在宅時間が増え、以前より家の中の汚れが目につくようになっていませんか?

けれど、掃除といえば「嫌いな家事ランキング」の上位にランクインする常連。つい後回しにしてしまいがちです。また、音がうるさい掃除機は、在宅ワークや遊びに夢中の家族から嫌がられるもの。これらの理由で掃除のタイミングを逸した結果、さらに汚れが溜まってしまう悪循環に陥るケースもあるようです。「もっとラクに気兼ねなく掃除できればいいのに……」と思う人は少なくないでしょう。

電機メーカーのシャープは、「掃除をラクにアクティブに」をコンセプトに軽さを追求したスティック掃除機「RACTIVE Air(ラクティブ エア)」のシリーズに、運転音を低減したモデル「EC-SR8」を発売しました。国内掃除機としては初めて英国の騒音防止団体よりノイズ低減技術を認められて、その証となる「QUIET MARK」を取得。時間帯や家族の状況を気にせず、いつでもラクに掃除ができるスティック掃除機として注目を集めています。

  • RACTIVE Air展示

今回は、運転音を低減した「RACTIVE Air POWER EC-SR8」の開発秘話について、お話をうかがいました。

自社史上、最強パワー※1にして最小の運転音(60dB、強モード)※2
こだわりが詰まったスティック掃除機「RACTIVE Air POWER EC-SR8」

取材を受けてくださったのは、清潔企画開発部の加藤篤史さんと太田博司さん、国内デザインスタジオに所属するデザイナーの細見有亮さんの3名です。

※1 シャープ調べ。2021年度機種EC-SR7の「フルパワーモード/強モード」とEC-SR8の「フルパワーモード/強モード」との吸引性能試験による真空圧の比較結果は同等です。使い方や環境により異なります。「フルパワーモード」は、「強」ボタンの長押しにより、最長5秒間フルパワーで運転できるモードです。

※2 EC-SR8の「強モード」時運転音60dB。2JEMA自主基準(HD-10)により測定。当社RACTIVE Airシリーズ従来機種の「強モード」とEC-SR8の「強モード」との運転音の比較。

  • インタビュイーの3人紹介画像

加藤さんは「RACTIVE Air」の商品企画を担当。2008年に入社した後は、システムエンジニアとして子ども写真館向けの撮影システムや本部管理システムの設計・開発をしていましたが、2014年に社内公募制度を活用して本社マーケティング部門に異動し、2016年からは数々の掃除機を企画しています。

「RACTIVE Air」の技術開発を担当する太田さんは、入社した翌年の1996年から掃除機の設計に従事。2000年に発売したシャープ初代のサイクロンクリーナーをはじめ、歴代の掃除機の開発に携わるベテランの技術者です。

細見さんは「RACTIVE Air」のデザインを担当。2016年にキャリア入社し、2018年頃から掃除機を中心とした商品のデザインをしています。

彼らが手がける「RACTIVE Air」は、軽さを追求したスティック掃除機です。「掃除をラクにアクティブに」というコンセプトが支持され、2016年の展開以降、昨年2022年には累計の販売数が100万台に到達しました。そんな「RACTIVE Air」の「軽さ」にはこだわりながら、運転音を低減したのが「EC-SR8」です。その運転音は「RACTIVE Air」史上最小。そのうえ史上最強パワーを両立する技術者のこだわりが詰まったスティック掃除機なのです。

  • RACTIVE Air POWER EC-SR8

「モーター音」と「排気音」を低減!その方法とは

そもそも掃除機の騒音は、大きく分けて「モーター音」「排気音」「駆動音」の3つがあります。

  • 掃除機の3大騒音説明図

運転音を低減するには、この3つを抑えなければなりません。特に大きな比重を占めているのが「モーター音」「排気音」の2つ。

そこで我々が開発したのが、モーターの振動を抑えつつ、モーター音を遮音、さらに排気の流れをコントロールして排気音を抑える効果がある「ファンネルサイレンサー」です。


ファンネルサイレンサーの特長はその形状にあります。吸引力は下げず、運転音を低減するのに最も適した形状を追求する中、目を付けたのがアルミボトルの缶コーヒー。試作品には実際に空の缶コーヒーが使われ、製品にもその形に似たファンネル(円錐)形状が採用されました。

