「グローブでの操作」を可能にするには

―― サイズについてはどうでしょう? 日本人の腕には少々大きいのではないかという意見もあるようですが。

カシオ計算機 新規事業開発部
大村明久氏

大村氏「液晶モニターの見やすさ、操作のしやすさ、バッテリーの大きさという条件がまずあって、その上で防水性能、耐環境性能などを考慮して、このサイズになりました。求められる仕様のちょうどいいバランスがこの大きさだったのです」

岡田氏「ある程度の大きさがないと、地図など情報量の多いアプリは視認性や操作性が低下してしまいます。それと、アウトドアであれば、このサイズでも付けてもらえるかな、とも考えました。普段は大きな時計をしない女性でも、アウトドアウオッチなら抵抗を感じないとおっしゃる方もいます」

今村氏「大きめで押しやすいハードウェアボタンを実装したい、というデザイナーの希望もありました。アウトドアでの使用を考えたとき、無視できないものに『グローブ装着での使用』があるのです。

右から「ツール起動」「電源」「良く使うアプリ起動」ボタン。この3つのボタンがアウトドアでの操作性を向上させる

グローブを付けたまま、あるいは雨や水で手が濡れている状態では、タッチパネルは極端に操作しにくい。そこで、ハードウェアボタンを装備することで、簡単な操作だけでもボタンでできないかと考えました。

開発当初は、ボタンを5つくらい付けようかという意見もあったんですよ(笑)。結果として3つになりましたが、アウトドアフィールドでは圧倒的に役立つものになったと思います。

ボタンは上から、「ツール起動」「電源ボタン」「良く使うアプリ起動(ショートカット)」。この3番目のボタンに、たとえば、当社のデジタルカメラ『EX-FR100』との連携アプリを割り振ってやると、他のボタンでシャッターを切れたり、ムービー録画の開始/停止ができる。もっとも基本的な操作がボタンだけでできてしまうのです」

―― シャッターは画面タッチでも切れるんですよね。でも、グローブをしている状態ではダメかもしれないし、確かにボタンは確実ですね。

岡田氏「設定などの複雑な操作は、直観的に使えるタッチパネルが便利。アプリ起動やシャッターのような、その場で素早く使う単一の機能は、ボタンが便利ですね」

―― WSD-F10はマイクが実装されていますよね。私はむしろそこに可能性を感じます。いっそ「シャッター!」とか「ビデオスタート!」でいいのでは。それならグローブをしていても、手が濡れていても関係ありませんし。煩わしい操作も必要ないので。

今村氏「会社や街の中でボイスコントロールを使うのって、ちょっと恥ずかしいという方もいらっしゃると思います。でも、アウトドアならあまり気にならないかもしれない。現在、ボイスコントロールに対応しているのは一部の機能のみですが、今後はぜひ拡張していきたいですね。元々ボイスコントロールはAndroid Wearが機能として持っているので、対応もしやすいと思います」

―― 時計としてのもうひとつの要素、バンドについてはいかがでしょう?

大村氏「なるべく柔らかい素材を使って、手首にフィットするように作りました。材質は、カシオの腕時計でも一部展開しているソフトウレタンを採用しました。手首の断面形状にバンドの輪(内壁)をフィットさせていくのですが、これは腕時計開発の現場とまったく同じ方法論です。開発チーム内に腕時計開発の経験者がいたので、その経験を生かして形状を導き出しました」

バンドは軟質ウレタン樹脂製。本体ケースからの線のつながりが美しい

バンドは本体に固定の専用設計。ユーザー側での交換はできない

―― ちなみに、ユーザー側でバンド交換はできるのでしょうか?

大村氏「できません。手首へのフィット感や耐衝撃要素が複雑に絡み合っているため、WSD-F10のバンドは固定式となっています。万が一バンドが破損した場合は、専用のサービス窓口に修理をお申し込みいただく形となります」

ベルトのフィット感を追求するための手法は、腕時計開発の現場とまったく同様だ

―――――

今回はここまで。次回の後編では、WSD-F10の中身や搭載アプリについてお話をうかがう予定だ。まさに目から鱗!? ツールアプリの意外な開発思想とは!?

[PR]提供:カシオ