?
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