東京大学は20日、50歳~84歳の男女を対象に実施した「中高年者の生活実態に関する全国調査」の結果を発表した。同調査は、同大学大学院人文社会系研究科の白波瀬佐和子教授らにより行われたもの。調査期間は2010年8月3日~30日、調査方法は郵送配布・訪問回収、有効回答数は6,442人で、今回は病院入院中の人など165人を除く6,238人に関する報告となる。

同調査で、資産(預貯金、株式、保険、持家以外の不動産など)の保有状況、預貯金額と預貯金以外の金融資産額(有価証券や投資信託)について尋ねたところ、「まったく資産を持たず、金融資産を保有しない」人の割合は、男性が38.2%、女性が53.4%だった。詳細を見ると、一人暮らしの男性の過半数となる57.8%は資産をまったく持っていないことが判明。一方、女性は一人親世帯(50.8%)と3世代世帯(51.8%)で、資産を保有していない割合が高かった。

何らかの資産を持っている人のうち、男性の8割、女性の4分の3が「子どもへ資産を継承したい」と回答。男女別では、男性は3世代世帯が9割弱と高い継承意欲が認められたのに対し、女性はどの世帯構造においても継承意欲に大きな差は見られなかった。

子世代への資産継承意欲(%)

過去1年間に、18歳以上の子どもとの間で行った定期的、日常的な経済的な支援について聞くと、「やり取りはない」と答えた人は85%以上。本人の親、あるいは配偶者の親についても、約8割が定期的な経済的支援を行っていないことが分かった。また、1人目の子どもとの世話的な支援のやりとりについても、4割の親が子どもに対して何も世話をしておらず、過半数が子どもからの支援を受けていないことが明らかになった。

次に、対象者の親、または子どもとの間で行われた資金や世話のやり取りについて、項目別に質問したところ、"親から子へ"と"子から親へ"のやり取りは非対称であることが判明。最も多かったのは対象者本人の親からの譲渡で、配偶者親への譲渡は限定的だった。世話や資金の親子間の移転は、上世代から下世代への方向が多いと見られる。

人々の信頼度を見た場合、「政府を信頼しない」人は6割以上に上り、政府に対する信頼度の低さが目立つ。少子高齢社会における公的年金制度については、4割が「信頼しない」、生活保護制度についても、42.3%が「信頼しない」と回答。一方、家族については、9割以上が「信頼する」と答えている。また、年齢階層別に信頼の程度を見ると、50代層において、政府(70.3%)、公的年金制度(54.4%)、生活保護制度(50.1%)への高い不信感が浮き彫りになった。

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