  • 缶コーヒーが使われた試作品

    実際に空の缶コーヒーが使われた試作品。

  • ファンネルサイレンサーの説明図

●ファンネルサイレンサーの仕組み
モーター音の削減
1.遮音…ファンネル(円錐)形状の遮音カバーでモーターを覆い、モーター音を遮音
2.防振…遮音と同時に、防振材でモーターの振動を抑制
3.吸音…高密度の吸音材で吸音し、モーター音をさらに低減

排気音の削減
1.集約…乱れた排気音をファンネル形状で集約
2.整流…格子状の出口で整流し、排気音を抑制
3.吸音…高密度の吸音材で吸音し、排気音をさらに低減

「駆動音」も低減したい……新たに開発した構造とは

実は当初は「モーター音」と「排気音」のみ低減しようとしていたのですが、開発を進めていると気になり始めたのが「駆動音」です。

そこで、吸込口の4ヶ所(※下記図参照)に防振材を配置し、振動を抑える「ダンピングコントロール」という新構造を搭載することで、駆動音を低減することに成功しました。


  • ダンピングコントロールの説明図

    防振材が導入されている4ヶ所。吸込口、モーター、回転ブラシの振動を抑制し、駆動音を低減しています。

「ファンネルサイレンサー」と「ダンピングコントロール」でモーター音、排気音、駆動音の騒音に配慮した「ノイズリダクション設計」により、実感音(SONE値)は従来機種と比べて約36%低減。その技術が認められ、英国の騒音防止団体の「QUIET MARK」を国内掃除機として初めて取得しました。まさに折り紙付きの運転音です。

  • RACTIVE Air POWER EC-SR8のモーターアップ

他にも「EC-SR8」には、掃除をよりラクにする新構造が加わっています。そのひとつが「端までブラシ」です。

従来の掃除機の吸込口は、端までブラシが届いていないため、では壁際や家電のキワなどのごみを取り残していました。「EC-SR8」では吸込口の端まで回転ブラシがあるため、キワに沿って動かすだけでごみを吸い取ります。


  • RACTIVE Airのブラシ比較

    (左)従来のブラシ。(右)「EC-SR8」のブラシ。

  • 端っこを掃除している図

そして、前回モデルで高い評価を得た「からみにく~いブラシ」と「からみにく~いサイクロン」を引き続き搭載。ブラシにもダストカップの内筒にも髪がからみにくく、掃除機のお手入れもラクにできます。このように飛躍的な進化を遂げた「RACTIVE Air」ですが、その背景には激化する掃除機競争と生活様式の変化がありました。

「RACTIVE Air」の特徴である「軽さ」に他社も注力し始めたため、掃除機において「軽い」ということは、いわば“当たり前”のものになってしまいました。そこで「軽さを維持したままで新たな特長を作りたい」と考え、「運転音の低減」に取り組むことになったのです。

「運転音」に着目したのは、在宅時間が増えたことが大きかったですね。長く自宅にいることでこれまで以上に生活音が気になり、中でも掃除機の音が際立っているのを実感しました。私も不要不急の外出が控えていた時期は家族で自宅に籠っていましたが、掃除機をかけるたびに娘から「うるさいからやめて!テレビの音が聞こえない!」と、しょっちゅう怒られていましたので(笑)


  • 加藤さん

「スティック掃除機はうるさくて当然」「うるさいからパワーがある」。スティック掃除機の常識を打ち破る挑戦が始まりました。

低騒音化すれば吸引力とスマートさが犠牲になる……
スティック掃除機の常識を覆した技術とデザインの工夫

しかし、その道のりは困難を極めました。

部長のコーヒー缶がアイデアのもとに?

