今では、テレビ番組をレコーダーに録画して観ているという方が多いだろう。しかし、最近、録画した番組を観ていて、びっくりさせられるのが緊急地震速報だ。録画した番組の中にも、しっかり緊急地震速報も録画されている。あの特徴的なチャイムを急に耳にすると、録画であることを忘れて、身構えてしまうのだ。
今回の東日本大震災で、多くの人が緊急地震速報のありがたさを身にしみて理解した。わずか5秒とか10秒前に知らせてくれるだけだが、それでも心の準備はできるし、倒れそうな家具の横などという危険な場所から、安全な場所に移動するという時間もできる。
一方で、BDやDVDを観ているときや、HDDに録画した番組を観ているときは、リアルタイムに報じられている緊急地震速報を知ることはできない。それが不安で、録画した番組やBDを観るのをなんとなく控えていた人もいるのではないだろうか。
ところが、面白いことを耳にした。シャープのBDレコーダーには、なんと「BD、DVDや録画した番組を再生中であっても、緊急地震速報が流れた場合は、テロップなどが現れて、お知らせをしてくれる」という機能があるのだ。
詳しく説明すると、次のようなものだ。
- BDディスクを再生しているとき→「このチャンネルで緊急警報放送が放送されています」というテロップが表示される。BDの再生を停止すると、リアルタイムの放送が表示されるので、緊急地震速報を見ることができる。
- DVDやCD、HDDに録画した番組を再生しているとき→「緊急警報放送が放送されているため再生を停止しました」というテロップが表示され、リアルタイムの放送に自動的に切り替わるので、緊急地震速報を見ることができる。
つまり、レコーダーの番組を観ているときでも、緊急地震速報が流れていることを見逃さないというわけだ。今の状況では、ありがたい心遣いだ。
面白いのは、この機能、シャープのサイトにあるBDレコーダーの商品情報ページにも記載されていないし、取り扱い説明書にも記載がない。いわば「隠し機能」なのだ。どうして、このような機能を「隠し機能」にしているのかはよくわからない。現在のテレビやBDレコーダーといったAV機器は、ほとんどコンピューターのようになっていて、このような地震速報への対応機能もソフトウェアでおこなわれる。開発途中で、エンジニアが「このような機能があると便利だ」と考えて、入れてみたものなのだろう。しかし、その機能は商品企画をするときにあまり注目はされなかった。ソフトウェアの機能を削るというのは手間がかかることなので、この機能はそのまま残された。それが、このような震災があって、にわかに注目されるようになったということではないかと思う。
ところで、取り扱い説明書に記載されていない"隠し機能"をどうして消費者が知ることができたのだろうか。このようなレアな情報を消費者に教えてくれるのは、メーカーの販売員だ。大型量販店にいくと、2種類の店員がいることに気がつかれている方も多いだろう。ひとつはその量販店の社員、もうひとつがメーカーから派遣された販売員だ。メーカー販売員は、シャープならシャープのロゴが入ったシャツをきているのですぐわかる。
このようなメーカー販売員は、あたり前の話だが、自社の商品知識は豊富にもっている。このような隠し機能についてももちろんだし、すでに購入した消費者からのレスポンスなども情報としてもっていて、商品を適切に紹介してくれるのだ。
ところが、このメーカーから派遣された販売員を毛嫌いする人がいる。「そのメーカーの製品に強引に誘導されるのではないか」という不安があるからだ。これはたいへんもったいないことだと思う。メーカー販売員にしてみたら、自社製品を買ってほしいのは当然のことなので、自社製品のよさをアピールしてくるだろう。しかし、「強引に誘導する」ということは、まずありえないと考えていい。なぜなら、強引な誘導は、消費者がもっとも嫌い不快になる販売方法であって、メーカーのブランドイメージを大きく下げてしまうことになるからだ。そこは、メーカー販売員がもっとも敏感になっているところでもある。販売員は、"強引な方法"ではなく、"説得力のある方法"で、顧客を自社製品に誘導することを考えている。
もっともメーカー販売員が商品選びの助けになるのは、次のようなケースだ。自分の中で、「この製品を購入しよう」と、ほぼ一点に絞ることができたが、まだ踏ん切りがつかないという場合だ。テレビの場合だと、目的の機種よりも機能が単純化された廉価版、あるいは機能がプラスされた高級版がほとんどの場合存在している。「この機種でいいと思うんだけど、ちょっと高いな」あるいは「予算にもう少し余裕があるけど」といった場合は、メーカーの販売員に声をかけて、廉価モデル、目的の機種、高級モデルの違いを聞いて見るといいだろう。メーカー販売員は、自社製品に関しては豊富な知識をもっているので、明快に答えてくれるはずだ。
また、A社とB社の製品のどちらにすべきか迷ったときも、メーカー販売員をうまく活用することができる。A社の販売員、B社の販売員の両方に話を聞けば、商品の違いがよくわかってくるはずだ。
最近は、カタログや雑誌レビューなどを読んで、価格比較サイトなどを利用し、通信販売で家電製品を購入してしまうという人も増えている。もちろん、それはそれでひとつの方法だが、ある程度の価格のものを買うときは、やはり店舗にでかけていって、店員やメーカー販売員の話を聞きながら、購入商品を決めるというやり方も捨てがたい。今回紹介したような「隠し機能」について教えてもらえることもあるし、なによりカタログやスペックでは表せない商品の特徴を教えてもらうことができるのだ。それに、買い物というのはこういうやり取りも楽しいものだ。通販は確かに便利だが、買い物の楽しさを放棄することにもなる、きわめて実用的な方法だということは覚えておいていただきたい。
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