かつて、年末の行事として行われる大掃除では、蛍光管の交換も行われるのが普通だった。しかし、長寿命タイプの蛍光管の普及によって、こういったことは行われなくなってきている。一般的な蛍光管の定格寿命が6,000時間前後であるのに対して、長寿命タイプでは9,000時間~1万5,000時間と、1.5倍~2.5倍に寿命が伸びている。こうなってくると、年末に蛍光管を交換すると、次に交換するのは、翌々夏であったり、翌々々夏であったりと、そのサイクルは一定しない。そのような事情から、「蛍光管を取り替えるのは年末」という認識は減ってきた。

長寿命タイプの蛍光管の普及によって、年末に蛍光管を交換する必要はなくなった。写真は、1万5,000時間の定格寿命を持つパナソニックの「パルックプレミアLS」

これがLED照明になるとどうなるのか。LED照明では、3万~5万時間の定格寿命を持つものが多い。1日16時間点灯した場合、定格寿命が3万時間の製品では約5年、5万時間の製品の場合には約8.5年の間、使用できることになる。では、その後はどうなるのだろうか。

白熱電球や蛍光灯を使用した照明器具では、「(照明を取り付ける)器具の寿命>ランプの寿命」という関係が成り立つ。ただし、白熱電球を使用した器具と蛍光管を使用した器具とではその意味合いは異なってくる。白熱電球を使用した器具では、器具の主な構成要素はソケットと電源コードだ。これらの劣化が進んだ場合、例えばコードが断線した場合には、コードを交換する必要があるが、基本的には寿命にそれほど神経質になる必要はない。一方、蛍光管を使用した照明器具では、安定器に使用されている電解コンデンサの寿命=器具の寿命だ。周囲の温度によっても変化するが、安定器に使用されている電解コンデンサの寿命は3万~4万時間とされている。普通の蛍光管を使用している場合ならば、ランプを5回交換、長寿命タイプの蛍光管を使用している場合は最長でも2回ランプを交換すると、器具の寿命切れが近いことになる。もちろんそれは家庭用の照明器具の話で、施設用の器具では、安定器が交換可能となっているが。

電解コンデンサが寿命を迎えると、電解液が飛び散り、周囲に影響を与える。そのため、単純にパンクしたコンデンサを交換すればよいというものではない。日立アプライアンス(旧日立ライティング)が、電源部分とランプ部分とが分離し、ランプ部分だけが交換可能な電球型蛍光灯「FTH15EL/13/ADE」(電球色)、「FTH15ED/13/ADE」(昼光色)をリリースしているが、同社によると、1つの電源回路で、ランプ約3回の交換が可能とのことだった。

電球型蛍光灯としてはエコ性能の高い日立アプライアンス「ナイスボールV ぶんりくん」

LED照明の場合も、光源であるLEDはダイレクトにAC100Vで動作はしないので、内部に電源回路が組み込まれている。そのため、LED照明器具の寿命も、蛍光管を使用した照明の場合と近いと考えるべきだろう。ランプが定格寿命を迎える頃には、電源部分の劣化も進んでいるという事態が多いと思われる。

家庭用として販売されているLED照明器具には、光源たるランプの交換が可能なものと、そうでないものとがある。例えば、現在販売されているLEDシーリングライトは、ランプの交換には対応していない。一方、LEDダウンライトなどでは、ランプの交換に対応しているものもある。ただしこれは、光源にLED電球を使用していたり、あるいは電源込みでユニット化されたLEDランプを使用したりする製品だ。LED電球やユニット化されたLEDランプは、それ自体が完結した一種の照明器具のようなもので、白熱電球と同様にソケットと電源コードだけで点灯する。それ以外の側(がわ)の部分は、まさしく「側」でしかない。

電源が内蔵されたLEDランプ「LEDユライトエンジン」(東芝ライテック)

LED照明器具では、JEL801に準拠した直管LEDが普及の兆しを見せている。これらは器具側に電源が内蔵されているが、基本的に施設用であり、施工やその後のメンテナンスは専門の業者が行うため、さほど問題にはならない。それに対して、そういったサポートが受けられない家庭用の製品では、電源部分あるいは器具全体での交換というのは、コストはかかるが、ある意味安全な仕様だといえるだろう。家庭用に限っていえば、LED照明器具の寿命=光源の寿命だ。

LED時代の家庭照明では、ランプの交換は不要になる。寿命を迎えたら、器具ごと交換してしまうからだ。