ブルームバーグによれば、「4月7日、米国の石油純輸入が2037年までにゼロになる可能性があるとの見方を米エネルギー情報局(EIA)が示した。ノースダコタ州のバッケンやテキサス州のイーグルフォードなどにシェール層での増産が背景」という。昨年のレポートでも書いたが、私が訪問したバッケンでのシェールオイル生産も相変わらず好調なようだ。

アメリカで見たバッケンの作業員たち

翌8日のEIAは「2013年の新規発電所の半分が天然ガス火力プラント」だと発表している。天然ガス=6861メガワット、太陽光=2959メガワット、石炭=1507メガワット、風力=1032メガワット……。安いガスで発電ができるわけで、製造業にとってはアメリカでの生産を進めたくなるもの当然だろう。

需要が急増しているLNG(液化天然ガス)船が三菱重工長崎造船所のドックに

そんなシェール革命の影響を、日本の長崎でも見ることができた。「この街では三菱(重工長崎造船所)と関係のない仕事に就いている人はほとんどいないんじゃないですか」と、タクシーの運転手はいう。しかも、親戚の誰かが三菱重工長崎造船所か、その関係会社で働いている場合も多いのだとか。

長崎駅に着き、2階のテラスから外を見ると、丸いタンクを載せた巨大な船が三菱重工長崎造船所のドックに収まっていた。いま、需要が急増しているLNG(液化天然ガス)船だ。ガス田からパイプラインでつながっていればよいのだが、島国日本に運んでくるためには、気体である天然ガスをマイナス162度まで冷やしてわざわざ液体にして船に載せて運んでくるしかない。

長崎駅前から見た東電のLNG船

日本にもパイプラインをつなぐという話は、あるにはある。サハリンと北海道をつなぐというものだ。しかし、「ロシアはリスクが高い」と、需要家である電力、ガス会社が及び腰なのだという。「エネルギー供給源の多様化が必要」と、原子力発電所の再稼動に熱心な電力会社が、ポートフォリオの一つとしてのロシアからのパイプラインを否定するというのも妙な話に思えるが……。

新しいLNG船を"女神大橋"から見る--何やらありがたい気持ちに

長崎駅から見えたLNG船は、東京電力のもので、定期修理に来ていたもの。LNG船の新しいものであれば、三菱の香焼工場でも作っていると、タクシーの運転手が教えてくれた。2005年に完成した"女神大橋"から見ることができるという。

女神大橋とは、また凄い名前だと思いながら、言われるままにタクシーを走らせた。深く入り込んだ長崎の港は、向こう岸に行くために逆Uの字をグルッと回る必要があったが、女神大橋ができることでショートカットができるようになった。橋の上はものすごい強風だった。遠くに2隻のLNG船が確かに見えた。

女神大橋の上から見た建造中の大阪ガス、中部電力のLNG船

こちらは、中部電力と大阪ガスのものだという。この船がパナマ運河を渡って、遠くメキシコ湾まで行ってシェールガスを運んできてくれるのかと思うと、何やらありがたい気持ちになってきた。