体積が大きいキャニスター掃除機では低騒音化は従来モデルで行われてきましたが、軽さが求められるスティック掃除機では例がありませんでした。しかも、パワーを下げてはいけません。低騒音、吸引力、軽量のバランスを取ることがとても大変でした。


  • 太田さん

低騒音化しようとすると、重量が重くなり、吸引力が犠牲になる。この難題を解く鍵になったのが、先述したアルミボトルの缶コーヒーだったそうです。

騒音低減のためには、まずはモーターから出る排気を1か所に集中させて吸音する必要があります。吸引力を落とさずに低騒音化するにはどのように集音すれば良いのか会議で話し合っていたとき、部長が飲んでいたアルミボトルの缶コーヒーが開発アイデアのベースとなりました。

この形状なら排気を1か所に集中させて効率的に吸音可能で、かつ周辺のスペースを利用すれば流路も確保でき、吸引力の低下を防げるのではないか。そこから、部長の缶コーヒーを使ってすぐに試作に取りかかりました。


  • 缶コーヒーが使われた試作品を指さしている

これが前述した「ファンネルサイレンサー」の原型となりました。太田さんら技術グループは、長さや角度を微妙に調整しながら試作を何度も作り直し、完成まで試行錯誤を続けたそうです。

機能だけじゃない!デザインにも光る工夫とは

また、デザイン面でも人知れぬ苦労があったと細見さんが明かしてくれました。

低騒音化を実現する内部構造によって、本体サイズが前衛機種よりも長く大きくなってしまうことが分かりました。そこで、デザインコンセプトは「RACTIVE Air」の合理性を継承し、本体サイズを最小に抑えつつ、本体の長さをスリムに見せられるように形状を見直しました。


  • 細見さん

アルミパイプから本体パイプのハンドルまでが1本のスティックとして連続して見えるような形状と質感に変えるなど、工夫が光ります。

カラーについては、過去機種ではアクティブな印象のピンクをメインカラーとして採用してきましたが、ユーザーの物選びの1つの基準となる住空間で整合性を意識した、ホワイト系とブラック系の2色展開としました。


  • RACTIVE Air POWER EC-SR8(2色)

先ほどもお伝えした通り、当初はモーター音と排気音をメインに低減を図っていましたが、次第に駆動音が気になり始め、そこにも急遽メスを入れることにしました。

ただでさえ開発日程が厳しい状況であったにもかかわらず、より良い商品を提供するために関係部門が一丸となって取り組めたのは誇らしい気持ちでした。


「進んで取り組め困難に」。これはシャープの経営信条です。チャレンジ精神あふれるメンタリティと幅広い知見があったからこそ、常識の打破を見事に成し遂げられたのでしょう。

掃除が「嫌いな家事」から「ラクで楽しい家事」に。
「RACTIVE Air」が価値観の転換を牽引

軽くて運転音が低減した「RACTIVE Air POWER EC-SR8」は、誰もがいつでも気兼ねなくラクに掃除できるとあって、使う人に寄り添ってくれる掃除機といえそうです。とはいえ、まだまだ進化の途中。「もっと掃除をラクにしたい」と意気込みます。

現状の掃除機で満足にできることは「ごみを吸う」ということのみです。一方で掃除を広い範囲で見ると、拭き掃除や水回りの掃除など、掃除機ではできないことがたくさんあります。

「運転音」に着目したように今後も社会環境や生活環境の変化による掃除スタイルに合わせた新しい特徴を模索しながら、ラクに掃除ができる商品を展開していきたいです。


ごみ捨てなどのお手入れは、未だに残る掃除機の課題と捉えています。究極の目標は、お手入れ不要の掃除機を開発すること。他社がやっていない困難に取り組むのがシャープの強みですので、挑戦していきたいです。


「RACTIVE Air」の認知を広め、世の中の人から「いいね!」といってもらえるような商品にしていきたいです。そのためには機能性はもちろん、デザインも進化させていかなければなりません。

ゆくゆくは「清潔」という観点で、シャープならではの独自性のある商品やサービスを幅広く提案していきたいですね。


掃除が「嫌いな家事」から「ラクで楽しい家事」に。「RACTIVE Air」が価値観の転換を牽引する存在になるかもしれません。

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RACTIVE Air POWER EC-SR8
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2023年にシャープは111周年を迎えます。

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