夏本番。各地の海は、多くの海水浴客でにぎわっている。しかし近年は、紫外線の健康への影響が大きく取り沙汰されていることや、娯楽が多様化したことなどもあるのか、若い世代を中心に"海水浴離れ"が進んでいるという話も聞く。そこで、今回は海水浴以外の海の楽しみ方を提案する意味も込めて、湘南エリアへ"海辺を走るサイクリング"に出かけてみたいと思う。

湘南海岸公園内も自転車で通行可能だ

マウンテンバイクに乗ってサイクリングコースへ

湘南エリアで海沿いのサイクリングを楽しむのにオススメなのが、江の島から茅ヶ崎の柳島海岸までのおよそ10kmのコースだ。この内、江の島から藤沢市内を南北に流れる引地川の河口付近までの江の島の西浜は、「湘南海岸公園」として整備されており、公園内は自転車の通行が可能になっている。また、引地川を渡った先の鵠沼海岸から柳島海岸までは、自転車用のサイクリングコースが整備されており、安全にサイクリングを楽しめるのだ。

さて今回、自転車のレンタルは、江ノ電の江ノ島駅または湘南モノレールの湘南江の島駅から150mほどの場所にある「ジェリーズ」で、マウンテンバイクを借りた。同店の一番人気はマウンテンバイクだが、手軽な折りたたみ自転車や、遠方へのサイクリングに最適なクロスバイクのレンタルも行っている。

「ジェリーズ」オーナーのMASH(マッシュ)さん

準備ができたら、江ノ電の江ノ島駅前から「すばな通り」商店街を走り、まずは湘南海岸公園を目指そう。すばな通りを抜けると、正面に江ノ島が大きく見え、国道を渡ると、多くの海水浴客でにぎわう湘南海岸公園の入口がある。公園内の道は自転車専用に整備された道ではないため、敷石の振動がサドルに伝わり、少しお尻が痛く感じるが、それを除けば、走りやすさの点では問題ない。

途中に津波の避難タワーがあり、通常時は展望台として利用されているので、上まで登ってみるのもオススメだ。東に目を向けると、海上に横たわる江ノ島が、潮を噴き上げながら沖に向かって泳ぐクジラのようにも見える。

公園内を2kmほど走り、引地川に架かる鵠沼橋を渡った先で、車道と並行する細道に入ると、その先にヨットの帆をかたどった車止めが見える。ここが、鵠沼海岸~柳島海岸を結ぶサイクリングコース(7.7km)の起点になっている。

鵠沼橋を渡ると、サイクリングコースの起点の表示がある

●information
ジェリーズ(Jerry's)
住所:神奈川県藤沢市片瀬4丁目17-7
定休日:年中無休
営業時間:レンタサイクルは9:00~18:00まで
※レンタルの予約は使用日前日の21時までにメールで

烏帽子岩が最も大きく見える場所は?

サイクリングコースを走り出すと、海岸の砂が道のすぐ脇まで迫り、まるで砂丘のような景色の中を走ることになる。風が吹けば、サイクリングコースも砂に覆われてしまうが、地元の人やサーファーが毎朝、砂をどけてくれているのだという。とは言え、ときおり砂が積もっている場所もあるので、自転車の車輪が砂にとられて転ばないように注意が必要だ。

砂丘のような景色の中、サイクリングコースを走る

サイクリングコースのスタート地点から500mほど行くと、右側にJR辻堂駅の発車音にもなっている、名曲「浜辺の歌」の作詞場所を示す説明板が立っている。「浜辺の歌」の作詞者である林古渓は、幼少期を過ごしたこの藤沢市辻堂付近の海の景色を思い浮かべながら、大正2(1913)年に「浜辺の歌」を作詞したと説明が書かれている。

左に海、右に防砂林の松林を見ながら、さらに先へとペダルを漕いでいけば、道は藤沢市から茅ヶ崎市へと入る。左手前方の沖合には、茅ヶ崎のシンボル「烏帽子岩(えぼしいわ)」が、次第に大きく見えてくる。

茅ヶ崎ヘッドランド(Tバー)付近から見た、沖に浮かぶ烏帽子岩

この辺りで休憩をとるなら、「茅ヶ崎ヘッドランド」がいいだろう。茅ヶ崎ヘッドランドは、砂浜の浸食を防ぐために設けられたアルファベットのT字型の突堤で、通称「Tバー」と呼ばれている。

Tバーは、テトラポットと岩を組み合わせてできており、歩くのには足元に注意が必要だが、突端付近まで行くと、烏帽子岩がかなり大きく見える。陸から烏帽子岩がここまで大きく見られるスポットは、ほかにはないだろう。

さて、Tバーからサイクリングコースを1kmほど行けば、人気の海水浴場「サザンビーチちがさき」に到着する。ネーミングは言うまでもなく、茅ヶ崎出身の人気グループ「サザンオールスターズ」にちなむものだ。ビーチに建ち並ぶ海の家は、食事や休憩だけでも利用できるので、強い陽射しで疲れた身体を癒やしてから、サイクリングコースのゴール・柳島海岸を目指すことにしよう。

サザンビーチの「茅ヶ崎サザンC」モニュメント。「縁(円)結びの輪」「思いやりの輪」をイメージしている