レイメイ藤井はシステム手帳を生産販売しているメーカーの中でも老舗の1つです。手帳が好きな人にはシステム手帳ブランド「ダ・ヴィンチ(Davinci)」になじみがあるでしょう。

同社のラインナップは意外に幅広く、手帳以外にも学童用顕微鏡や天体望遠鏡から、店頭ポップ用の「チョークパステル」のような商品まで様々なアイテムを扱っています。

チョークパステル。チョークと異なり粉が出ないので扱いやすい

また、テレビで紹介された人型の小型ライト「ライトマン」も人気になりました。同社のWebサイトには「知的生産をサポートする複合企業」という文言があります。

ライトマン。ボタン電池で長時間の利用が可能。ボディを曲げて自由なポーズも取れる

そのレイメイ藤井から新しいシステム手帳バインダー「デュアルリングバインダー(DualRingBinder)」が登場しました。これはどういう経緯で誕生したのかをレポートします。

デュアルリングバインダーのバイブルサイズとミニ6穴。サイズ感はリング径15mm程度のバインダーとあまりかわらない

2つのリングからなるシステム手帳

レイメイ藤井は、'80年代後半のファイロファックス(fILOFAX/イギリスのシステム手帳ブランド)上陸直後からメーカーとしてシステム手帳を製造し、他のメーカーに供給していたそうです。

そんな老舗システム手帳メーカーである同社が「ダ・ヴィンチ」ブランドを立ち上げてから21年。この間には、システム手帳の普及価格帯ブランド「KeyWord」や、入門者向けを強く意識した「KeyWordセレクトリフィルシリーズ」なども登場しており、システム手帳ブランドとしてフルラインナップをそろえています。

そしてこの9月に異色のアイテム「デュアルリングバインダー」が登場しました。普通のバインダーを横に2つつなげた形状で、リフィルと呼ばれるシステム手帳の用紙や収納ツールを別々に2系統保持できます。

上がバイブルサイズ、下がミニ6穴サイズ。バインダー部分の素材はポリエステル

レイメイ藤井 マーケティング部 中野謙介部長は次のように語ります。

中野部長「手帳のもっとも基本的な役割は、予定とそれに関連するメモを1つにまとめておくことです。その典型的な形式はレフト式の手帳です」

レフト式手帳では、見開き1週間の左側に予定が、右側にはメモがあります。そして、デュアルリングバインダーでは、予定・メモのそれぞれに1つのリングを専用に割り当てて利用できるというわけです。

リング部分のアップ。デュアルリングバインダーは8mmのリングを採用している。また、レイメイ藤井のリフィルは、このリング径でもひっかからないように、穴の位置が内側にオフセットしている

もちろんこれ以外の使い方もいろいろあります。メモリフィルと収納リフィル、2系統のプロジェクトやメモなど、システム手帳の自由度が2倍以上に広がったアイテムと考えると、ユーザーがどんな風に使うのか楽しみです。

セット例。左側がメモ、右側が収納・アクセサリー系

セット例。これは左側が予定、右側がメモ

バインダー部分にはペンケースの技術を応用

ポリエステル製のバインダー部分にも特徴があります。2つのリングのバインダー部分は2つの接合部背面に磁石が配置され、たたむとぴたっとくっついて1つのバインダーのような形になります。

きちんとまとまって持ち運びがしやすくなるデュアルリングバインダーには、同社の別の文具の技術が使われています。先日グッドデザイン賞を受賞したペンケース「パタリーノ」です。

ペンケースのパタリーノ。フタの部分が本体に磁石でぴったりとくっつくのが特徴。グッドデザイン賞を受賞している

パタリーノは薄型のペンケースで、フラットでスクエアなボディゆえカバンの中でも収まりがよく、邪魔にならないのが特徴です。そしてもう1つの特徴が、フタの部分です。ファスナーを開いた状態で、ボディ本体にぴったりとくっつくようになっており、中のペンなどがよく見え、また取り出しやすくなっているのです。

デュアルリングバインダーは、このパタリーノの仕組みをうまく利用しています。すなわち、2つのバインダー部分が一連になっているだけでなく、折りたたんだときにぴたりとくっつく機構は、パタリーノのものを利用しているのです。

上から見たところ。磁石で2つのバインダー部分がぴたりとくっついている

デュアルリングのバインダーについては、製作のアイデアはあったものの、どういう構造にするか、また革でつくるか別素材にするかなどの点が課題として残っていたそうです。その課題を解決したのが、マグネットでぴたっとくっつくパタリーノの仕組みであり、それが量産できる仕組みがととのったからこそ販売可能になった製品というわけです。

デュアルリングバインダーのパッケージ。製品の特徴がわかりやすく伝わるイラストを利用している

これまでもレイメイ藤井は、手帳の分野で予定記入欄とノートの組み合わせをいろいろな形で提案してきています。それはシステム手帳にとどまらず、ポケットサイズの冊子を組み合わせた「グロワール(GLOIRE)」シリーズであり、あるいは各種綴じ手帳です。この手帳の基本コンセプトと、パタリーノの構造を組み合わせて初めて、デュアルリングバインダーが生まれたわけです。

近年、システム手帳のジャンルに意欲的な新製品が各社から登場しています。その1つに見えるデュアルリングバインダーは、実はレイメイ藤井の手帳に関するコンセプトの集大成であり、同社の他の文具に使われている技術を応用することで生まれたものでもあるわけです。

バイブルサイズをたたんだところ。意外とコンパクト

過去にも2つのリングを持つシステム手帳はありましたが、一部のマニアを除けばほとんど忘れ去られていたと思います。

中野部長「お客さんにこういうアイテムに関する概念がないので、長い目で見ていく商品だと考えています」

システム手帳に再びフォーカスが当たりつつあるこのタイミングで登場した、デュアルリングバインダー。新しいユーザーがどう受け入れていくのかの行方を見据えたいと思います。

執筆者プロフィール : 舘神龍彦

手帳評論家、ふせん大王。最新刊は『iPhone手帳術』(エイ出版社)。主な著書に『ふせんの技100』(エイ出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『意外と誰も教えてくれなかった手帳の基本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『手帳カスタマイズ術』(ダイヤモンド社)など。また「マツコの知らない世界」(TBS)、「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)などテレビ出演多数。手帳の種類を問わずにユーザーが集まって活用方法をシェアするリアルイベント「手帳オフ」を2007年から開催するなど、トレンドセッターでもある。手帳活用の基本をまとめた歌「手帳音頭」を作詞作曲、YouTubeで発表するなど意外と幅広い活動をしている。

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