ポット型浄水器、なかでも冷蔵庫のドアポケットにピッタリ収まるサイズのポット型浄水器は、この季節に大活躍するアイテムの1つだ。ポット型浄水器はまったく電気を使わない製品なのだが、冷蔵庫のお供ということで、このコラムでも何度か取り上げている。

冷蔵庫のドアポケットに納まるポット型浄水器。写真はパナソニックの「TK-CP11」

さて、ポット型浄水器は、使用しているフィルターの種類によって大きく2つに分類される。1つは主に活性炭をフィルターとして使用している製品。ポット型浄水器のメジャーブランド「ブリタ」や、東レの「トレビーノ」などがこのグループだ。もう1つは、活性炭に加えて中空糸膜フィルターを使用している製品だ。三菱レイヨン・クリンスイの製品や、パナソニックの製品がこのグループだ。

濾材の量にもよるのだが、大まかにいうと、活性炭をメインにしたタイプには、濾過が速い、カートリッジが安価といった特徴がある。それに対して活性炭に加えて中空糸膜フィルターを使用している製品には、不純物をより多く取り除くという特徴がある反面、濾過に時間がかかる、カートリッジの価格は高めというデメリットもある。

以前に、2種類のポット方浄水器、02クリンスイピッチャーシリーズの「CSP4」と、ブリタの「リクエリ」の旧タイプを比較したことがある。CSP4は活性炭に加えて中空糸膜フィルターを使用している製品で、リクエリは活性炭をメインに使用した製品だ。両者で規定量の水道水を濾過したところ、ブリタでは2分16秒、一方のCSP4では9分10秒必要と、かかる時間に大きな開きがあった。

圧倒的に濾過が速かった「クリエリ」(旧タイプ)

ちなみに、蛇口直結型の浄水器では中空糸膜フィルターが標準的に使用されている。ポット型浄水器は重力のみで濾過を行う。それに対して、蛇口直結型の浄水器は水道管内の水圧で濾過を行う。そのため、中空糸膜フィルターを使用しても十分な濾過流量スピードを得ることができる。CSP4の濾過流量スピード0.09L/分に対して、蛇口直結型の「クリンスイCSP701」の濾過流量スピードは1.2L/分だ。なお、CSP4は既に生産・販売が完了している。現行モデルの「クリンスイCP05」の濾過流量スピードは0.1L/分だ。

筆者は、その後のコラムで取り上げた、パナソニックの「TK-PA10」を現在も使用している。一時期は、ポット型浄水器3台持ち状態だったのだが、徐々に整理して、最後に残ったのがTK-PA10だ。

ポット型浄水器3台持ちは、小型冷蔵庫には向いていない

パナソニックのポット型浄水器では、浄水機能に加えてミネラルの添加機能を持たせた製品がよく知られている。「日本の名水に、学びました」というコピーを目にした人も多いのではないだろうか。TK-PA10は既に生産が完了しており、現在はその後継の「TK-CP11」が販売されている。TK-PA10とTK-CP11は活性炭+中空糸膜フィルターを採用した製品だ。TK-PA10の濾過流量スピードは0.06L/分、カートリッジが改良されたTK-CP11の濾過流量スピードは0.09L/分だ。なお、TK-PA10の純正カートリッジは「TK-PA20C1」という製品なのだが、これは既に生産が完了している。代替品はTK-CP21C1/C2となっており、これはTK-CP11用の純正カートリッジだ。そのため、現在は、TK-PA10の濾過流量スピードも0.09L/分ということになる。

「TK-CP21C1」を装着した「TK-PA10」。日本の名水に学んでいる浄水器だ

さて、パナソニックでは、活性炭+中空糸膜フィルターを使用していないポット型浄水器もリリースしている。それが「TK-CP12」だ。TK-CP12は、フィルターに活性炭+不繊布を使用している。濾過流量スピードは0.2L/分。スペック的には、TK-CP11の2倍以上の速度で濾過を行えることになる。

フィルターに活性炭+不繊布を使用した「TK-CP12」。日本の名水には学んでいない

しかしこれはあくまでも公式スペックによる差だ。2つのポット型浄水器で、実際に濾過を行い、どのくらい時間に差があるのかを測定してみた。

500mlの水を同時に注ぎ、濾過スタート

「TK-CP12」の濾過が終わっても、「TK-PA10」はまだ半分以上残っている

その結果、500mlの水道水を注いで濾過し終えるまでの時間は、TK-PA10にTK-CP21C1を付けたものが約3分50秒で、TK-CP12が約1分15秒だった。TK-PA10にTK-CP21C1を付けたものの場合約0.13L/分で、TK-CP12がが約0.4L/分ということになる。スペックとはかけ離れている。以前に同社に伺ったところによると、公式スペックは、水温が低いといった厳しい状況のケースを考慮した数値とのことなので、今回測定した数値のほうが普通に使っているときの値に近いのではないだろうか。いずれにせよTK-CP12はなかなか高速だ。

浄水を使おうとしたとき、ポットの中の水が少ない、あるいは水がないといった場合、TK-PA10の濾過時間の長さには、本当にいらいらさせられる。TK-CP12は、その欠点は克服しているようだ。

TK-CP12にはミネラルの添加機能は搭載されていない。濾過された水の味はどうなのだろうか。両者で濾過した水を飲んでみたのだが、筆者にはその味の差はわからなかった。そこで、フィルターの寿命を縮める可能性があるので、こういったことはあまり行わないほうがよいのだが、両方のポット型浄水器でアイスティを濾過してみた。

アイスティーを濾過してみる

下の写真の左から、TK-PA10にTK-CP21C1を付けたもの、TK-CP12、濾過していないアイスティーの順だ。TK-PA10にTK-CP21C1を付けたものは、さすがに活性炭+中空糸膜フィルターだ。一方、TK-CP12ではかなり紅茶の色が残ってしまっている。3つを飲み比べてみると、濾過していないアイスティーは、当然ながら紅茶の味だ。TK-CP12は、薄めた紅茶のような香りと味がする。TK-PA10にTK-CP21C1を付けたものはは、ほとんど水だ。

フィルターの種類によって、結果に大きな差があるようだ

これほど圧倒的とは言わないが、やはりTK-CP12の濾過能力的は、TK-PA10、あるいはTK-CP11には及ばないようだ。濾過に時間がかかるということは、それだけ多くの不純物を取り除いているということなのだろう。

速度と濾過能力だけでなく、2つの製品には、ポットとしての使い勝手にもかなりの差がある。また、TK-CP12と、同じように速度の速いブリタのポット型浄水器とTK-CP12ではどうなのかも気になるところだが、これらはまた次の機会にしたい。