実際に「Z97-PRO」を触ってみた!

ASUS製Intel9シリーズ搭載マザーボードのラインナップを紹介してきたが、ここからはスタンダードシリーズの中堅どころ、Z97-PROをじっくりと観察してみたい。

ちなみに今回試用したのは、Z97-PROをベースにIEEE802.11ac対応の無線LANモジュールを標準装備した海外仕様の「Z97-PRO(WiFi-AC)」だ。ほぼ同一の仕様なので、Z97-PROとして話を進めていくことをご了承いただきたい。

Z97-PRO(WiFi-AC)

ヒートシンクまわりのデザインが大きく変化

今回のスタンダードシリーズはマザーの見た目も大きく変化した。1世代前の「Z87-PRO」はゴールドのヒートシンクに黄色のスロット、黒のレジストという派手なカラーリングであったが、今回は基板やスロットは黒またはグレー、そしてヒートシンクはシャンパンゴールドという大人っぽい配色となった。また、VRMやチップセットのヒートシンクは車のエンジンパーツを思わせる、凹凸の少ない形状に変更されている。

VRMのヒートシンクはよく見ると2種類の金属ブロックを組み合わせていることがわかる

チップセットのヒートシンクは一般的な角形から円形のものに変更された

まず注目したい装備はチップセット付近に設置されたM.2スロットと、基板端のSATA Expressスロットだ。ご存じの通り、現行のSATA 6Gbps接続のSSDはシーケンシャルリードが毎秒550MB前後で伸び悩んでいる。PCI Expressを利用し、この壁を打ち破るために生まれたのがM.2とSATA Expressだ。

SATA Expressは対応デバイスが未発売だが、PCI ExpressインターフェースのM.2ストレージは徐々に店頭に並び始めているようだ。Z97-PROを使っていれば、対応デバイスが発売されたらすぐ乗り換えることができるだろう。

Z97-PROのM.2スロット。内部的にはPCI ExpressのレーンとSATAの信号線が配線されており、どちらを使うかは装着するSSDで決まる

SATA Expressは2ポート分のSATA 6GbpsとSATA Express専用の小型ポート1基で構成される

バックパネルに無線LANのアンテナ接続口があるのは海外モデルであるため。搭載コネクタは一般的な構成だ

オーバークロックの友である基板上の電源スイッチとPOST LEDを搭載

オーディオとLANはR.O.G.のエッセンスを吸収

M.2やSATA Expressが使えるのがIntel 9シリーズマザーにほぼ共通するメリットだが、実際にデバイスが普及してこれらのインターフェースが効果的に利用できるのはまだ先。となるとハード的に面白くなくては買う価値がないが、そこはASUS、現状のパーツ構成でも自作の面白さを感じられるよう作り込まれている。

その面白さの一翼を担っているのが「Crystal Sound 2」と名付けられたサウンド回路だ。ASUSは2世代前のZ77世代のR.O.G.シリーズより、オンボードサウンドのアナログ回路をデジタル部から隔離する設計「SupremeFX IV」を採用。これが昨今のゲーミングマザーの標準装備として広まっていったが、今回ASUSはスタンダードシリーズにこのアナログ-デジタル分離設計を採用した。

左がZ97-PRO、右がZ87-PROのサウンド回路。Z97-PROのサウンド回路には、アナログ部とデジタル部を分離するラインが入っているが、1世代前のZ87-PROにはそれがない。ラインから外側がアナログ部だ

さらに左右チャンネルの配線層をしっかり分けることで、同じアナログ回路の中でも左右チャンネルのクロストークを防止する設計や、電源投入時などに発生する"ボフッ"というポップノイズを抑える回路など、従来のスタンダードシリーズに比べるとかなり充実している。回路設計の豪華さはR.O.G.シリーズには負けるが、メインストリームのマザーとしてはかなり上質なサウンド回路に進化している。

Z97-PRO以上の製品では、HDコーデックチップにノイズ防止カバーがかけられている。またコンデンサは全製品においてニチコン製のオーディオグレードのものが使われている

オンラインゲーム好きならギガビットLANのコントローラのチョイスにも注目したい。ASUS以外のゲーミングマザーボードだと、オンラインゲームに"向いている"とされるQualcomm Atheros製の「Killer E2200」シリーズの採用例が増えているが、ASUSはスタンダードシリーズに加え、R.O.G.シリーズでもIntel製の「I218-V」を使っている。

もちろんこれにはしっかりとした理由がある。ASUSによると、実際に両者を比較した場合、Intel製NIC(Network Interface Card)もKillerシリーズも性能差を実感できないことが多く、むしろIntel製NICのCPU占有率のほうがわずかに低いという。

Intel製のギガビットLANコントローラ「I218-V」を搭載する

ASUSによるIntel製LANを使うメリット。CPU占有率はKiller E2200よりわずかに低いとされている

Killer E2200シリーズはアプリごとに通信の優先度を設定できるのが売りのひとつだが、Z97-PROに付属するユーティリティ「Turbo LAN」をインストールすることで、同様の機能を追加できる点にも触れておきたい。

また、ユーティリティである「Turbo App」を利用することで最前面に出たアプリをトリガーにして、通信の優先度設定と同時にCPUのオーバークロック(K付きCPUのCPU倍率)やオンボードサウンドの擬似サラウンド(DTS Ultra PC II)の設定も変更できる。ゲームの優先度を高く、クラウドサービスの優先度を低くしておけば、ゲーム中にクラウドサービスの同期処理が発生してもゲームへの影響は最小限に抑えることが可能なのだ。

Turbo LANには予めゲームやメディアプレイヤー等のアプリが登録されている。ゲームの通信の優先度は最初から高く設定されている

ここまで見てきただけでも、ASUS製マザーボードの進化の様子が分かるだろう。しかし、ASUS製Intel 9シリーズマザーボードでの真の見どころは「BIOS」だ。ここからはスタンダードシリーズに搭載されたBIOSのすごさを紹介しよう。