前回まで現時点でのLED照明について話を進めてきたが、今回は年の初めということもあり、未来に向かった話を進めていきたい。家庭でのLED照明は将来どうなるのかという点についてだ。

まずは、中長期的な話だ。2010年頃から急速に普及したLED電球だが、その次は?となると、なかなか見えてこないのが現状だ。直管LEDに関しては、JEL801規格に対応した製品が主流になりつつある。しかし、これは主に40形以上を中心としており、対象としているのは工場やオフィスといった施設で、一般家庭にはあまり縁のない話だ。JEL801規格の直管LEDでも、20形以下の製品がないわけではないが、これも家庭用ではなく上記の施設の通路部分や階段などに設置されることを想定した製品だ。家庭向けでは、エレコムなどが蛍光管のリプレース(置き換え需要)を狙った独自規格の製品をリリースしており、家電量販店だけでなく、スーパーなどでも流通している。だが、これは主流ではなく、ニッチを狙った製品だろう。直管以外の光源を置き換える製品はどうかというと、サークラインや高周波点灯専用管のリプレイス用の製品などは、市場では見ることがない。白熱電球からの置き換えの場合には、経済的なメリットも大きいが、蛍光管からの置き換えでは初期費用に見合うだけの大きな差は現われてこないというのが大きな理由だと思われる。

中長期的には、家庭用の照明では、既存の器具に取り付けるLEDランプよりも、LED専用器具のほうが主流に(写真は、日立アプライアンスのLEDシーリングライト)

白熱電球や蛍光管を置き換える製品、つまりLED電球や直管LEDは、既存の白熱電球や蛍光管を使用した照明器具に使用することを前提としている。しかしここに、大きな問題がある。例えば、LED電球では配光角がよく取りざたされるが、これは電球用の器具にLEDを使用するから起こる問題なのであって、初めからLED専用に設計された照明器具ならば、こんなことが問題にはならない。放熱の問題も同様だ。過去の照明器具は、LEDランプに本来は必要のない機能を強制すると同時に、LEDならではのデザインの自由度の高さに対する制約ともなっている。普及期には必要なことかもしれないが、電球や蛍光灯をターゲットとして造られた照明器具のイメージにいつまでも囚われることはない。家庭では、次第にLED専用器具が主流になってくるはずで、LED電球や直管LEDは、一般家庭での照明としては、長期的に見れば過渡的な製品となるだろう。

ここまでは中長期的な話だが、ここからは今年起こることについて話を進めよう。まず、LED電球や直管LEDが電気用品安全法による規制の対象となり、一定の安全基準を満たすことが求められるようになる。基準を満たした製品には「PSEマーク」が付与され、それ以外の製品は国内での流通が不可能となる。昨年12月末に正式な内容が公布され、今年の7月1日より施行される。この記事を書いている段階では、規制の内容については、昨年11月に行われたパブリックコメントの募集を見るしかない。安全性ということを考えれば、電源を内蔵した機器かそうでないかというのは大きな分かれ目になる。直管LEDでも、電源を内蔵しているものは重量があり、落下などの危険があるという点は、新規格を推進する側から度々指摘されてきたことだ。しかしPSE法では、例えば電源を内蔵した直管LEDといった区分にはなっていないようで、LED電球、JEL801規格の直管LED、独自規格の直管LEDといった、すべてのLEDランプを、PSE法の規制対処に含めるという方向のようだ。

LEDランプもPSEマークの対象に

次に起こることが、LEDランプユニットの規格化だ。デスクスタンドやダウンライトなどに使用されているコンパクト蛍光ランプは、あまりにも種類が多すぎてユーザーの混乱を招いている。ランプが寿命を迎えた際には、そのランプを店頭まで持っていかないと、同じ規格のものを購入するのが難しいという状況だ。メーカー側では、LED照明でのユーザーの混乱をとにかく避けたいという思いがある。こちらも、どうやら7月ごろにはJISの規格として制定されるらしい。規格の内容についてはまったく不明なのだが、現在のところLEDランプユニットとして一般に販売されているのは、E26/17/11のソケットを使用したLED電球や、GX53口金を使用したランプユニット、コンパクト蛍光ランプ用の口金を使用したLEDユニットなどが存在する。LEDランプユニットの規格としてまったく新規のものが制定されるとは考えにくい。いずれにせよ、現在の混沌とした状況は収束していき、2012年夏以降はより安心してLED照明を選べる環境が次第に整っていくだろう。