日立アプライアンスは9月20日、同社オーブンレンジシリーズ「ヘルシーシェフ」の新製品「ベーカリーレンジ ヘルシーシェフ MRO-BK1000」の記者発表会を開催した。新製品は11月10日に発売予定で、推定市場価格は13万円前後となる見込み。

「ベーカリーレンジ ヘルシーシェフ MRO-BK1000」。庫内容量は33L。色はパールホワイトのみ

新製品は、その名のとおり、ホームベーカリー機能付きのオーブンレンジ。専用のパンケースを庫内にセットし、ホームベーカリーと同様に食パンの"こね"から発酵、焼き上げまでをオーブンレンジ内で行う。

全自動のパン焼き機能をオーブンで実現するために、「ねりモーター」と呼ばれる機構を新たに開発。パンケース内にセットした生地を練るための羽根を回転させる部品を本体下部に内蔵した。パンケースに羽根と具材を用意し、庫内のパンケース台にセットすると、羽根の軸とねりモーターがかみ合い、羽根を回転させられるという仕組みだ。

ホームベーカリー機能用の付属品

ホームベーカリー機能の使用時は、本体底面の「ねりモーター」とパンケースを連結する「パンケース台」を装着する

また、一般的なホームベーカリーにも標準的に搭載されている、イーストや具材を最適なタイミングで自動投入する機能を、新開発の「自動投入器」で実現。使い方はパンケースの上に被せるようにセットするだけのものだが、それがパンケースを庫内に設定した際に本体側面に内蔵されているアーム状のレバー先端と接して投入部分の開閉口のボタンを押し、イーストや具材が下に落ちるという極めてローテクな仕組みだ。

イーストや具入りパンの具材は、パンケースの上にセットする「自動投入器」に入れる

パンケースの中で焼き上がった直後の食パン

「自動投入器」。真ん中の丸い部分がイースト用で、奥の容器には具材を入れる。手前の2つのボタンがパンケースを本体にセットした際にレバーと接触し、投入部分の開閉を制御する

本体側面の自動投入の機構。下側の「ソレノイド」によってバネを動かし、アームを制御する

本体内側から見た自動投入の仕組み。アームの先端部分が自動投入器のボタンを押して容器を開閉させる

こね上がった生地はそのまま、設定したメニューに応じて設定された時間や温度で、一次発酵や二次発酵が行われ、焼き上げられ、ホームベーカリーと同様にオーブン内で食パンづくりの工程がすべて完結する。焼きの工程では、元来のオーブン機能を使い、ファンで熱風を循環しながら焼き上げるため、外側は香ばしく、内側はふっくらと仕上げられるとしている。その点においては、下側のヒーターのみで焼き上げ、上火が入りにくいホームベーカリー単体の専用機に対しても優位であるとメーカーは自信を見せる。

さらに、焼き上がり時間が速いのも特徴だ。熱風循環による熱効率のよさに加えて、焼き工程においても追加の発酵工程を加えることで、食パン1斤のを約2時間で焼き上げられる。ベーキングパウダーを使った「早焼きソーダブレッド」メニューでは、約41分、天然酵母パンで約5時間、山形フランスパンで約3時間30分といった速さだ。

粗熱を取り、パンケースから取り外した食パン

試食用に配られた食パン(左)と早焼きソーダブレッド(右)。外側の皮がパリっとしていて内側はふんわりとしたホテルブレッドのような仕上がりだった

主に食パンを焼く全自動の「オートベーカリー」のほかにも、バターロールやフランスパンなど、こね~一次発酵までを自動で行い、手動で成型後、二次発酵、焼き上げまでを選んだメニューに応じて時間や温度設定をしてくれる「手作りベーカリーメニュー」と、練り時間や発酵温度や時間、焼きを手動で設定できるメニューや、もち、うどん・パスタ、そば生地を捏ねるためのメニューもある。

一方、通常のオーブン機能としては、過熱水蒸気、グリル、スチームといった、同社のヘルシーシェフシリーズの高性能機と同様のスペックを持つ。同社が4月に発表した2012年モデルとしては、2番目の上位製品「ヘルシーシェフ MRO-LV200」に相当する機能といい、消費者はホームベーカリーの機能をこの機種との価格差に求めることになるだろう。

本体底面に装備された「ねりモーター」

ホームベーカリー機能の機構部分の構造

同社では、過去にもターンテーブル型のオーブンレンジの時代に、ホームベーカリーを一体化させた同様のオーブンレンジを発売しているという。発表会の説明員の話では、「当時はホームベーカリー自体の性能自体も市場自体が今ほど発達したものではなかった」といい、今回改めて消費者の利用実態や需要実態などを調査し、新製品の開発にあたったことを明かした。

その1つがホームベーカリーユーザーの23%が「片付け」に不満があるとしている調査結果だ。つまり、使わない時に置く場所がないという欠点に注目し、オーブンレンジとホームベーカリーを一体化させるという試みを再び行ったというのだ。そもそもオーブンレンジ自体が高性能であったり、当たり前だが容量が大きくなればなるほど、置き場所を取る。そこにホームベーカリーもとなると、住宅事情によってはスペース的に断念せざるを得ない場合もある。

ホームベーカリー機能利用時のパネル操作部。「ねり」・「ねかし」・「1次発酵」・「2次発酵」・「予熱」・「焼き」の6つの工程の進行状態がランプの点灯によって表示される

ホームベーカリー機能のメニュー一覧

ホームベーカリーメニューで作られたパンや麺類のサンプル

しかし、今回日立が開発したホームベーカリー一体型オーブンレンジの外形寸法は、幅50×奥行き45.9×高さ41.8cm。同等のオーブン性能として挙げたMRO-LV200の同50×44.9×40.8cmに比べても高さがわずかに高くなっている程度に収められている。

さらに秀逸なのは、パンケースなどホームベーカリー機能に必要な付属品を全部収納しておくことができる専用ケースまで用意されていること。これにより、付属品が多くて収納場所や整理に困りがちな難点を解消するという気配りのよさだ。

また、液晶部分に通常のオーブンレンジではあまり見られない時計表示があるのも本製品の特徴。これはホームベーカリーの予約機能のために付けられたものだが、従来のホームベーカリーの予約機能が「●時間後」という設定なのに対して、何時何分という焼き上がり時間で設定したほうが便利だという視点で搭載されたとのことだ。

その他、ホームベーカリー機能を使用中に途中でうっかり本体の扉を開けても一時停止状態になり、設定がリセットされずに調理が継続できるなど、かゆいところに手が届く細かな配慮も施され、発表会では「ホームベーカリーの機能を付加したことで、本来のオーブン機能や他の機能の使い勝手が下がらないようにこだわっている」と、ホームベーカリー+オーブンレンジという新コンセプトの製品投入への思いも明かされた。

ホームベーカリー用の付属品が一式収められる収納ケース

オーブンレンジ用の付属品。グリル皿、レンジ用のテーブルプレートとオーブン皿の2枚

従来機種から人気の外して丸洗い可能なレンジ用のテーブルプレート。ねりモーターが左端になったのは、レンジ用の電磁波アンテナが中央にあるため