日本特撮ヒーロー史に燦然と輝く伝説的名作として、今なお語り継がれている宣弘社制作のテレビシリーズ『シルバー仮面』(1971年)と『スーパーロボット レッドバロン』(1973年)の2作品が、最新の映像技術を駆使して現代によみがえった。『BRAVE STORM/ブレイブストーム』と名付けられたこの作品は、11月10日よりいよいよ全国ロードショー公開されている。

作品世界の異なる『シルバー仮面』と『レッドバロン』がどのように組み合わさるのか、映画ならではのストーリーも大いに気になるところだが、現代風に新生したシルバー仮面とレッドバロンのキャラクターデザインや、ダブル主演となる大東駿介、渡部秀に代表される魅力的なキャスティングなど、本作には特撮ファンならずとも注目すべき多くの要素が詰まっている。

ここでは、本作のプロデューサー、脚本、監督をこなした岡部淳也氏(ブラスト代表取締役)にインタビューを敢行。ついに公開を迎えた『ブレイブストーム』について直撃した。

――まずは、本企画の成り立ちについて。『シルバー仮面』『レッドバロン』といえば、もう40数年も前の特撮テレビ作品です。なぜこれらの作品をリブートすることになったのでしょう。

映画の企画は宣弘社作品をフィギュア商品化していたアルバトロス・ジャパンの村田修一さんが「宣弘社の作品を映画としてリブートしたい」と、もう7、8年ほど前から構想していたものでした。最初の企画案のとき、すでに「ブレイブストーム」というタイトルは決まっていたのですが、僕自身はどういう由来でこのタイトルになったのかはわかりません。この企画が2015年ごろいきなり実現することが決まって、僕が具体的な契約や出資関連書類の作成から映像化までの道筋をやることになった。そんな流れで、なんとなく僕が実質のプロデューサーになってしまいました。

――最初は『シルバー仮面』『レッドバロン』に加えて『アイアンキング』(1972年)も入る構想だったとうかがっていますが、3作から2作の合体作品になったのはなぜですか。

確かに最初の企画案だと3作品を組み合わせることになっていたのですが、具体的なストーリーはまったく決まっていませんでした。この3作を一緒にまとめて話を作るのはちょっと無理だと思ったんです。『アイアンキング』は静弦太郎と霧島五郎が旅をしながら悪の軍団と戦うロードムービーっぽい話で、他の作品と組み合わせづらい。だったらもう『アイアンキング』だけ外して『シルバー仮面』と『レッドバロン』の2作だったら実現可能だなと思って企画を作り直しました。

――脚本、監督を兼任されたのはどういった経緯からですか。

もともと円谷プロで『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(2009年)の脚本を書いていましたからね。あの映画では、従来のウルトラマン映画のような「光と闇の争い」とか「信じる心が奇跡を呼ぶ」みたいな展開をわざと避けて、僕の好みとする体育会系のストーリーを作ったんです(笑)。それで今回も、2作品を組み合わせてストーリーの構成を考えていると、この方向でいいんじゃないか……最後まで書いちゃおう、ってことで全部書いてしまったわけです。

でも、1人で書いていると問題点が見えてこないですから、映画監督の北村龍平さんに客観的意見をもらいながら進めていきました。また、SF作家の堺三保さんにも意見を仰ぎましたね。映画に出てくる時間移動について不整合を指摘してもらったり。ふだんSF映画を観ていて、「ここが矛盾してる!」なんて一番物言いが多い方に先に見せて、ツッコませまくりながら脚本を作り上げていったんです。監督を自分がやることになったのも成り行きみたいなもので、多分僕は日本で一番"監督をやりたくなくてやっている監督"だと思っています(笑)。

――キャスティングについてお尋ねします。『シルバー仮面』の春日兄弟や『レッドバロン』の紅健、紅健一郎など、旧作と同じネーミングでありながらみなさんまったく新しいイメージでそれぞれの役をつかんでいると思います。まずは主役のお2人から。

春日光二は新人ではなく、役者としてスペックの高い俳優に演じてもらいたかった。大東さんは大阪で劇団新感線の舞台に出ているところに会いに行って、出演をお願いしたんです。最初は断られるか……と思っていましたが、とても快く引き受けてくださいました。紅健は最初、石川賢のマンガに出てくるような"狂犬"のイメージでシナリオを書いていたのですが、渡部さんと出会ったとき、「これはこれでいいな」と考えを変えて、渡部さんの爽やかなイメージに合わせてワイルドさを修整するよう、シナリオを書き直しました。こういうところのフットワークの軽さは、プロデューサーと脚本と監督を全部1人でやっている強みなんですね。別々だとそれぞれの意見が分かれたり、調整したりする手間がかかりますが、今回は僕のみの判断で、どんどん変えられるわけですから。

――光二を支える弟の光三、妹のはるかも素晴らしい活躍を見せてくれました。

光三も最初はもっとイロモノ的なキャラになるはずだったんですが、タモト(清風)くんに会ったら気が変わって、飄々とした人物像になりました。役者さんの持つ表現力というものがありますから、会うとどんどんいいところが膨らんで、こういう部分もあるよなと気づかせてもらえるんです。それで演じてもらったら大正解だったという。一方、はるか役の山本千尋さんは撮影に入る以前からよく知っていたんですよ。だからシナリオでも、彼女の特技(武術太極拳)を生かしたシーンを最初から想定して入れていました。

――長男の光一には、役と同じ名前を持つ春日光一さんが、長女のひとみには壇蜜さんがキャスティングされ、出番は多くないものの強烈な存在感を残しています。

壇蜜さんのひとみは、この映画全体を包み込むような「母性」を求めた結果ですね。春日光一さんは、実を言うと僕が作る次の映画に出ていただきたくて、お願いして出演してくださった一般の方なんです。これまで俳優経験はないですけれど、とてもいい雰囲気を持っている40過ぎの大型新人さんです。

――ほかの出演者さんたちも個性的な方がそろっていました。特に印象的な方がいれば教えてください。

吉沢(悠)さんの紅健一郎はロボット工学の天才ということで"天才ゆえにヘンな人"というイメージで演じていただきました。『マネーショート 華麗なる大逆転』(2015年)に出ていたクリスチャン・ベールがまさにそんなキャラクターで、参考にさせてもらいました。アンドロイド戦士のボーグは、『パイレーツ・オブ・カリビアン』にも出演していたという松崎悠希さん。この人は、日本の映画にはほとんど出たことがなかったそうなんです。マイルドな印象だったので、「坊主にして眉毛剃っていいですか?」と尋ねたらOKだったので出てもらいました(笑)。