【インタビュー】

『アウトレイジ』音楽・鈴木慶一、北野武の"引き算"を恐れる興奮「なんだ、これは」

1 『最終章』でも「この音いらない」

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映画『アウトレイジ 最終章』(公開中)のスタッフたちの言葉を記録し、「アウトレイジ」シリーズ、及び北野武監督率いる北野組の魅力を探る短期集中連載「暴走の黒幕」(第1回:北野武 第2回:森昌行P)。第3回は『座頭市』(03)以降、北野映画の"音"を担う音楽家・鈴木慶一に迫る。はちみつぱい、ムーンライダーズ、THE BEATNIKSなど音楽界のレジェンドともいわれる鈴木は、『アウトレイジ』(10)、『アウトレイジ ビヨンド』(12)、『アウトレイジ 最終章』の3部作で「恐怖」の新境地へとたどり着いていた。

北野監督との出会いは80年代までさかのぼる。『ひょうきんスペシャル』(フジテレビ系)の侍コントに山賊役で出演。奇しくも時代劇つながりでもある『座頭市』で日本アカデミー賞の最優秀音楽賞を受賞し、「恐怖」の扉はゆっくりと開かれた。北野監督の"引き算"によって導き出された楽曲がサントラへと集約された時。鈴木は「なんだ、これは」と自ら驚愕しつつ、音楽家としての喜びも噛みしめる。

『アウトレイジ』の音楽を担当した鈴木慶一 撮影:島本絵梨佳

イメージは「哀しいよね」の雑談から

――ついに「アウトレイジ」シリーズが完結を迎えました。鈴木さんの耳には、どのように伝わっていたんですか?

世の中には「3部作」といわれるものが沢山あるので、なんとなく3作目で終わるのかなと思ってましたね。台本を頂いて、そこに「最終章」と書いてあったので「あ、終わるんだ」と。『ビヨンド』の時には何も聞いていなかったんですよ。1作目のラストで大友が刑務所で刺されたから、「これで終わり」と思いました。でも、『ビヨンド』で生きていた(笑)。次から次へと出演者が死んでいって、『ビヨンド』では大友が間違いなく生き残った。だから、次も作るのかなという予感はしていました(笑)。

――ということは『最終章』よりも、『ビヨンド』の話が来た時の方が衝撃は大きかったんですね。

そうですね(笑)。

――そんな中で迎えた『最終章』。シリーズが終わるということに加えて、裏社会に生きる男たちの哀しみを象徴したようなメインテーマ曲でした。

確かに「哀しさ」は共通認識ですね。北野監督や森昌行プロデューサーをはじめ、スタッフの間では「哀しいよね」みたいな雑談がありました。

――毎作品、そのようにテーマを設定して楽曲制作に入るんですか?

特に具体的な指示はないんですよ。あったとしても、例えば『龍三と七人の子分たち』(15)では「タンゴでいきたい」ぐらい。いつもイメージの元となる一言は頂いて、それに即した3~4曲を作ります。ただ、監督の耳は別のところに向いていることもあって。監督の言葉をヒントに作った数パターンの曲でも、選ばれるのは最初の一言と違っていたりもします。でも、それがいいんですよ。具体的な音を聴いてイメージされるので。

――「哀しみ」といっても、かなり抽象的ですね。

「哀しみ」の感じ方は人それぞれですからね。言葉にできない。だから、監督もイメージを伝えるのは難しいと思うんですよ。当然、こちらも。ではどうすればいいのか。実際に作った曲を聴いてもらうしかない。

3作で共通しているのは、メインテーマがオープニングタイトル周りに使われることです。まずはそれを数曲作ることから取り掛かります。そのうちの1曲を別の場所に使ったり、結局は使わなかったりすることもあって、また作り直す時もあります。

最初に台本を読んでラッシュを観る。その中で、いろいろなパターンをイメージします。こちらの考えを数種類で提示して、そのうち監督の中でヒットすれば決まる。そこから発展させています。

――監督の心に響いた時は分かるものなんですか?

わかりますよ。「いいね」って。

――ずいぶんとあっさりですね(笑)。

そうですね。1作目は今から7年前になりますが、確認の仕方も技術的にかなり進歩しました。最初はCDプレイヤーを渡して、モニターで流す映像に合わせていました。今はPCを持ち込んで、映像に貼り付けたものを流してチェックしてもらっています。そして、その場で「この音いらないかな」で間引いて消したり、伸ばしたり、繰り返したり。そうやって最終テイクに近いものを早い段階から聴いていただいています。

監督立ち会いの確認「ヒリヒリします」

――北野作品は5作目ですが、監督のイメージしていることも掴みやすくなりましたか?

過剰なメロディやリズムは必要ない。トゥーマッチなものは不要なんです。ドラムとベースで作るリズムを寸断してしまったりとか。あとは音響効果の柴崎(憲治)さんが、車の走る音を低音でいれたりするので、ベースもいらなくなるんですよね。通常、ベースでリズム的なノリを出すんですけど、結局はなくなるから最初から入れなくなりました(笑)。

――柴崎さんとは『座頭市』(03)以降、5作品でタッグを組まれていますね。

私は音楽的なところから外れて音響効果さんの領域も作ってしまうので、柴崎さんとのやり取りがとても重要なんです。作品を重ねるにつれて、柴崎さんも「この人、ここまでノイズのような音を作ってきたのか」と思われているんじゃないかな(笑)。

効果音が完成するのは、制作過程での終盤です。映画は、最終ダビングでセリフと効果音と音楽を重ね合わせて、1つのサラウンドミックスを完成させるイメージ。具体的に効果音をハメていくのはそこなんです。最後の最後。そこで修正が発生するので、PCを持ち込んでその場で手直しをする必要があります。

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インデックス

目次
(1) 『最終章』でも「この音いらない」
(2) 「おしゃべりではない音楽」とは
(3) 完成したサントラ「とんでもないものを作ってしまった」
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