Mozillaは6月13日 (米国時間)、Webブラウザ「Firefox」のバージョン54.0の安定版 (Windows/Mac/Linux)をリリースした。Firefox 48で実装され、一部のユーザーのみ有効化されていたマルチプロセス (e10s-multi)が全ユーザーに広がる。Mozillaの製品ストラテジストであるNick Nguyen氏は、e10sの実装を「Firefoxコードの歴史で最大の変化」としている。

マルチプロセスの「e10s」という名称は、Firefoxのプロセスを複数に分けることが電気分解 (Electrolysis)のイメージに近いことから付けられた (Electrolysisは”e”と”s”の間に10文字ある)。マルチプロセス化によって、複数のページを開いた時のブラウザの応答性とスピード、安定性が向上する。

ブラウザで大きなページをロードしている時や入力中などにフリーズするような現象が起こることがある。また、たくさんのタブを開いていて、その中にFacebookのニュースフィード・ページのような重いページがあるとブラウジングのパフォーマンスが鈍ることもある。e10sはブラウザのユーザーインターフェイス (UI)とコンテンツを分離した上で、コンテンツを複数のプロセスに分割する。UIが独立して動作することで、コンテンツにUIが影響を受けるのを回避でき、コンテンツプロセスの分割によって、1つの重いページが他のタブの応答性やスピードに影響するのを避けられる。

すでにモダンブラウザではコンテンツプロセスの分離が取り入れられているが、新たにマルチコンテンツプロセスの問題が生じている。メモリー (RAM)消費だ。Chromeで10個のタブを開くと10の異なるプロセスが動作する。それぞれがメモリーを消費するので、トータルのメモリー消費が大きくなって、タブを閉じずにブラウザを使っているとデバイスのパフォーマンスに影響が及ぶ。Firefoxのe10sはスピードとメモリー消費のバランスが図られている。Firefox 54のコンテンツプロセスは最大4つまで。最初の4つのタブにはそれぞれ独立したプロセスが割り当てられ、5つめからは既存のプロセスに追加される。たくさんのタブを開いた場合に重いページの影響を他のタブが受ける可能性はあるものの、メモリー消費の肥大化を避けられる。

30個のタブを開いた時のMicrosoft Edge、Safari、Chrome、Firefoxのメモリー消費量

e10sのほか、Firefox 54ではダウンロードボタンとダウンロードステータスパネルが改善され、ロケールに「Burmese」が加わった。