教会のボランティアをしているというスーザン

今、世界中を席巻している人物といえばスーザン・ボイル(Susan Boyle)が筆頭に挙げられるかもしれない。一体誰なのか。スコットランドに住む48歳の普通のおばさんである。

スーザンが注目を浴びるきっかけとなったのはイギリスのオーディション番組「Britains Got Talent 2009」。3人の審査員の前でパフォーマンスを披露するスタイルで、全米で大人気を博す「アメリカン・アイドル」のイギリス版といったところ。「アメリカン~」の辛口審査員サイモン・コーウェルも出演している。平凡な携帯電話セールスマンから、世界的テノール歌手へと転身したポール・ポッツはこの番組の出身者だ。

スーザン・ボイルがステージに登場したとき、審査員全員がため息をついた。オーディション番組にはいわゆる"イロモノ"が必ず登場する。「場違いだよ」――審査員のみならず、会場のオーディエンス、テレビの前の視聴者、誰もがそう思っただろう。それもそのはず。スーザンは47歳。お世辞にも良いとは言えないプロポーションで、特徴的な二重あごが目を引く。質問に答える様子もたどたどしく、年齢を聞かれると「47歳よ」(4月11日に48歳になった)と言いながら腰をぐりぐり回して見せ、審査員たちはあからさまに眉をひそめた。「エレイン・ペイジのようなプロのシンガーになりたい」と言うや、会場のあちらこちらからは失笑が漏れる始末。どんなお笑い芸を披露してくれるのか……全英が口の端にシニカルな笑いを浮かべる中、ミュージカル「Les Miserables」の「I dreamed a dream」のイントロが流れ出す。

彼女の第一声がスピーカーに乗った瞬間、会場にいた全ての人々の顔が変わった。その様子と素晴らしい歌声は下記リンクから視聴できる。是非ご覧いただきたい。

Susan Boyle - Singer - Britains Got Talent 2009 (With Lyrics)

割れんばかりのスタンディング・オベーションに包まれながら歌い終えた彼女には、審査員から惜しみない賞賛の言葉が贈られた。ピアース・モーガンは「3年、審査員をやっているけど、これほど驚いたことはないね。信じられないくらい素晴らしいパフォーマンスだった」と絶賛。女優のアマンダ・ホールデンも「正直言って、最初はシニカルな目で見てたわ。でも、目が覚めた。心の底から感動したわ!」。イントロの時点では「早く終わってくれ」といったような表情だったサイモンは「俺はやってくれると思ってたね」とケロリ。すでに自分のレーベルから彼女をデビューさせるべく動いているという。

5日前にアップロードされたこの動画は早くも1,800万回以上も再生され、全世界を感動の渦に叩き込んでいる。ファンサイトも立ち上がっており、スーザン旋風はさらに加速していくと見られている。