タイの洪水被害によるHDD工場の操業停止が、じわじわとPC業界全体へと影響を拡大している。すでにPCショップのバルクHDDの価格が急騰しているのは多くが知るところだが、10月末時点で出揃った台湾のPCメーカー各社の業績発表によれば、第4四半期は軒並み5-10%程度の売上ダウンを予測しており、その影響が来年2012年第1四半期まで及ぶ可能性が高いと述べている。

同件についてはWall Street Journalのレポートが詳しい。例えば、台湾ASUSTeK Computerが10月31日(現地時間)に発表した2011年第3四半期(7-9月期)決算は、売上が当初予想を上回る前年同期比11%アップの46億8000万台湾ドルで、主にアジアと欧州地域での売上好調とコスト削減効果が功を奏したという。だが同社によれば、第4四半期の売上は前年同期比で5-10%程度の減少を見込んでおり、タイでの洪水被害によるHDDを含む複数の部品の供給が滞っていることに起因するという。また同社CEOのJerry Shen氏によれば、結果としてノートPC製品の値上げを決断せざるを得ず、この影響は来年2012年の第1四半期まで続く可能性があることを示唆している。

ライバルの状況も同様で、ASUSを除けば第3四半期の業績は軒並み減少傾向が見られる。Acerは10月21日の暫定決算発表で売上が前年同期比30%ダウンの1173億ドルになり、第2四半期同様に赤字決算になったことを報告している。Foxconnブランドで知られるHon Hai Precision Industryも9%の売上ダウン、Quanta Computerが6.7%の売上ダウン、Compal Electronicsが45%の売上大幅ダウンをそれぞれ報告している。Compalについては、製造委託元であるAcerがすでに業績の大幅悪化を発表していたため、その影響は避けられないものとみられていた。業績悪化の理由はいくつかあり、まずAcerについてはタブレット競争の激化による在庫整理の問題が挙げられており、Hon Hai Precisionについては中国での工場移転にかかるコストの計上が原因にあるとしている。同社は現在中国工場の内陸部への移転をさらに進めており、これにより賃金水準や諸経費をさらに押し下げるのが可能になることから、将来的な業績アップが期待できるという。またCompalはASUS同様にタイの洪水被害の業績への影響について言及しており、こちらはノートPC製品の出荷台数が5-10%程度落ちることになると予測している。この影響はやはり来年初頭まで続く可能性が高いという。

IHS iSuppliによれば、少なくとも2011年第4四半期の間はHDD供給量が最大30%程度落ち込むことが予想されると警告しており、米国ではApple CEOのTim Cook氏が製品供給における影響についてコメントしている。この数字が直接PCの生産台数にかかるわけではないが、少なくとも複数のメーカーが示唆しているように少なくとも今年いっぱいから来年第1四半期までの間はノートPCを中心に製品価格が上昇し、それにともなう出荷台数減少が見込まれることになるようだ。またCompalではHDDの供給問題以外にも、2012年以降の世界の経済情勢から、TVやPC関連の需要が落ち込む可能性があることを指摘している。リーマンショックを経て一時的に緩やかな回復基調に乗った世界のPC販売だが、今回のHDDを経て、また一気に下降曲線を描く可能性が出てきた。一方で今年の年末商戦ではユーザーの購入動向がタブレット製品に集中しているという話もあり、HDD問題の影響を受けにくいタブレット製品が市場でのプレゼンスを高めることになるかもしれない。