前回は都会の駅撮りについて解説しましたが、今回は小さな町の小さな駅に注目します。「駅撮り」といっても、駅の規模によって注意点や、コツが変わってくるのです。コツを掴んでスマートに撮影を楽しんでみませんか(鉄道名や駅名、路線図などの設定は架空です)。

前回に引き続き、マイコミ鉄道一日フリーきっぷで気ままな日帰り撮影旅行を楽しんでいるテツヤくんは今回、「間井東駅」で下車しました。何度か近くを車で通り、風情のある駅舎が気になっていたからです。駅員さんは1人だけで、昼間は上下線とも30分に1本程度の列車が来るといったのんびりムードの駅です。

下車してホームにいるのはテツヤくん1人。そのうち、駅を独り占めしているような気分になってきたようです。撮影が終わった後も、ホームの端の安全で眺めがいいところで、のんびりと撮影した画像の整理を始めました。

しかし、ふと気が付くと、自分1人だと思っていたホームにはいつの間にか人が増えていて、中には記念撮影をする人がいたり、じっとテツヤくんを見ている人もいます。テツヤくんが移動すると、その場所に次々と人がやってきました。テツヤくんが立っていた場所は、誰から見ても魅力的な撮影スポットだったのですね。

鉄道撮影のシャッターチャンスの少なさ、ベストポイントの狭さを知っているなら、どんな時も譲り合う気持ちを持っていたいものです。撮影した場所で延々と画像整理をする人の姿もよく見かけますが、やはり近くで人の動きがあるとソワソワしてしまいます。誤ってデータを消去したりしないためにも、家に帰ってから落ち着いて作業をしましょうね。

のんびりした駅には、のんびりとしたペースの人の動きがあります。しかし駅員さんはたった1人で様々な業務をこなしていることも多く、見た目とは違ってかなり忙しいこともあります。鉄ちゃんとて一般の乗降客と同じ。必要以上に駅員さんに話しかけるなどの行為は避けましょう。

テツヤくんは次に、以前から気になっていた駅舎に目を向けました。みんなから愛されている小さな待合室には、常連の鉄ちゃんたちが撮った新旧の鉄道写真が飾られていて、中にはさっきテツヤくんが撮影したものとよく似た構図の古い作品もありました。駅も、駅周辺もあまり変わっていないのですね。

駅舎に写真の展示があった場合、特に注目したいのは古い駅撮り写真です。明治・大正といった写真がまだ珍しかった時代から高感度フィルムが発売される30年ほど前までは、鉄道写真といえば動いていない列車をバランスよく画面におさめる駅撮りが主流でした。まだまだカメラを扱える人が少なかった時代の作品ですから、現在の「駅撮り=お手軽」という先入観を捨てて、しっかり鑑賞したいものです。

駅舎が改築されていても、ホームの基本的な構造は昔からさほど変わっていない場合が多々あり、古い写真が撮られた立ち位置が今でもベストポイントであることもあります。どこから撮ったのか、その場所は現在どうなっているかをチェックする習慣をつけると、鉄道撮影の奥深さがわかってきますよ。念のため付け加えますが、これまでの回でも書いた「鉄道施設を撮る時にフラッシュ撮影は禁止」「立ち入り禁止場所には入らない」といった大前提をお忘れなく。

ミニ情報
JR信越線、羽越線、磐越西線新津駅の4,5番線ホームに注目!
SLばんえつ物語号の車庫がある新潟県の新津駅は、数年前に新しい橋上駅(駅舎機能を2階部分に集約している駅のこと)になり、ホームも新しくなったように見えます。しかし、4,5番線ホームの新潟寄りのみ、柱が古いままなんです。雪国らしい太い木の柱。ここで聴く、広い構内に響く蒸気機関車の汽笛は鳥肌モノです。
新津駅のように、部分的に昔の面影を残しているホームは珍しくありません。もしかするとあなたの住む町にもあるかもしれませんよ。