「美的」12月号

「ダメ」という見出しが踊る女性誌

今月は、「ダメ」という見出しがけっこう踊っていました。

例えば「美的」は、「ダメな女がムダ金使う!」という大特集が。内容を要約すると、ダメな女は、美容にかけるお金の使いどころ、抜きどころがわかってない。だから、お金をかけるツボを知ることで、美容の賢者になってうまいこと自分に投資をしましょうという趣旨のようです。また、自分のダメなところを自覚することで、賢く生きましょうという経済的な面でのメッセージもあるような。

一方、「Domani」の11月号では、「35歳、働くいい女の"ダメー女"懺悔録」というページがありました。こちらは、完璧な女もいいけれど、ダメな女も悪くないよねというもので、「付き合うのがダメンズばかりだけど同じような人しか好きになれない」というものや、「ヒマな人と思われたくなくてリア充のふりをしてしまいます」など、30代女性のリアルなダメエピソードが並んでいます。みんなダメなところのひとつやふたつくらいあるよね、だから、ダメな自分を吐き出して認めてあげましょう、というデトックス的な内容かと思われます。

ダメ出しの特集が多いのはアラサー向け雑誌

いろんな女性誌を見てみると、ダメ出しの特集が多いのはアラサー向け雑誌のような。例えば、「BAILA」の11月号にも、「30歳『女の曲がり角』を正しく曲がる!」という特集が。記事によると、「30歳は女の変わりどき」なので、これまで似合っていた甘い服も似合わなくなり、肌の調子は変わり、「今までとは何かが違う」と気づく年代らしい。

また「AneCan」にも、「"かわいい"と"イタイ"ここが境界線!」というページがあり、今までのように「かわいい」ことにばかり頼っていると、単なる「イタい」人になってしまうぞ、ということが書かれています。

ほかにも、「AneCan」の中には、「どうする? 30歳からの"自分プロデュース"」というページもあります。その中で、湯山玲子氏の語る「30代の声を聞くと、周囲の環境は急に厳しくなる。古株は追い出され、目の前に広がるシビアな現実に凍りつく」という言葉がしみてきます。

アラサーにとってダメ出しはありがたい!?

「BAILA」や「AneCan」を読んでいると、なんでも許されていた20代から、自分のことは自分で責任を持たないといけなくなるのが、アラサーや30代だというメッセージが見えてきます。

そして、当のアラサー女性たちは、こうした現実を初めて突きつけられるお年頃なので、先回りして、自分の悪いところは教えてほしいと思っているということはあるかもしれません。だから、ちょっと手厳しくてもダメ出しはありがたいことなのかも。

「ダメ」という言葉が使われているわけではありませんでしたが、「VoCE」12月号では、「坂上忍が斬る! こんなブスは嫌いだ」というページもありました。こちらは、男の本音を見てわがふり直そうというもので、「一日にタオルを50枚使う」とか「車の中でクッキーを食べだした女性にキレて即座に降ろした」など、どちらかというと、自分自身にも「ダメ」なエピソードも多い坂上氏が、「証拠を残したがる女」「携帯を見るという犯罪を犯す女」「付き合ってることを確認したがる女」などブスな女の行動を切りまくっています。

女性たちはダメと向き合い徐々に強くなっていく

個人的には、30代になったからといって、突如、世間から厳しい目を向けられること、同時に、それまでは何でも許される風潮があるなら、そこには疑問を感じます。ただ、その対処法として、日本の女性たちは、ダメと向き合い、そして徐々に強くなっていって、いつしかどんな目を向けられても「ガハハハ」と笑える力に変えていくのかも。

そういえば、女性にあえて苦言を呈したり毒舌を言ったりする人って芸能界にはすごく多い。先ほどの坂上氏に加え、オバ様方に毒舌を穿きまくる毒蝮三太夫氏や綾小路きみまろ氏などなど。そんな方々の需要が尽きない意味がなんとなく見えてくるようです。

<著者プロフィール>
西森路代
ライター。地方のOLを経て上京。派遣社員、編集プロダクション勤務を経てフリーに。香港、台湾、韓国、日本などアジアのエンターテイメントと、女性の生き方について執筆中。現在、TBS RADIO「文化系トーラジオLIFE」にも出演中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に『女子会2.0』(NHK出版)などがある。