カシオ計算機は、ウオッチブランドである「G-SHOCK GRAVITYMASTER」シリーズから「GPW-2000」を発売した。また、OCEANUSシリーズからも「OCW-G2000C」が6月9日に発売される予定だ。カシオ従来の製品は、「GPS衛星電波+標準電波」という2つの時刻受信システムにより時刻を取得していた。新たに登場する2製品は、そこからさらに進化を遂げた「GPS衛星電波+標準電波+Bluetooth(で接続されたスマホ経由のインターネット接続)」という3つの時刻取得システム「Connected エンジン 3-way」を搭載している。そこで、この画期的な腕時計モジュール開発の背景を探るべく、カシオ計算機羽村技術センターで担当者に話を伺った。

G-SHOCK GRAVITYMASTER「GPW-2000」

OCEANUS「OCW-G2000C」

「表現力の向上」も、Connected エンジン 3-wayに課せられたテーマのひとつ

今回お話を伺ったのは、カシオ計算機 時計事業部 モジュール開発部の小島直氏。Connected エンジン 3-wayに関する企画を担当したのも小島氏だ。

――開発の背景についてお伺いする前に、おさらいも兼ねて、Connected エンジン 3-wayの概要についてお聞かせください。

小島氏「Connected エンジン 3-wayは、腕時計の自動化を目指して開発した、カシオ最新の腕時計向けモジュールです。「みちびき」にも対応した新GPS受信システムと世界6局の標準電波時計機能に加え、Bluetoothも対応しています。これにより、スマホアプリ経由でインターネットのタイムサーバーからも正確な時刻を取得でき、タイムゾーンの変化やサマータイム情報の変更といった場合にも、より柔軟に対応できるようになりました」

カシオ計算機 時計事業部 モジュール開発部 小島直氏

「GPS衛星電波」と「標準電波」、さらに「Bluetoothでのスマホ連携によるインターネット(タイムサーバー)」。これら3つの方法で時刻を取得することから、"Connected エンジン 3-way"というわけだ。

小島氏「時計が受信環境に最適なものを自ら選択します。ユーザー側で意識して選択する必要はありません。たとえば、まずBluetoothでスマホに接続を試みます。これが成功すれば、インターネットのタイムサーバーから時刻情報を取得し、標準電波やGPSでの取得は試みません」

――スマホが近くにないときなど、インターネットに接続できない場合は?

小島氏「深夜、みなさんが寝ている間に標準電波から時刻の取得を行います。それでも受信できなかったときは、GPSでの取得を試みます」

しかし、腕時計向けモジュールとしてのConnected エンジン 3-wayの守備範囲は、単なる時刻合わせに留まらず、もっと広範囲にわたると小島氏は語る。

小島氏「Connected エンジン 3-wayは、針を持つアナログウオッチ向けに開発したモジュールです。したがって、針ズレが起きたときに針位置を自動修正するなどアナログ電波ソーラーの信頼性を高めるタフムーブメントに加え、新たにJIS1種耐磁性能にも対応しました。時刻受信がいくら正確でも、アナログ時計の表示精度が良くなければ意味がありませんから。

そして、表現力。以前のG-SHOCK「MTG-G1000」やOCEANUS「OCW-G1200」のモジュールでは、トルクが大きく、回転スピードの速いデュアルコイルモーターを含む5モーター仕様でしたが、今回はこのデュアルコイルモーターをもう1つ追加した6モーターとしました。このおかげで、新しい時計表現としてディスク針が搭載できたのです」

――ディスク針を採用することで、どんなメリットがあるのでしょうか。

小島氏「GPW-2000では曜日や経度、現在のモード表示、OCW-G2000Cではワールドタイムの都市コードやバッテリーインジケーターがディスク針での表現となりました。モードごとに必要な情報を切り替えて表示できるのは、時計の視認性向上に繋がっていますね。これは“デジタルでドライブするアナログ”ならではですね。また、デザイン的にもわかりやすく、文字も大きく見やすくなったと思います。いわば、表現力の向上。これもConnected エンジン 3-wayに課せられたテーマのひとつです」

小島氏が特にこだわったというディスク針。左はOCW-G2000C、右はGPW-2000のもの