自作PCに迫る自由な構成を完成PCの形で入手できる直販BTOパソコン。ひと昔前なら何より価格を重視するユーザーに人気だったが、ここ数年では市場の成熟から各社がサポート体制を強化してきており、高い安心感を実現しつつ、既製PCには無いパフォーマンスを得られるというメリットが特徴になってきている。

ただ、やはり実際に届くまで完成品に触れられない直販という販売形態が、ネックと言えばネックになる。今回は、そのあたりの"実際"を確認するため、受注サイトを見ただけでは実感しづらいメーカーのパーツへのこだわり、組み立て時のこだわり、納品に関するこだわりなどを会社訪問という形で紹介していこう。

さて、数ある直販BTOメーカーのなかでも、今回紹介するのは弊誌記事でもお馴染みの「サイコム」。店舗を持たないインターネット直販専門のBTOメーカーながら、信頼と実績を獲得し多くのファンを抱える同社は、株式会社となってから今年で10周年を迎える。

1つの社屋に受注・組み立て・検証・出荷を集約

サイコム代表取締役の河野孝史氏とサイコム本社。この社屋の中で受注・組み立て・検証・出荷が行われており、1日あたり100台前後のPCが出荷されている

サイコム本社は東武伊勢崎線草加駅から車で10分ほどの閑静な住宅街のなかにある。今回もサイコムの代表取締役である河野孝史氏にご案内いただき内部にサイコム本社内へと潜入。マイコミジャーナルでのサイコム訪問は4回目ということで、同行の弊誌メンバーなどは慣れた様子だが、はじめて入る筆者はまずパーツの山に驚く。そのストック量は通路をわずかに残すのみ。一般成人男性の背を軽く超えるほどの高さに積み重ねられている。この分野の仕事を生業とする者にとっては大感動の光景だ。

工場内にはパーツが山のように積まれている。一番手前に梱包待ちの製品があったが、Core i7搭載機などが目立ち、どうやらハイエンド志向の顧客が多いことがわかる。ちなみに、サイコムのBTOパソコンでは、完成したパソコン本体の発送時に、搭載した各パーツの化粧箱なども同梱してくれる。購入後に内部をさらにいじるようなユーザーにとっては、こうした付属品の同梱などの心配りも非常に喜ばしいサービスなのだ

社屋は2階建てで内部は外観以上に広く感じる。2階は事務所、1階手前はPCケースや梱包材など比較的大きなパーツのストックと出荷待ちの製品がひしめき合い、奥は小さなパーツのストックと組み立て作業を行う工場、というようにスペースが仕切られていた。サイコムでは、この社屋内で受注、ストック、組み立て、出荷の全てを行っているとのこと。1日あたり100台前後のPCが組み立て、出荷されるというが、1カ所に集約されることで効率も高まるというわけだ。

こちらは組み立てスペース。1件の注文に対し1人のスタッフが組み立て作業を担当する。その手際の良さは並みではなく、少数のスタッフながら日に100台前後の出荷量もうなずける

さて、それでは組み立て工場側へと移動。ここには受注したPCの組み立てを行う作業スペースと、組み立て後のPCの動作チェックを行うスペース、ラインナップ拡充のためのパーツの検証スペースというように分かれていた。4月ということもあり進級・新入学、新社会人など受注の多い時期の訪問となったが、組み立てスペースはスッキリしており、いわゆる工場のイメージだ。スタッフごとに作業台が分かれており、中央および奥側にCPUやマザーボード、HDDなど基幹パーツのストックが置かれている。スタッフは受注票を片手にストックからパーツをピックアップし、それぞれの作業台にて組み立て作業を行っていた。余談だが、壁面には歴代のヒットパーツの箱がディスプレイされており、パソコン好きにはたまらない環境だ。

売れ筋の基幹パーツは組み立て作業スペースのすぐ横にストック。伝票をチェックしながらスタッフがピックアップしていく。この奥のスペースもラックがあり、グラフィックスカードやマザーボード、電源などが山のようにストック