研修会の資料を配布していたら、上司から「これってバッファある?」 って聞かれた。意味がわからなくて困っていたら、「50はあります」と横にいた先輩が答えてくれた。そこで今回は、ビジネスシーンにおける「バッファ」の意味と使い方について解説します。

  • ビジネス用語「バッファ」の意味や使い方を理解していますか?

バッファの意味

バッファは、「緩衝(かんしょう)」という意味の英語【buffer】からきたカタカナ用語で、「バッファー」と表現されることもあります。

緩衝とは、「二つの物の間の衝突や衝撃をゆるめやわらげること。また、そのもの」のこと。

具体的には、果物や割れ物などの商品を箱詰めする際に、発泡スチロールやプチプチで覆ったり、クラフト紙をクシャクシャにして隙間に詰めたりする際に用いる「緩衝材」、自動車や鉄道車両の前後両端部に取り付けられた「緩衝装置(バンパー)」「緩衝器」、酸やアルカリを加えても、水素イオン濃度の変化を微小にとどめることができる「緩衝溶液」などがこれにあたります。

ビジネスシーンにおけるバッファの意味と例文

ビジネスシーンでバッファといえば、「ゆとりがある」「余裕を持たせる」といった意味で用いられることが多いほか、人間関係における緩衝材、データの一時的な保存領域といった意味でも使用されます。それぞれの意味や使い方について、例文とともに詳しくみていきましょう。

「余裕」「ゆとり」という意味のバッファ

ビジネスシーンでは、とりわけ「余裕」「ゆとり」という意味で用いられることが多く、ゆとりのあるスケジュールを設定したり、納期や予算に余裕を持たせたりする場面で使用します。

また、消耗品や資料を多めに準備する場面では「予備」という意味で、人員を増やすような場面では「人的余力」という意味で使われることもあり、物を指して「これってバッファある?」と聞かれたら、在庫や予備があるかを問われていることになりますし、「○○さんのバッファ頼むね」と言われたら、サポート役を命じられたことになります。

  • 明日は雪なので、バッファとして1時間早く出発しましょう。
  • バッファを含めた予算にして下さい。
  • この予算で足りると思いますが、バッファがあれば安心です。
  • プレゼンの資料はバッファがありますか?
  • 不測の事態にも対応できるよう、もう一人バッファとして同行させましょう。

人間関係・国際関係におけるバッファ

「緩衝」という意味は、職場での人間関係や交渉の場でも用いられます。たとえば、ライバル関係にある他社に協力を求めたい場合に、両社と良好な関係にある第三者(社)に間を取り持ってもらうことがあると思いますが、このいわゆる仲介役にあたる人物あるいは企業がバッファです。

また、職場での人間関係においては、誰しも「意見の不一致で対立してしまう」「些細なことでギクシャクしてしまう」「どうしても合わない人がいる」という経験が大なり小なりあると思いますが、そんな時、間に入って関係を修復してくれる存在がバッファです。

さらにバッファは、国と国との関係においても「緩衝」の意味で用いられます。両国の間でクッション的な立場となる国のことを「緩衝国」と呼ぶのですが、辞書には「相接する強国間に横たわり、摩擦や衝突を緩和する地位にある小国」と記載されています。

具体的には、ドイツ・フランス間のルクセンブルク・スイス、かつてのイギリス・フランス植民地間のタイなどが緩衝国に該当します。

  • A社に商談を申し入れる前に、バッファとしてB社にオファーを。
  • Cさんがいいバッファとなって、最近職場の雰囲気が変わりましたね。
  • オーストリアはバッファとして、中立外交に徹した。
  • 英露間の暗黙の合意の下、アフガニスタンは両国のバッファとみなされた。

IT業界におけるバッファ

IT業界では、コンピューターでデータを受け渡しする場合の一時的な記憶場所・保存領域のことをバッファといいます。たとえば、コンピューターのデータをプリンターで印刷する時など、異なる種類の機器や回路の間でデータをやり取りする際に、処理速度の差を補うために一時的にデータを保存しておく装置・記憶領域を指します。

  • ハードディスク内のバッファが不足しています。
  • データ量がバッファ領域の上限を超えてしまいます。

バッファを持つ・持たせることの意義

「バッファ(余裕・ゆとり)を持つ・持たせる」ということは、ビジネスに多くのメリットを生みだします。たとえば、「レストランを開店するお客様から、内装のデザインを依頼された」と仮定しましょう。

まずは、お客様の要望をヒアリングし、内装のデザイン案と見積書を作成することになるわけですが、お客様から「どのくらいで作成していただけますか?」と聞かれた場合に、実際には1週間もあれば足りるところを、あえて「10日ほどお時間をいただきます」と返答しておきます。

期限に3日間のバッファを持たせることで、万が一、体調不良により会社を休んでしまったり、パソコンの不具合で作業が遅れたりするなど、予想外の事態が起きても十分間に合わせることが可能です。

何ごともなく1週間で仕上がった場合には、予定を前倒ししてお客様に届けましょう。「仕事が早い」という印象を与えるだけでなく、「一生懸命取り組んでくれた」と評価してもらえるでしょう。また、余った3日間で、デザインを見直してみるのも良いでしょう。夢中で取り組んでいた仕事から、少々距離や時間を置いて見つめ直してみると、それまで見えなかったもの・気付かなかったことが見えてくることがあります。

結果、より質の高いデザインが完成したり、新しい発想が生まれたりするかもしれません。バッファを上手に利用することも、ビジネススキルの一つといえるでしょう。


「バッファ」の意味や使い方についてご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。ビジネス用語としてのバッファは、物体に限らず時間やデータ、人に対しても用いられるなど、意味合いの広い言葉になっています。

どんなシーンで使用されるかによって多少の違いはあるものの、「緩衝」「余裕」という意味で認識していれば、概ね間違うことはないでしょう。