既報のとおり「Surface Pro 3」が発表された。ビジネスに使えるタブレットという、従来のコンセプトを踏襲したデバイスだが、ディスプレイは12インチ、2,160×1,440ピクセルに拡大された。米国のプレスイベントでSurface担当Vice PresidentであるPanos Panay(パノス・パナイ)氏が語った「タブレットは便利だが、生産性を持っていない」という言葉に裏付けされた設計である。

「Surface Pro 3」

Surface担当Vice PresidentのPanos Panay氏

ただし、タブレットを取り巻くアプリケーションやサービスが充実すれば、Panay氏の言葉は必ずしも正しくない。プレスイベントの冒頭でMicrosoft CEOのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏が語った「モバイルファースト、クラウドファースト」という戦略と相反するからだ。

例えばオンラインストレージは当初、単にファイルを共有する場だったが、プレビュー機能を備えたことで、クラウド上の閲覧環境を実現している。さらにOffice Web AppsのようなWebアプリケーションを用意することで、タブレットだけで生産性を向上させることも可能だ。もちろんPanay氏はSurface Pro 3のアピールと、タブレットとノートPCを併用する現状を念頭に置いて発言したのであって、そこまで深い意味はないと思われる。

さて、Surface Pro 3のスペックの話に戻ろう。

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Surface Pro 3の注目ポイントは、本体の薄さにある。初代Surface ProおよびSurface Pro 2は13.5mmだったが、Surface Pro 3は9.1mm。10mmを切ったのは高く評価すべきだろう。個人的には初代Surface Proの厚さは、他のタブレットと比べれば野暮ったく感じる部分もあったが、さらに薄くなることは素直に評価したい。

プレスイベントで映し出されたSurface Pro 3のきょう体

本体重量を約800gまで削ったのも、注目ポイントに数えるべきだ。ちなみに初代Surface Proは903g、Surface Pro 2は907g。プレスイベントでは、11インチMacBook Airと思われるノートPCを計量器に乗せ、Surface Pro 3の軽さをアピールしていた。

iPad Airを比較対象としなかったのは、Surface Pro 3がタブレットではなく2 in 1 PCというコンセプトだからだろう。恣意的な比較ではないとも取れるが、筆者は違和感を覚えてしまう。ちなみに、iPad Airの重量は469gだ。

11インチMacBook AirとSurface Pro 3の重量を比較するシーンも披露

これらの特徴を踏まえ、あらためてSurface Proシリーズと他のタブレットを見比べると、過去のWindows資産が使えるタブレット/ノートPCというアドバンテージは大きい。だが、個人的には初代Surface Proで体感した排熱処理できょう体が熱くなる現象がどの程度改善されたのが気になる。もっとも、こればかりは実機を触ってみないと知ることはできないため、後日に判断したい。

Surface Pro 3の内部構造も紹介された

今やタブレットに専用ペンで、直接文字や図版を書き込むのは一般的だが、前モデルであるSurface Pro 2同様にSurface Pro 3にもペンが付属する。ただし以前はスタイラスペンと1,024段階の筆圧を備えていたが、今回はN-trig(エヌトリッグ)の筆圧256段階のペンに切り替わった。

N-trigは、イスラエルのタッチ環境やペンをOEM提供する企業である。VAIO Duo 11など、WindowsおよびAndroid搭載デバイスの採用が増えているペン入力ソリューションだ。Surface Pro 3とはBluetooth 4.0で接続し、電池を内蔵するタイプと思われる。このあたりは憶測も含まれるが、デモンストレーションを目にする限りでは、筆圧レベルの変化は大きくなさそうだ。

Surface Pro 3に付属する「Surface Pen」

ディスプレイに直接手書きできることをアピールするシーン

Adobe SystemsのMichael Goff氏もゲスト出演。ペンでPhotoshop CCを操作するシーンを披露した

リリースタイミングは、米国では5月21日の午前12時1分(東部標準時)から事前予約を受付し、6月20日からCore i3/i5モデルを発売する。Core i7モデルの発売は8月となる。気になる日本国内発売は日本マイクロソフトからあらためて発表されるが、8月末までに提供を始めるそうだ。

価格は、Core i3モデルが799ドル(約81,000円:1ドル=102円で計算)と安価だが、Core i5/4GBメモリ/128GB SSDモデルは999ドル(約102,000円)。後者の価格は、現在のSurface Pro 2(国内で102,651円)と大差ないことがわかる。

正直なところ初代およびSurface Pro 2の10.6インチというサイズは少々狭いため、使いやすいとは言い難かった。だが、12インチであれば、Surface Pro 3のみで仕事に使えるだろう。Microsoftがプレスリリースに「the tablet that can replace your laptop(あなたのラップトップを置き換えることが可能なタブレット)」というタイトルを付けているように、Surface Pro 3の存在はノートPC時代の終焉を体現する存在となりそうだ。

阿久津良和(Cactus)