米Appleが2013年末か2014年初頭にも「iTV」と呼ばれる4K TVをリリースする計画だという噂が出ている。4K TVは今年1月のCES最大のトピックの1つだったが、多くは販売価格が100万円を超える水準であり、いまだ一般向け商品とはなり得ていない。もしAppleが本当に同分野に参入するのであれば、そのビジネス手法に注目が集まることになる。

同件は台湾Digitimesが報じている。現行のフルHDの4倍の解像度(3840×2160)を持つ4K TVは、英語圏では「Ultra HD」(UHD)などの名称で呼ばれている。Digitimesによれば、このiTVは音声やモーションによる制御のほか、インターネット接続機能を持つという。サプライチェーン筋の話で、製品はAppleとFoxconnの共同開発によるもので、現在は大量生産のスケジュールの詰めを行っているとのこと。Digitimesによれば、UHDパネルの製造のほとんどは台湾に集中しているが、これらメーカーは2013年中にも中国のTVセットメーカー向けの需要を満たすために生産を進めているという。また今回のタイミングでUHDパネルを提供しないメーカーについても、その製造ラインをAppleのiPhoneやiPadなどの製品向けに振り分けていくという。実際の調達先としてAppleはLG Displayを検討しており、今年後半にも同製品向けの大量生産をスタートする見込みとのことだ。

同件については以前にも報じたとおり、実際にAppleとFoxconnの間でTV製品の研究開発が進んでいることが噂されている。だがこのタイミングでAppleが4K TV市場に参入するのは、いくつかの観点から疑問符が付く。1つには、前述のように価格が非常に高いことが挙げられる。原因の1つは4K解像度のメリットを活かすために需要が大画面パネルに集中しており、この歩留まり問題がパネルや製品価格を押し上げている。また価格とパネルサイズの両面から、Appleが出すと噂される製品ライン(50型以上とみられる)の市場規模は液晶TV全体の1~2割未満であり、その多くは30型あるいは40型の低価格製品に集中している。日本や韓国を含む大手ブランド家電メーカーはこの1~2割のうち、さらに中国メーカーなどと競合しないわずか数%のシェアの領域でしのぎを削っている状態で、おそらくはAppleが参入しても市場はそれほど広がらず、同社はiPhoneやiPadで成功したビジネスモデルをそのまま持ち込むことは難しい。おそらくは、この市場でプレゼンスを確保するには従来のTVの製品とは大きく異なる概念が必要になるとみられる。

また報じているDigitimesに関して注意が必要な点も挙げられる。台湾のサプライチェーンを多くの情報源としている同媒体だが、本文の各所にみられるように台湾ベンダーがApple不調をいわれつつも順調に受注を獲得している点をまず強調している。パネルメーカーが状況を有利に見せるために出した情報である可能性を検討する必要がある。