年末年始の海外旅行シーズンが近づいてきました。現地での移動手段として鉄道を選ぶこともあると思いますが、「海外旅行で車窓を撮っていたら、フイルムを没収された」「列車で盗難にあった」という話を耳にしたことはありませんか。今回は、海外旅行中に鉄道を利用したときの撮影について解説します(国名などの設定は架空です)。

テツヤくんはつい先日、休暇を取って海外旅行でA国へ行ってきました。空港から市街地へ向かう交通手段は、リムジンバスもしくは鉄道。リムジンバスでの移動が一般的なようですが、日本でも鉄道撮影の場数を踏んできたテツヤくんは、思い切って鉄道を利用しました。この国の鉄道は、昭和時代の日本を思い起させるような懐かしい雰囲気を漂わせています。まず駅に入って驚いたのがホームの低さ。人々は線路におりて、自由に線路を横断しています。日本では通常、線路に近づきたくても近づけない状況ですから、テツヤくんは大興奮。人々に続いて線路に入り1枚、また1枚と夢中で撮影しました。ふと気が付くと、周りの人が何かを言っています。この国の公用語は英語ではないので、何を言っているのかさっぱりわかりません。気になって周囲を見渡すと、線路にはもう誰もいなくて、直線のレールのはるか先には列車の影が……!!

人々は自由気ままに線路を渡っていたわけではなく、周囲の安全をしっかりと確認していたようです。それが、A国のルールなのですね。さらにもう1点、テツヤくんはタブーをおかしていた様子。ホームに荷物を置いて乗車の順番取りをしていたのですが、現地の人がその荷物を指差して注意をしているようです。テツヤくんは、撮影に夢中になって周りの空気が読めなくなってしまっていたのですね……。どの国に行っても、公共交通としての鉄道の性質は大抵同じです。トラブル回避のためにも、危険なことをしない、危ないところへは行かない、貴重品は身につけるといった公共の場での当然のルールを守るようにしましょう。

慌ててホームに戻ったテツヤくん。少しすると、懐古感ある列車がやってきました。車内には広告もアナウンスもなく、のんびりとした様子。テツヤくんは普段、車移動が多いため、列車に乗るのが久しぶり! テンションが上がり、再びシャッターを切り始めました。しかし、「あれっ!? なんだか僕だけ浮いてる!? 」と我に返りました。電車の中でくつろいでいる他の乗客にとっては、さぞかしテツヤくんの存在は異質だったことでしょう。

鉄道撮影はその土地に住む人々に溶け込む努力をするとスムースに行えます。前回は鉄道撮影のワンランク上のテクニックとしてこのことに触れましたが、今回言っていることはツーリストとしての一般常識です。せめてあいさつ、その土地の習慣やタブーは覚えておきたいものです。

また、海外旅行時に持っておくと便利なのが「指差し会話」の本。テツヤくんも、向かいに座っている人に「写真を撮ってもいいですか? 」と現地語で書かれたページを指差して見せました。すると快くOKしてもらい、素敵な写真を撮ることができました。「人を撮影したい時には必ず許可をもらう」。これは日本だけではなく、海外でも同様です。これらのことを頭に入れ、楽しい旅にしてくださいね。

ミニ情報
危機管理は自分で。外務省の「海外安全ホームページ」
一見平和そうでも、臨戦態勢にある国は意外に多いもの。外務省「海外安全ホームページ」で最新情報をチェックしてから出かけましょう。また、海外には撮影禁止と言われている軍の列車や施設などもあるようです。実際にそういった施設を目にした人の話によると「明らかに、他の列車や施設とは気配が違う」とのこと。とにかく、危険な場所や特殊な地域には近づかないように注意しましょう。もしカメラを構えていたときに注意されたら、すぐ従うというのもツーリストのマナーといえるでしょう。