チョコに含まれるフラバノールが記憶力向上に関与している可能性が指摘されている

仕事中に小腹が空いたとき、ちょっとした甘いものをつまむ人は多い。その際、「同じ糖分を摂取するならば、少しでも体によい方がいい」ということでチョコを選ぶ人もいるはずだ。カカオポリフェノールが含まれているチョコには、さまざまな健康効果があると言われているが、最新の研究では記憶力向上にも関与している可能性が示唆されている。

海外のさまざまなニュースを伝える「MailOnline」にこのほど、「チョコレートと記憶力」にまつわる記事が掲載されたので本稿で紹介しよう。

チョコレートが注目されている理由は、チョコレートの主原料であるココア豆に豊富に含まれている天然化合物・フラバノールにある。フラバノールは脳を保護しながらその機能を高めるほか、睡眠不足に悩んでいる人を救うかもしれないという。

イタリアのラクイラ大学の研究者グループによって今回、フラバノールを毎日摂取すると、高齢者の注意力や脳の処理速度、作業記憶などが高まることが明らかになった。「今回の研究結果は、ココアフラバノールで認知能力を改善することによって、脆弱な人々の認知機能を保護できる可能性を示唆している」と主任研究員のヴァレンティーナ・ソチ博士は語る。

先行研究は、フラバノールが脳機能に好影響を与えていることを指摘したものが多かったとのこと。そこで研究者グループは今回、ココアフラバノールを食べてから2~3時間以内に脳で何が起こっているのかを研究。さらに一定期間にわたり、チョコレートを多く摂取する食事を続けると、何が起きるのかも併せて調べた。

その結果、ココアフラバノールを摂取すると、記憶力の改善および視覚処理技術の迅速化が示された。また、女性が全く眠れない夜を過ごした後にココアを摂取すると、疲労が多少やわらいだという。研究者グループは、慢性的な不眠症やワークシフトに悩まされている人々にとって、このような研究成果は前途有望なものとみている。

一方、ココアフラバノールの長期摂取(5日~3カ月間)の影響をみるための研究の参加者の大半は高齢者だった。先行研究を再検討すると、高齢者が毎日チョコレートを食べると確かに脳機能が向上することが判明した。注意力や脳の処理速度・作業記憶が飛躍的に向上しており、記憶力の低下もしくは軽度の脳障害を有する高齢者に特に顕著だったという。

※写真と本文は関係ありません


記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)

米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。