連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。
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老後破産が心配だからといって、お金を貯めることだけが生きがいのようになってしまっては楽しくありませんよね。人生には"うるおい"も必要です。生活していく上で最低限必要な支出のほかに、生活を豊かにする"ゆとり費"はあって構いません。ただ、食費、光熱費、住宅費などにはおおよその上限があるのに対して、うるおいのための支出はお金にゆとりのある限り増えていってしまうリスクがあります。

趣味は残ったお金の範囲で楽しむ

特にシングルの場合、収入のすべてを自分のために使えるので、生活費以外のお金がぜんぶ"ゆとり費"になってしまって貯蓄ができないという人も見受けられます。中でもふくらみがちなのが、趣味への支出。

例えば、何かのコレクションをしていて気に入ったものがあると大人買いしてしまう。タレントやアーティストのファンで、コンサートやグッズ購入には糸目をつけない。そのほか、カメラ、雑貨、ワイン、着物など、好きなものや気に入ったものがあるといくらでもお金を掛けてしまうという人も多いようです。

それでも計画的に貯蓄ができていればいいのですが、貯蓄すべき分まで趣味に使ってしまうと、老後の生活費に影響が出てくるかもしれません。趣味にかけるお金は、収入からまず貯蓄をして、残ったお金の範囲で楽しむようにすることが大切です。

趣味は残ったお金の範囲で楽しむ

「自分へのご褒美」は自分自身への言い訳?

もう1つ、"ゆとり費"の使い過ぎにつながるのが「自分へのごほうび」。例えば「今日はよく働いたなぁ」と仕事帰りにコンビニでスイーツやビールを買うといったものから、「今月はよく働いたなぁ、だからちょっとぐらい贅沢してもいいよね」とブランドのバッグを買うとか、いろいろなケースがあります。 必要以上の買い物はムダ遣いですが「自分へのごほうび」という名前をつけるとムダ遣いでないように思えるもの。そうやって自分自身にいいわけしているわけですね。

頑張った自分にごほうびをあげるのは悪いことではないし、それでモチベーションがアップすることもあるでしょう。でも、ごほうびの回数が多かったり、金額が大きすぎたりしたら、それは行き過ぎです。

ごほうびも「月にいくらまで」とか「ボーナスの○割まで」のように自分で上限を決めましょう。

「自己啓発費」は費用対効果を考える

必要なように見えて実はムダになりがちなものに「自己啓発費」があります。例えば、キャリアアップのために専門の雑誌を定期購読しているけれど読む時間がなくてたまっていくばかりとか、「今年こそ英会話を身につけよう」と買った教材が手つかずのまま部屋のすみでほこりをかぶっているとか。健康のためにスポーツクラブの会員になったけれど、ほとんど行かずに会費だけ払っている、という人もいるかもしれませんね。

自己啓発は誰にとっても大切です。でも考えたいのは"費用対効果"。お金を払っただけの効果がなければ、それはムダということです。これまでにこのタイプのムダ遣いをしてしまった人は、その方法が自分に合っていないということを学んだはず。なので、同じ過ちは繰り返さないようにしましょう。

趣味は人生を豊かにしてくれます。自分へのごほうびは明日への活力の源になります。自己啓発で自分を高めていけば、それがキャリアアップや収入アップにつながることもあるでしょう。

だからといって、いくらでもお金をかけていいというものではありません。"ゆとり費"も貯蓄とのバランスが大切。自分を甘やかさず、支出をしっかりコントロールしていくようにしてください。

執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。