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近年の医学研究では、糖尿病患者は認知症発症リスクの確率が高くなっていることが明らかになってきている。だが、このほどアメリカのワシントン大学の研究チームが、糖尿病でない人々においても、血糖値の高さと認知症リスクの間に有意な関係があることを発表し、話題となっている。

糖尿病の高齢者とそうでない高齢者を約7年間追跡調査

研究はワシントン大学のPaul K. Crane氏らが行い、「the New England Journal of Medicine」にて発表した。

調査は2,076人(男性839人、女性1228人)の平均76歳の認知症ではない高齢者を対象に実施した。そのうち、232人は糖尿病で1,835人はそうではなかった。平均6.8年の追跡調査期間中に、血糖値やHbA1cの数値を個々に複数回測定。その間の認知症の発症と、血糖値のレベルとの関連性を検証したという。

糖尿病でなくても、血糖値が上がるにつれ、最大1.18倍の認知症リスク増

その結果、調査期間中に、524人が認知症を発症。そのうち、糖尿病患者は74人(糖尿病患者全体の約32%)で、糖尿病患者ではない人は450人(同約25%)だった。さらに細かく認知症と血糖値について調べると、両グループで血糖値と認知症リスクの有意な関係が明らかになったという。

糖尿病患者ではない参加者では、認知症発症前の5年間の血糖値の高さと発症リスクの関係が認められた。100mg/dlを基準とした場合、糖尿病ではない105、110、115といった血糖値でも認知症発症リスクは高まっていき、115mg/dlのときは100mg/dlに比べて1.18倍と、有意に増加していた。

糖尿病患者においては、平均血糖値160mg/dlを基準にした場合、平均血糖値が190mg/dlでは、認知症のリスクは1.4倍の増加を認めた。

研究チームは今回の結果を受けて、「糖尿病でない人においても、高血糖は認知症の危険要因となりうる」とまとめている。

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糖尿病と認知症のリスクは避けたいが……

厚労省が今年3月に発表した「2011年国民健康・栄養調査報告」では、「糖尿病が強く疑われる人」とその「予備群」は計27.1%と推計されている。糖尿病はもはや国民病と言っても過言ではなく、「糖尿病が強く疑われる人」の数は緩やかに増え続けている。

一方の認知症に関しては、厚労省が昨年に介護認定データを基に認知症高齢者が2010年の時点で280万人いたと算出。今後、2015年には345万人、2025年には470万人と加速度的に増えていくと推計している。

増え続ける一方の国内医療費を鑑みると、この2つの“大病”の発症数を抑えることは喫緊の課題であり、そのためには個人レベルでの対策や意識付けが必要不可欠となる。

高血糖を防ぐには、健康な生活習慣を持ち、メタボにならないことが大切となってくる。しかし、メタボという言葉は世間に広く浸透したが、肝心要のメタボ対策の柱として2008年から開始させた「特定健康診査」(メタボ健診)の受診率は、今年3月の時点でわずか45%にとどまり、開始5年間の目標値である70%と大きくかい離していた。

高血糖は糖尿病だけでなく、認知症まで招きかねないという今回の結果が、メタボ健診の底上げに少しでも寄与することを願うばかりだ。