開幕が目前に迫る「東京モーターショー2017」(TMS2017)。クルマの電動化と自動化がトレンドとなり、とかく動きの激しい自動車業界の中で、東京ショーはどのような場を目指して行くのか。主催する日本自動車工業会(JAMA)の会長で日産自動車社長の西川廣人氏が語った。

JAMA定例会見でTMS2017について語った西川氏(中央)

“つながるクルマ”で何を見せるのか

「第45回東京モーターショー2017」の会期は10月27日から11月5日まで。一般公開は10月28日からだ。テーマは「世界を、ここから動かそう。BEYOND THE MOTOR」で、世界10カ国から計153の企業・団体が参加する。会期中には70件超のワールドプレミア(クルマなどの世界初公開)が予定されている。

TMS2017の主催者テーマ展示が「TOKYO CONNECTED LAB 2017」と銘打っていることから考えると、今回のショーで焦点が当たる1つの重要なテーマは「コネクテッドカー」(つながるクルマ)になりそう。このテーマ展示で注目したいのは「THE MAZE」というVRを使ったコンテンツだ。

「TOKYO CONNECTED LAB 2017」では「THE FUTURE」「THE MAZE」「THE MEET UP」の3つのコンテンツを用意する(画像は展示のイメージ)

「THE MAZE」はPlayStation VRを装着した参加者が、ヴァーチャル空間に構築された未来都市をコネクテッドカーに乗って走行するコンテンツ。デモ映像ではクルマとクルマがネットでつながる「車車間通信」が実現することで、例えば死角から緊急車両が出てくるような状況で自車が停車したり、あるいはすれ違ったクルマと情報交換することで周辺の交通状況が把握できたりと、コネクテッドカーの登場によりモビリティに起こりうる変化を分かりやすく見せていた。

コネクテッドカーが一般化すれば、交通事情はどのようになるのか。「THE MAZE」を体験することでイメージがつかめるかもしれない

「世界一のテクノロジーモーターショー」に向けて

一時は入場者数が200万人を超えたこともあるTMSだが、過去3回の客入りは80万人~90万人レベルで推移。中国などで自動車ショーが活況であるのに比べ、TMSは米国の自動車メーカーが撤退するなど、存在感が低下しているのではとの見方もある。その点を報道陣に指摘された西川氏は、「規模ではなく質」と答えて質重視の姿勢を鮮明にした。

自動車ショーは参加企業数やワールドプレミアの件数など規模で評価されがちだが、西川氏はTMSを日本企業の技術のショーケースとし、海外勢もTMSを世界に先駆けた発表の場として活用したくなるような「世界一のテクノロジーモーターショー」に育てていきたいと意気込みを示す。「存在感低下に危機感は」との問いに対しては、日本の自動車メーカー各社が先進的な技術を有しているにも関わらず、TMSでは必ずしも発信しきれていなかった状況について、危機感というよりも「もったいない」という感じを抱いていると語った。

日本メーカーがTMS2017に何を出展するかについては、三菱自動車工業がAI技術を搭載したSUVタイプのハイパフォーマンス電気自動車(EV)を出すことと、スズキがコンパクトSUV「e-SURVIVOR(イー・サバイバー)」などを出すことくらいしか分かっていないが、各社がポテンシャルを遺憾なく発揮したショーになるのかどうか、今から開幕を楽しみにしたい。

モーターを搭載した四輪独立駆動のコンパクトSUV「e-SURVIVOR」