「sweet オトナミューズ vol.3 2013 AUTUMN」

アラフォーも30代向けの雑誌を読んでいる!?

雑誌の表紙を見ていると、「30代」とか「30歳」という文字をよく見かけます。現在売っているものだと、「InRed」には「30代女子は価値ある2万円が好き!」とありますし、「Lips」には「リアル30代のモデルがおしゃれに30日間!」と。また、「オトナミューズ」には「35歳が今本当に買うべき靴&バッグ」とあり、その雑誌のターゲットが見えてきます。

ところが、この「30代」に向けて作られた雑誌、たまたまでしょうが、ことごとく40代の人が表紙を飾っているのです。「InRed」の表紙の篠原涼子さんは40歳、「Lips」のCHARAさんは45歳、「オトナミューズ」の梨花さんは40歳。この人選を見ていると、いまの30代雑誌というのは、40代前半の人、つまりアラフォーの人たちも読んでいると考えてもよさそうです。

アラフォーは40代向けの雑誌を敬遠!?

では、40代雑誌はどうでしょうか。今売っているもので見てみると、「STORY」の富岡佳子さんは44歳、「GLOW」の鈴木京香さんは45歳、「大人のおしゃれ手帳」の大塚寧々さんは45歳。みんな40代ではありますが、40代半ばの人が多いようです。

となると、もしかしたら、アラフォーと呼ばれる35歳から45歳くらいまでの人は、「40代雑誌」を敬遠しているという可能性も考えられるのです。

というのも、女性の心理としては、若く見られたいとまでは言わないにしても、年相応でいたいもの。ホンネを探ると年相応よりちょっと若々しいといいなという気持ちはあるでしょう。だとすると、無理して40歳の人が45歳のおしゃれをマネしたいとは考えにくいのではないでしょうか。

「40歳のおしゃれ」はバブルの感じ

そんな中、ほかの雑誌とはまったく逆を行っているのは、「40代のおしゃれ259センス」という大特集を組んでいる「DRESS」です。この雑誌のカバーモデルは38歳の米倉涼子さん。

実年齢よりも若い女性をもってくるところは、今の「ちょっとだけ年相応より若くいたい」と思う女性の心理をついているような気もしますが、やっぱり「DRESS」に限らず、女性誌が「40歳のおしゃれ」として掲載するものは、エレガントでコンサバで、ラグジュアリーで……というものが多くなり、バブル時代を知っている人のファッションという感じが漂ってくるのです。

もしかしたら、今のアラフォーが納得して「自分たちの雑誌だ!」と思えるものは少なく、30代向けだけど「同年代の梨花が表紙だから許して!」と思いながら30代雑誌を読むしかなくないという状態も考えられます。

雑誌の中にリアルなアラフォーが不在

では、なぜ40代向け雑誌は、今のアラフォー向けとは違ってしまうのか。これは予想になりますが、「アラフォー」という言葉のイメージが、2008年に流行語大賞をとったときの「アラフォー」で止まってしまっているからではないでしょうか。あれから5年も経ち、アラフォーを構成するメンバーが半分も入れ替わっているのに、その消費の傾向がかわっていることにはあまり注目されていない気がするのです。

今のアラフォーは1~2年の違いでバブルを通っていません。その少しの差ですれ違っていることから、余計にバブル的な価値観のファッションや消費に違和感を抱いていることも多いでしょう。だから、ゴージャスに見える華やかなワンピースの着こなしよりも、こなれて見えるリアルクローズの着回しのほうが重要という人も多いでしょう。

しかも、今のアラフォーは、団塊ジュニアと呼ばれるベビーブーマーで、一学年に200万人以上もいるボリューム層なのです。だからこそ、この市場を獲得しようと続々と40代向け雑誌が創刊されたりするのですが、そこで言う「40歳」というのが、いまいち実在の「40歳」の人々とはなんとなく離れてしまっている気がします。雑誌の中に、リアルなアラフォーが不在に見えるのは、なんだかもったいなくて仕方がありません。

<著者プロフィール>
西森路代
ライター。地方のOLを経て上京。派遣社員、編集プロダクション勤務を経てフリーに。香港、台湾、韓国、日本などアジアのエンターテイメントと、女性の生き方について執筆中。現在、TBS RADIO「文化系トーラジオLIFE」にも出演中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に『女子会2.0』(NHK出版)などがある。