『私は猫ストーカー』とは

『私は猫ストーカー』表紙

今年の1月、中公文庫から『私は猫ストーカー』という書籍が出版された。328ページで、価格は880円。2009年には監督・鈴木卓爾氏、主演・星野真里氏により映画化されて話題となった。

本書では、猫の隠れ家がたくさん紹介されている。著者は、エッセイストでイラストレーターの浅生ハルミンさん。

「猫は昼間、なにげなく家から出てゆきますが、いったいあれはどこへ行っているのでしょう。(中略)もしかして飼い猫は、外に出かけたとき飼い主には見せたことがないような、あられもない格好をしていたりするのかもしれません。私はそれを知りたくて、町にいる猫を探してあとをつけてみることにしました。そうです、私は猫ストーカーなのです」(はじめに「猫のあとをつけてみたい」より抜粋)

地図やイラストが豊富で目に楽しい一冊だ(C)浅生ハルミン

井の頭公園や、立川、世田谷区の豪徳寺や上野の不忍池など、様々な場所で猫をストーキングしてきた浅生さん。本書では、猫ストーカーの極意や出会ってきた猫たちの様子が事細かに描かれている。

耳慣れぬ「猫ストーカー」という言葉に、是非その職業(?)について詳しく聞いてみたいと、ハルミンさんを取材した。

猫ストーカーの「七戒」とは

浅生ハルミンさん

――猫ストーカーとして著名なハルミンさんですが、猫との関わりは長いのでしょうか?

「初めて猫を飼ったのは、確か小学校5年生のときだったと思います。名前はゲイロで、男の子でした。今では、トーちゃんという12歳の猫と一緒に暮らしています」

――なるほど、随分と長い経歴をお持ちなのですね。本書には、猫の近くで大きな音を立てない、猫をいつも褒めたたえるなど、猫ストーカーの「七戒」が記されていますが、猫と仲良くなるコツがあったら教えてください。

「コツは、なんといっても低姿勢であることに尽きると思います(笑)。『えらいねぇ』『かわいいねぇ』とほめてあげるのが大切だと。低姿勢で猫に接していると、ある瞬間から猫の目が変わるんですね。こちらを凝視している状態から、全身の力を抜いて目をふせてくれる状態に。こうなったら、ある程度はこちらの存在を許容してもらえたと思ってもいいかもしれません」

――なるほど。猫ストーカーとして、最近はどのあたりのスポットに足を運んでいますか?

「最近好きな猫スポットは、東京近郊のとある川のボート乗り場。川に下りていくと、草がボーボーなんですけど、よーく目を凝らしてみてみると、猫が通った跡があるんです。小さな道になっていて、それもまたかわいいです」

猫のイラストが満載

かわいらしい地図が満載(C)浅生ハルミン

――『私は猫ストーカー』には、たくさんの猫のイラストや地図が描かれていますが、昔から猫の絵を描いていたんですか?

「イラストそのものを書き始めたのは、グラフィックデザイナーの仕事をしていた頃、会社のディレクターさんにイラストを描いてほしいと頼まれたのが最初なんです。実は、猫のイラストをたくさん 描き始めたのは結構最近だったりするんですね。『私は猫ストーカー』発刊の後に描いているイラストは本当に猫だらけです(笑)」

――イラストはデジタルで描いているのですか?

「いや、イラストはほぼアナログで、手書きで描いています。描いたものをスキャンして加工して使っています。猫の絵を描くときは、結構筆に任せたりしますね。下書きの時点で、ある程度の構成などを決めて、スラスラと描いていきます」

――それは世のイラストレーターさんがうらやむようなセリフですね(笑)。今後はどのように活躍していきたいとお考えでしょうか?

「今までは、例えるなら来た球をすべて打ち返すような仕事の仕方をしていました。これからは、それも当然やり続けた上で、思ったよりよく球が飛んだなって思える仕事が出来たらいいなと思っています」

愛猫「トーちゃん」

愛猫「トーちゃん」

――ハルミンさんの家には猫ちゃんがいると伺いましたが…

「男の子がいます。名前は「トッド」で、トーちゃんと呼んでいます。ミュージシャンの「トッド・ラングレン」が由来です。世田谷出身で、2001年4月生まれ、体重は3.7キロです。

――男の子なのに小柄なんですね!トーちゃんの好きなものを教えてください。

「好きなものはミルク、嫌いな食べ物は刺身です(笑)。猫じゃらしはおもちゃとして王道ですが、やっぱりうちの子も大好きで、よくくわえて私のところに持ってきては「遊んで」とポトっと落としたりしていますね。名前を呼ぶと、きちんと「ニャー」と返事をしてくれるのもすごくうれしいです。それと、私が何も言わない状態でも、手でこまねくとこっちに来てくれたりします」

――トーちゃんはどんな性格ですか?

「とても怖がりです。お客さんが私の家に来てくれても、怖がってしまって押し入れに隠れたりするので、そっとしています」

――男の子の猫ちゃんは、飼い主さんを母親として慕う傾向にあるようですが、ハルミンさんとトーちゃんはどのような関係性ですか?

「トーちゃんとの関係は、日によって違ったりしますね。ある日は恋人のような関係になったりしますし、また別の日は、私が下僕のようにあしらわれたりします(笑)」

――ありがとうございました。日々、とても素敵な猫生活を送っていらっしゃるのですね。それでは最後に、これから猫ストーカーになる人に向けて、何か一言どうぞ。

「猫は本当に身近な生き物です。気負わずに、力をいれずに、のんびりと猫ストーキングを楽しんでもらえたらと思います」

■プロフィール
浅生ハルミン
1966年三重県生まれ。デザイン事務所勤務および現代美術家としての活動を経て、現在はイラストレーターやエッセイストとして活躍中。著書は『私は猫ストーカー』『猫の目散歩』『猫座の女の生活と意見』『三時のわたし』『猫のパラパラブックス』などがある。『私は猫ストーカー』は2009年に映画化された。