2012年7月に公開され、話題を呼んだディズニー/ピクサー最新作『メリダとおそろしの森』が早くもブルーレイ/DVDとなって発売される。同作は、ピクサー史上初の女性主人公「王女メリダ」がみせる成長と"家族の絆"を描いたファンタジー・アドベンチャーだ。

すでに映画館でその世界観を楽しんだ読者も多いかもしれないが、本作ではこれまでのピクサー作品と比べて2倍近くの制作期間が費やされるなど、従来の3DCGのレベルを超えた"リアルな素材感"も見どころのひとつとなっている。ここでは同作において、ピクサーが特にこだわったという先進の映像表現をいくつか紹介しよう。

"古さ"を表現する"新しい"技術

『ファインディング・ニモ』では海、『ウォーリー』では宇宙、『レミーのおいしいレストラン』ではパリの街など、毎回異なる舞台に挑戦してきたピクサー。そして今回、物語の舞台に選ばれたのは、太古の魔法が息づくスコットランドの神秘の森だ。この世界においてはあらゆるものに歴史的な素材感を出さなくてはならず、これまでの舞台と比べても特にディテールの作り込みが必要とされた。

なかでも同社がもっとも苦心したのは「苔」の表現だったという。背景となる森にはさまざまな苔が層をなして生い茂り、城壁の石にもびっしりと苔が覆う。この途方もない量の苔を描くために、同社はスプレーのように吹き付けることで苔を描いていける新たなプログラムを開発した。このプログラムでは苔に陰影をつけたり、ちいさな苔を風になびかせることもできるとのことで、これに関しては美術監督のスティーヴ・ピルチャーも「おかげでリアルな自然が表現できるようになった」とコメントしている。

クリエイターを悩ませた"衣装"と"髪"

また本作では、時代的背景などから登場人物の衣装も複雑なものになっている。たとえばファーガス王の衣装は、鎖かたびら、防御服、巻き付けたキルト、ベルト、毛皮のマントなど計8層の重ね着だ。つまりCGアニメーションの世界では、それぞれの素材が影響しあいながら動く様子を描かなければならず、「服の上に別の服を重ねる、さらにまた重ねるということは、いまだかつて誰もやったことのない複雑なレベルの話でした」と、製作総指揮を務めたジョン・ラセターも当時の苦労を語っている。

さらに本作では、主人公メリダを象徴する"ボリュームたっぷりのカーリーヘア"を表現するために、カールアイロンのプログラムも開発された。これは本物のアイロンを当てるように、さまざまな大きさのカールが作れるプログラムで、3Dモデルに埋め込まれた髪の毛に、手作業でひとつひとつカールを作っていくことができる。カールができ上がると、自然な軽い動きをつけるために、さらに数カ月かけてプログラムを作る。この繰り返しでメリダの髪を仕上げるのには、なんと3年の月日が費やされたのだという。

ピクサー作品では毎回、3DCGでは困難とされる表現への挑戦が続けられている。今回も同社は「コンピューターが不得意とする表現にあえて挑戦した」といい、ストーリーを盛り上げる細部へのこだわりが観客を作品の世界へ導く一助となっている。

映画『メリダとおそろしの森』のブルーレイおよびDVDは11月21日発売。価格は3Dスーパー・セット(4枚組/デジタル・コピー&e-move付き)が6,090円、ブルーレイ(3枚組/デジタル・コピー&e-move付き)が3,990円、DVD+ブルーレイセットが3,990円、コレクターズ・ボックス(3枚組/完全数量限定1,000セット オンライン限定商品)が1万4,595円、DVDが3,360円。なお、DVDのみは2012年12月19日の発売となる。

同作未体験の人はもちろん、映画館に足を運んだ人も、改めてそのディテールをチェックしてみてはいかがだろう。

(c)2012Disney/Pixar