Appleが既存のMac製品で採用しているIntelプロセッサを、そう遠くない将来にもARMベースのプロセッサで載せ替えるという噂が広がっている。この件を報じているのはSemiAccurateで、情報の出所は不明ながら、Appleがノートブック製品を中心に、場合によってはデスクトップにまでARM採用を広げる計画を進めているという。
ノートブック/デスクトップでARMプロセッサを採用というと唐突な気もするが、Microsoftが次期主力OSといわれる「Windows 8」(仮名)において、x86ベースのプロセッサに加えてARMベースのSoCをサポートする予定であることは広く知られている。Appleは過去にPowerPCベースのアーキテクチャからIntelベースのアーキテクチャへの移行をスムーズに実現した前例があり、ARMベースのiOSアーキテクチャでのノウハウ蓄積を考えれば、ARMへの移行はそれほど難しくない芸当であるというのだ(もともと英ARM設立に関してAppleが関わっている歴史もある)。
最大の問題の1つはパフォーマンスに関するものだが、ARMが次期アプリケーションプロセッサコアとして発表しているARM Cortex-A15 (開発コード名「Eagle」)では、Out-of-Order実行に加え、クアッドコアのサポート、64ビット実アドレスへの対応など、消費電力削減よりもパフォーマンス寄りに設計思想をシフトさていることもあり、パフォーマンス問題解決は時間の問題だとも考えられる。NVIDIAはARMベースのHPC用コンピュータコア「Project Denver」を2012年中にも公開する計画だとしているが、こういったニーズが高まれば2013年中頃には同種のハイエンドコアを採用する事例が多数登場するというのがSemiAccurateの予想だ。またAppleがARMアーキテクチャを本格的に複数の製品ラインに取り込むにあたっては、現状のA4/A5のようにCortex-A8/A9の標準的なIPをそのまま取り込むのではなく、世代を追うごとによりカスタマイズを加える方向を明確にし、製造もSamsungへの委託以外の道を模索することになると、同サイトでは踏み込んだ予想をしている。
むしろ読み手として気になるのは、このSemiAccurateの情報の確度だ。同サイトはAppleに関する情報はあまり扱わないにもかかわらず、2009年中頃にAppleがMac製品でAMD ATI製のチップを採用し、当時の中心だったNVIDIA製チップを排除する計画を的中させている。AppleとNVIDIAは製品の品質や供給などについてたびたびトラブルになっていたことが知られており、Intelがプロセッサアーキテクチャを変更したことを機会に、統合型GPUではIntel、ディスクリートのGPUではAMDを採用する方向へとシフトした(この移行は、2011年のMacBook Pro最新モデルの登場により完了している)。Apple Insiderでは同サイトについて、英国のタブロイド紙「Inquirer」の編集者だったCharlie Demerjian氏が運営するサイトだと紹介している。