北陸新幹線の開業に期待が高まる。JR東日本・JR西日本は、開業人気で乗客が増えると見込んで増発列車を発表した。JR東日本の報道資料は、発駅と着駅の紹介にとどまっていたけれど、JR西日本の報道資料は途中停車駅の時刻も記載されていた。そこで、当連載第25回で作った定期列車のダイヤに臨時列車を反映させてみよう。

当連載第25回で紹介した北陸新幹線列車ダイヤ。丸で囲った部分に不自然な長時間停車がある

当連載第25回で紹介した北陸新幹線の列車ダイヤは、開業に先駆けて報道発表された時刻表をもとに、列車ダイヤ描画ソフト「Oudia」で作成した。時刻表は定期列車のみ掲載されていた。線の色は赤が「かがやき」、青が「はくたか」、紫が「つるぎ」、緑が「あさま」だ。よく見ると、「あさま」は軽井沢駅、「はくたか」は上越妙高駅で停車時間が長い列車がある。きっとこれは臨時「かがやき」のための通過退避ではないか、と予想した。

それでは、JR西日本の報道資料を元に臨時列車を描き加えよう。臨時列車は同じ色の点線に設定した。

6月30日まで不定期に運行される臨時列車を描き加えた。点線が臨時列車だ

北陸新幹線の臨時列車は大半が「かがやき」だ。朝夕だけではなく、日中も「かがやき」が運行される。定期列車の「かがやき」は午前中と夕方以降の設定で、おそらくビジネスマンの出張重要を見込んでいるのだろう。臨時列車は日中も走るから、早朝出発が苦手な人や、暗くなる前に目的地に到着したい人も、最速列車「かがやき」を体験できる。

そして当連載第25回のダイヤと今回のダイヤを比べてみると、定期列車で不自然な停車時間だった駅で、予想通り臨時「かがやき」が通過していた。つまり、北陸新幹線のダイヤは、あらかじめ臨時列車を設定して作られている。閑散期は定期列車のみ運行し、繁忙期は需要に応じて臨時列車を運行する。あらかじめダイヤは設定済みだから、臨時列車を走らせるために、定期列車の時刻を変更する必要はない。臨時列車を走らせるためには車両も必要になる。だから臨時列車の運行を前提として車両をそろえているといえる。

臨時列車を反映したダイヤを眺めると、まだまだ隙間が多い。東海道新幹線の過密ダイヤを考えると、北陸新幹線もさらに増発できそうに思える。しかし、これは現実的には難しい問題だ。このダイヤには描かれていないけれど、東京~大宮間は東北・山形・秋田新幹線の列車が走っている。東京~高崎間は上越新幹線の列車も走っている。それぞれの区間の列車を、このタイヤに反映させてみよう。

東京~高崎間に他の新幹線列車を反映させた。北陸新幹線を目立たせるため、路線や種別の色分けはしない。黒の実線が定期列車、黒の点線が臨時列車。後に明らかになった「あさま」の臨時列車も反映させた

ひと目でわかるように、東京~大宮間は過密ダイヤになっている。東北新幹線系統、上越新幹線、北陸新幹線が合流するからだ。天候不良などでダイヤが乱れると、この区間は列車が詰まる。上り列車に乗っていて、大宮駅から先はノロノロ運転になる。「ただいま東京駅のホームが空くまで待っています」という放送を聞き、「こんなことなら大宮で降りて湘南新宿ラインに乗れば良かった!」なんて思うわけだ。

こんな状態だから、北陸新幹線で東京駅に直通する「かがやき」「はくたか」はもう増やせそうにない。もし増やすなら、列車を増やすより、「あさま」の運転股間を延長して「かがやき」「はくたか」に変更した方が良さそうだ。あるいは、ダイヤにゆとりのある区間だけ列車を増やす方法も考えられる。大宮~金沢間、高崎~金沢間の増発だ。

上越新幹線は、当初の計画によると新宿駅を起点としていた。大宮~新宿間に新幹線の線路を作り、新宿駅の地下にホームを作る計画だった。現在もその地下空間は確保されているという。東北・上越・北陸新幹線の乗客が増え続けるなら、新宿駅発着列車について、あらためて検討する必要もありそうだ。