給料も上がらない、年金もあてにできない……。そんな時代の流れの中で、"不労所得"を獲得するためのノウハウがいま注目を集めている。その代表が「不動産投資」だ。家賃収入で、働かずしてお金を稼げることは、昔から不労所得の典型として多くの人のあこがれでもあった。しかし、不動産を得るにはそれなりの資金が必要。まずその資金を確保するところで、多くの人がつまずいていた。

注目したのは「競売物件」

できる限り初期投資を抑えて、不動産投資を始める方法はないのか? 栃木県に住む楠田典久さん(仮名・36歳)は某企業で研究開発を行うビジネスマン。その楠田さんが注目したのは競売物件だった。

「7年前、ある程度資金が溜まったところで競売物件の話が舞い込んできました。一戸建てで約100坪の物件が、900万円で落札できました。ボロボロだった物件ですが、自分で1年ほどかけて修理。月々家賃10万円で貸し出し、利回り10%を確保しました」

利回りとは、不動産に投資した金額を1年間にどれだけ回収できるかを示した数字。年間の家賃収入から必要諸経費と税金を引く。それを物件価格で割り100を掛けた数字が実質利回りだ。この数字が高いほど、利益が上がっている優良物件となる。大都市圏なら8~10%、地方なら10%~12%ほど取れていれば良いとされる。

1件目の物件の成功で、銀行の評価が大きく変わったと楠田さん。その後は銀行からのローンが下りるようになったため、物件購入は比較的楽にできるようになった。現在7物件、計30戸のアパートの大家として収入を得ているという。

「全部合わせて、実質利回りが13%を超えています。毎月の収入は100万円ほどなので、うまく回っていると思います」(楠田さん)

物件はできるだけ実家の近くに確保し、入居者の希望や修繕などに素早く応えられるようにするのがポイントだと話す。

「住宅ローン」を活用することで大家になる方法が…

さらに住宅ローンを活用することで大家になる方法がある。自宅と賃貸物件を一緒にする「賃貸併用住宅」がその方法だ。4年前、都内に「賃貸併用住宅」を建てることで、大家になったのが川俣隆二さん(仮名・39歳)。

「最初、不動産投資を始めようと銀行を数十件回りました。しかし年収や経験不足などがネックになり、どこも融資してもらえませんでした。そして決まってどこの銀行も『住宅ローンならすぐに融資できるんですが』と言うのです」

そこで不動産業者に相談したところ、「賃貸併用住宅」の存在を教えてくれた。新築物件で、自分たちの居住スペース以外に賃貸スペースを合わせて作る。住宅と賃貸を併用した物件で、ポイントは住宅ローンをそのまま賃貸物件購入の費用に充てられるというところだ。

「まず住宅ローンは融資が受けやすい。普通のアパートローンの場合は収益性や大家としての経験などが厳しく審査されますが、住宅ローンなら通常の会社に勤めていて、ある程度の収入が確保され家計が健全であれば基本的には融資が下ります。何よりアパートローンの金利は4~5%と高く、返済期間が木造だと22年までなのに対し、住宅ローンは金利は1%程度、返済期間も最長で35年と、ずっと有利な条件になっています」(川俣さん)

川俣さんは「賃貸併用住宅」にすることで、約4500万円の物件のうち頭金400万円、残りの約4100万円を住宅ローンで借りることに成功した。金利が安いため同じ返済額でも元金が減るスピードが、通常のアパートローンよりもはるかに早い。

しかも魅力的なのは、毎月のローン返済額よりも、家賃収入の方が高いことだ。現在4部屋を貸し出していて、毎月家賃収入合計が20万5000円。それに対してローン返済額は13万円。新築の住宅を購入したのに、毎月7万5000円の収益が入ってくる。

「賃貸併用」にすることで、住宅購入と同時に不動産投資にも

「誰もが住宅を建てる時は不動産購入の出費として捉えます。しかし賃貸併用にすることで、住宅購入であり同時に不動産投資にもなります。逆転の発想をすることで毎月ローン返済に追われるはずが、一転して毎月お金が入ってくるようになる」(川俣さん)

これから自宅を購入しようと考えている人、あるいは不動産投資に興味を持っている人は、川俣さんのような「賃貸併用住宅」も選択肢の一つに入れておくのがいいだろう。

「とくに不動産投資は最初の1棟目が成功するかどうかで、次の融資がスムーズに下りるかどうか決まります。その意味でも『賃貸併用住宅』はローンの利率が低く、成功しやすい条件がそろっています。まずこの方法で大家デビューし、銀行や不動産会社の信用を得てから、さらに手を広げていくのがよいでしょう」(川俣さん)

不動産投資と言うとハードルが高そうに聞こえるかもしれない。しかしこのような方法を駆使することで、サラリーマンで働きながら大家として副収入を得ることも可能なのだ。

執筆者プロフィール : 本間 大樹(ほんま たいき)

月刊誌の編集を経てフリーの編集、ライター。経済、マネー、法律などの分野を中心に雑誌や単行本を執筆している。

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