国によって違うセダンの立ち位置
筆者は今年、米国、中国、タイ、シンガポール、フランスと海外5カ国を訪問した。その経験から言えるのは、フランスを除けば依然としてセダン人気が根強かったことだ。
アジアを走る車両は米国より小柄だけれど、居住スペースと荷室が完全に分かれ、SUVやミニバンのように背が高くない分、乗り心地やハンドリングでも有利なセダンが一定の評価を受けていることは理解できた。
一方の北米では、SUVやミニバンがファミリーカーとしての役目を担ってくれるおかげで、セダンはかつてのクーペのようにパーソナルカー的な位置付けにシフトしつつある。こうした状況にいち早く反応したのが欧州プレミアムブランドで、1980年代の日本で流行ったクーペのように、低く流麗なスタイリングの4ドアを相次いで送り出した。
セダンの魅力を再定義した新型カムリ
対するカムリは、これまでは「大きな実用車」であり続けてきたと筆者は感じている。15年連続ベストセラーという快挙は、それが支持されてきた証拠だろう。SUV人気は盛り上がりつつあるが、キープコンセプトでも相応の数字は出せたのではないかと考えている。
しかし前述したように、SUVはファミリーカーとしても選ばれており、従来その任務を担ってきたセダンはパーソナル性を高める方向にシフトしつつある。しかもトヨタでは、新型カムリの開発と並行して、クルマづくりの構造改革であるTNGAも進行しつつあった。そこでトヨタは、TNGAをすべて注ぎ込み、ゼロからカムリを一新した。
世界的に見ればセダンはさほど凋落してはいない。だからガチンコ勝負するのではなく、SUVでは表現できないデザインや走りをアピールしようとトヨタは考えた。つまり、セダンの魅力を再定義することで復権を目指したのが新型カムリではないかと思っている。