連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。


アラサーにとって"老後"はまだまだ先です。今から老後の心配をしても仕方ない面はありますが、かといって何もしなければ老後のお金が不足します。心配しすぎず、でも老後に備えることができる方法、それは"よい習慣"です。

「老後はまだ先」という考えは危険

老後がいつ始まるのか、はっきりした定義はないようです。退職したとき、あるいは公的年金を受け取り始めるときだとすると、65歳。老後破産するとしたら、それより更にあとでしょうから、アラサーからすると30年以上先の話ということになります。

30年先の日本や世界はどうなっているか、予測するのは難しいものの、公的年金の水準が今より下がるのはほぼ確実と見られます。

"よい習慣"で老後破産を回避する(画像はイメージ)

総務省の「家計調査」によると、2016年の高齢者世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの世帯)の家計を平均すると、毎月の収入が約21万2,800円なのに対し、支出は約26万7,500円で、およそ5万5,000円の赤字。1年にすると66万円を貯金などから取り崩しているわけですね。それが30年続くと1,980万円という計算になります。

アラサーが公的年金を受け取るころ、年金の水準が今より下がり生活費が今と同じ水準だとしたら、毎月の赤字額はもっと大きくなるので、そのぶん貯蓄が多くなければなりません。老後に必要なお金を老後間近になってから準備しようとしても間に合わないので、若いうちから計画的にお金を貯めていく必要があります。「老後なんてまだ先の話」と考えて何もしないでいると確実に老後破産してしまいます。

でも、だからといって、老後を心配しすぎるあまり、生活費以外のお金は全部貯蓄に回すというのも考えもの。人生を豊かにするには、人とのつきあいや趣味も必要です。それにかかるお金まで老後資金に回してしまっては、何のための人生だがわかりません。老後破産しないために、今の生活を楽しみながら、今できることをしましょう。

アラサーは老後までに時間があるのですから、その時間を有効に使うのがポイント。お金とのつきあい方を習慣化あるいはパターン化して、手間やストレスなく支出を抑えたり、貯蓄・運用したりしていくのです。

老後に備えるための「よい習慣」

小さな支出も積み重なると大きな出費になり、そのぶんお金が貯められなくなります。今どきは、クリック1つで買い物ができたり、コンビニで何でも用が足せたりして便利な反面、衝動買いや"ついで買い"がしやすくなっているといえます。そこで、「買いたいな」と思っても、ちょっと立ち止まって、それが自分にとって本当に必要かどうかを考える習慣を身につけると、それだけで余計な支出を抑えることができます。また、お金を使ったらすぐにスマホの家計簿アプリに記録することを習慣づけるのも、ムダ遣いを防ぐ効果があります。

おサイフにお金がなくなるたびにATMでお金を引き出していると支出の管理ができないし、ATMの時間外手数料がかかることもあります。なので、例えば月1回、あるいは週1回など日にちと金額を決めてお金を引き出すようにして、次の引き出し日まではその金額でやりくりする習慣をつけるのもよいですね。

貯蓄・運用も、積み立てでパターン化できます。財形貯蓄や自動積立定期預金、投資信託の積み立てや確定拠出年金は、毎月一定額が貯蓄されたり、掛け金として運用されたりするので、手間をかけずに資産を増やすことができます。

節約も貯蓄も運用も、「やらなければ!」と力を入れすぎると途中で疲れて挫折しがち。それよりも、習慣化・パターン化して生活の一部にしてしまう方がラクだし長続きします。小さな節約や少額の貯蓄・運用でもコツコツと30年続ければ、まとまった金額になります。お金とつき合う"よい習慣"を身につけて老後破産を回避しましょう。

※画像は本文とは関係ありません。

執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。