「特番で復活」というアフターサービス

あらためて振り返ってみると、とんねるずとナインティナインという強烈な芸人がけん引しているために似た番組と思われがちだが、両番組の最盛期はまったく異なるキャスティングで勝負していた。

『めちゃイケ』が前身番組の『とぶくすり』から出演者を引き継いだほぼ芸人ばかりの総合バラエティであるのに対して、『みなさん』はアーティスト、俳優、アイドル、スタッフらを全面的に取り込んだイレギュラーな総合バラエティ。おぎやはぎやバナナマンら芸人を大量投入した現在の形になったのは、かなり後だった。

『めちゃイケ』は、総合バラエティの王道。「若手芸人たちが成長して人気者になる過程を見守る」という楽しみがあった。しかし、彼らが結婚し、子どもが生まれたほか、悩みを抱える姿も目の当たりにし、さらに多くの新メンバーが不発に終わったことで、視聴者はその楽しみが終わったことに気づいてしまう。

人気シリーズ「岡村オファーシリーズ」の取材に応じる岡村隆史

一方の『みなさん』は、人気女優が全身タイツを着て頭を叩かれたり、野猿や矢島工務店が誕生したりなど、「何が起きるか分からない」ビックリ箱のような楽しさがあったが、流れが変わりはじめたのは『食わず嫌い王』のヒット。皮肉にも『食わず嫌い王』が人気を集めはじめたころから、その楽しさはジワジワと失われていった。

ともに流行したキャラクターやゲームは数えきれず、「今もう一度見ても面白いのではないか」と感じるものも多い。クレームを恐れる気持ちも理解できるが、残りの放送で視聴者に復活してほしいコーナーを募集してみてはいかがだろうか。

そして来年の春以降は、『学校へ行こう!』(TBS系)のように、「数年に一度、特番として放送する」くらいのアフターサービスを見せてほしい。ファンを歓喜させるだけではなく、視聴率も期待できるし、これほどの番組を完全終了させる手はないだろう。

よりインパクトの強い新コピーを

フジテレビの亀山千広前社長(左)と宮内正喜社長

これでフジテレビは、亀山千広前社長が『笑っていいとも!』、今年6月に就任した宮内正喜社長が『めちゃイケ』らの幕を引くことになる。「王者・フジテレビの象徴だった長寿番組、そして総合バラエティはすべて終了した」と言えるだろう。

今年10月改編期のテーマは、「reboot(再起動)」だった。フジテレビはこれを機に、薄々引きずり続けてきた「『楽しくなければテレビじゃない』はやめました」と宣言して、よりインパクトの強い新たなコピーを掲げたほうが視聴者にも、再起動を印象づけられるのではないか。

残り約5カ月間。どうせ終わるのだから、思い切りハジけてほしい。あの番組のキャストとスタッフなら、そんなことを考えているのではないか。そんなお祭り騒ぎのカウントダウンを期待している。

■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2,000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。