料理に洗濯、掃除…毎日やっているのに、尽きることはない「家事」。「もっと楽にならないか?」と皆が思っているのではないでしょうか。そんな面倒な家事を「収納の見直しで、楽にする」提案をしているのが、整理収納コンサルタント 本多さおりさんです。

『家事がしやすい部屋づくり』(マイナビ/2015年1月/1,250円+税)

本多さんは、家庭向けにコンサルティングを行う整理収納のプロフェッショナルとして、整理収納サービスを展開。ブログ「片付けたくなる部屋づくり」では、自宅(団地の2K)で実際に行っている収納術を紹介しており、1月15日には5作目の著書『家事がしやすい部屋づくり』(マイナビ/2015年1月/1,250円+税)を出されています。このインタビューでは、本多さん流収納術やおすすめグッズ、実は苦手な家事まで、「本多さんに聞きたい家事・収納のこと」をまるっとご紹介しちゃいます。

お仕事について

--整理収納サービスはどのような人が利用しているんですか?

本多さん「コンサルティングを受けるお客様で多いのは、忙しい共働き家庭です。『片付けの仕事』というと、『片付けられなくて汚部屋に住んでいる人を対象にしているんじゃないの?』と思われがちですが、実はある程度掃除や片付けに興味がある人の問い合わせが多いです。収納を変えて、家事や作業がしやすい家を作りたいという方が多いですね」

--家の中ではどこを依頼してくる人が多いですか?

本多さん「やっぱりキッチン! 毎日頻繁に使う上、調理器具や調味料などがたくさんあるところですから。台所を整えて効率よく料理をしたいという人がかなりいらっしゃいますね。キッチンは使いづらくても、『こんなものか』とそのままにしておく人が多いんです。毎日不便な環境で料理を続けているので、それが習慣化しているんですよね。『毎日使う鍋だからもっと取りやすいところに置こう』など改善点がたくさん見つかるエリアですね」

コンサルティング依頼が多いキッチン(『家事がしやすい部屋づくり』より)

苦手な家事について

--苦手な家事はありますか?

本多さん「実は、料理が苦手なんです」

--意外ですね!

本多さん「料理は家事の中でもあまりやりたくないことなので、とにかくサクサク済ませられるようにしてます。そのためには、収納を整えておくことが一番大切。キッチンが片付いていないと料理のやる気が置きないですし、ものの配置が悪いと、いちいち行ったり来たりしゃがんだり背伸びをしたりを繰り返さないといけない。うんざりしちゃいますよね。でも、収納を整えると、調理中もサッサッとものを出せる。時短にもなりますし、『こんなにサクサク料理をしている』と、ちょっと"悦"になれるという効果もありますね(笑)」

--キッチンの収納はどのようなところを意識していますか?

本多さん「超1軍だけをオープン収納にしています」

--超1軍とは?

本多さん「調理バサミなど、毎日何度も使うものです。『吊るす収納』ってありますよね。一見、デッドスペースも利用出来るのでよく見えるんですけど、あまり使わないものを吊り下げておくと、ホコリがたまって掃除もめんどうくさくなるので逆効果なんです。でも、全てをしまうと、使用頻度が高いものは毎回出し入れしなくてはいけない。ですから、毎日何回か使うような動きがあるものだけを選別して、片手のワンアクションで取れるようにしておくんです。料理の効率もグッとあがりますよ」

本多家のキッチンは「超1軍」だけオープン収納(『家事がしやすい部屋づくり』より)

好きな家事について

--好きな家事はなんですか?

本多さん「掃除ですね。家事を何のためにするかというと、『心地良く暮らす』ためで、掃除はその最たるものですから。お客さんの家で掃除をするのも全然苦では無いです(笑)」

--整理収納コンサルタントなのに、お掃除もするのですか?

本多さん「私は『掃除』と『収納』はセットだと考えています。お客さんの家に行くと、ものが散らかっていることがあるんですね。その環境では、必然的に掃除も行き届かない。いちいちどけて掃除するのって面倒くさいじゃないですか。ですから、収納に悩んでいるお客さんにも『掃除がしやすいように収納する』ということをポイントとしてお伝えしています。なるべく床にものを置かないとか、細々したものは用途でグルーピングしてボックスなどにまとめるとか。それだけで自然と掃除がしやすい環境になります」

「掃除」と「収納」はセットで考える(『家事がしやすい部屋づくり』より)

2Kの団地での生活

--団地にお住まいとのことですが、収納面で苦労したことは?

本多さん「奥行きのある押し入れの空間を活用するのに四苦八苦しました。ものは1つ1つが細かいので、わかりやすくしまうのが大変なんですよね」

--押入れ収納はどのように改善を?

本多さん「元々私と夫が持っていた無印良品の引き出しや棚を入れ、足りない部分は追加して組み合わせていきました。また、押し入れ用ハンガーラックや強力つっぱり棒も役立ちました。衣類は使用頻度によって分類して収納しているのですが、奥のデッドスペースにつっぱり棒を渡して、礼服やシーズンオフの服など、使用頻度の低い服を掛けています。強力つっぱり棒は本当に使えるので、どんどん増えていきましたね(笑)」

--押し入れに2人分の持ち物が全部収まっているんですか?

本多さん「ほとんど入っています。布団に2人分の衣類、ちょっとした仕事の資料も。天袋には、シーズンオフの服や夫の柔道着などを収めています。収納スペースはそこしか無いですが、収納力は十分にありますし、ものもそこに収まる分だけにしようと思うようになりましたね」

--2人分の衣類も収まるってしまうのはすごいですね!

本多さん「服は買わなくなりました! ものを家に入れる上での判断基準がすごく高くなったんです。前は『安いしいいかも』と気軽に服を買っていたんですが、過去になんども失敗したものを捨て精査した結果、『こういうものは結局着ない』とか、安かろう悪かろうはやっぱりあるということがわかるようになってきました。今では買う数も持っている服の数も減りましたね。

今は『フランス人は10着しか服を持たない』(ジェニファー・L・スコット/大和書房/2014年10月/1,400円+税)という本に感銘を受けて、ワードローブのコンパクト化を実践しようとしているところです。10着はどうしても難しく、12着をスタメンにして、それ以外は奥に吊るしたり、たたんでおいたりしています。12着に絞ったことで、押入れのハンガーラックにゆとりが出来、使いやすくなりました。いちばんお気に入りの服だけを選抜したことで、毎日のコーディネートも迷わず楽なんですよ」

2人分の衣類やアイテムはほとんどこの中に収まっている(『家事がしやすい部屋づくり』より)

居心地の良い部屋づくり

--居心地が良い家を作る上で大切にしていることは何ですか?

本多さん「清潔にすること。潔癖症ではないので、くつろいだときに、ゴミとかホコリが見えないようにするぐらいですが。あとはためないこと。ゴミとかホコリがあって『汚いな』と思いながらも週末に後回しにすると、その期間はホコリを目にしながら暮らさないといけない。そうすると気になってくつろげないんですよね。ですから、掃除用品は気づいたらぱっと取れるようにしています。掃除にとりかかるのも楽ですね」

【中編では、本多さん流「分類のルール」を紹介します。】


本多さおり
「暮らしを楽しむための整理収納術」で人気の整理収納コンサルタント。2010年より開始したブログ「片付けたくなる部屋づくり」では、コンサルタント実例の他、著者の住まいである2Kの団地部屋での収納テクニックを披露している。5冊目となる著書『家事がしやすい部屋づくり』(マイナビ/2015年1月/1,250円+税)では、「家事が楽になる」という視点に基づいた収納事例を紹介している。