オリンパスは5月15日、2013年3月期(2012年4月1日~2013年3月31日)の決算発表を行った。それに合わせて同社では、デジタルカメラを含む映像事業の再建計画を発表。低価格のコンパクトデジタルカメラ開発を中止すると発表している。

規模を縮小してリスクを抑制

同社では、2012年6月に策定した「中期ビジョン」(中期経営計画)において、「事業ポートフォリオの再構築・経営資源の最適配分」「コスト構造の見直し」「財務の健全化」「ガバナンスの再構築」という4つの基本戦略を立てている。

低価格ラインナップ「Vシリーズ」の「VH-515」(2012年8月に発表)

赤字の続く映像事業(デジタルカメラ事業)の再建も課題として挙げられており、15日の決算発表では、「コンパクトカメラのリスク極小化」「収益性の高いミラーレスへリソース集中」「市場変化への対応力強化」の3点が、映像事業の今後の方針として掲げられた

1点目の「コンパクトカメラのリスク極小化」は、コンパクトカメラ事業の規模を大幅に縮小することでリスクを抑えるというもの。これに伴い、収益性の低い低価格機種については開発を中止することが公表されている。オリンパス広報に聞いたところ、「具体的には『Vシリーズ』(『VH-515』『VH-410』など)と呼ばれるラインナップが開発中止対象となる」とのことだ。なお、販売台数に関しても2013年3月期は510万台だったが、2014年3月期は前年比で約半数の270万台に縮小するという。

一方で、ミラーレスカメラに関しては、経営資源を集中投下。需要の拡大が見込まれる主要都市を中心に販売チャネルの強化などを行っていく。

3点目の「市場変化への対応力強化」としては、計画の進捗状況のタイムリーな把握や、客観的な情報に基づく全社的な判断といった「モニタリング結果に基づく客観的且つ迅速な対応」を行うという。これらにより、在庫リスクの抑制や、費用の適正水準への抑制を図るとのことだ。

コンパクトカメラ市場は想定以上に悪化

オリンパスでは2013年3月期のコンパクトカメラの売上高が、期初(2012年6月)に想定した912億円から572億円へと大幅に悪化。これに合わせて売上総利益も、計画の610億円から326億円へと減少した一方、販売量の減少に合わせて販管費を思うように削減できなかったため、10億円を計画していた営業損益は△231億円と大幅な損失に陥った。

映像事業に関する2013年3月期の期初計画と実績

販管費の抑制やミラーレスカメラの販売チャネル強化などで収益性改善を図る

同社では2013年3月期の計画未達の主な原因について、「市場環境の急激な変化」「環境変化への対応」と2つを挙げる。1点目は主に、コンパクトカメラ市場の想定を超えた縮小であり、2点目は、生産調整の遅れによる過剰在庫の発生や、売上高費で過大な費用を計画していたという2つの細かい要因を挙げている。

今回の映像事業の方針転換は、こういった状況を受けてのものだという。なお、今回の方針転換に伴い、低価格機種の開発中止以外に、現在5つある製造拠点を2つに削減することや、2014年3月末までに映像事業全体で3割の人員削減を行うことなども発表されている。これらの施策により、2014年3月期の映像事業の見通しでは売上高が1,076億円(2013年3月期実績)から1,040億円へと減少するものの、原価率の改善により売上総利益は326億円(2013年3月期)から440億円へと増加。

中長期的なプランとしても営業利益を獲得できる事業構造への転換を図るとしている。

2014年3月期で赤字体質を解消し、中長期的に黒字事業とする計画だ