スバルの「アイサイト」に「ツーリングアシスト」という新機能が追加された。筆者も体験試乗をしたが、実によくできた機能であり、スバルの言うリアルワールド(現実の交通環境)で安心して利用できる制御に仕上がっていた。新機能の詳細は別のリポートに譲るとして、今回はアイサイトとスバル車の今後について考えてみたい。

新機能「ツーリングアシスト」で進化したスバルの「アイサイト」

画像処理は他者が「追いつけない」水準に

スバルの運転支援の特徴は、フロントウィンドウ上端の中央部に、ステレオカメラと呼ぶ2つのイメージセンサーを搭載し、その情報のみから状況を判断、運転を操作するシステムであることだ。今後、自動運転へ向けてはレーダーなど追加のセンサーを装備する可能性を否定しないが、ともかく、世界の自動車メーカーが運転支援で同様の機能を提供している中、ステレオカメラのみで実現しているのはスバルのみである。

スバルがステレオカメラで強みを持つのは、アイサイトの前身「アクティブ・ドライビング・アシスト(ADA)」の実用化に先立つ1989年から、ステレオカメラにこだわって開発を続けてきたからだ。それは運輸省(現在の国土交通省)が、産官学の関係者による先進安全自動車(ASV:Advanced Safety Vehicle)推進計画の第1期(1991~1995年度)を立ち上げるより前のことで、すでに28年の経験を積んでいる。

長きにわたりスバルが磨いてきたステレオカメラの技術

このように早くから開発に取り組んできたこともあり、スバルは画像認識や画像解析など全てを社内で独自に確立してきた。画像処理に関する技術は、他の自動車メーカーの技術者が「とても追いつけない水準にある」と異口同音に評価するほどだ。

リアルワールド重視は不変

また、リアルワールドを重視する視点もずっと変わらない。例えば危険回避アシストについても、事故が多いのは交差点であり、その低い速度で幅広い視野から危険を察知し、自動ブレーキをかけて事故を回避する機能を、アイサイトはいち早く採り入れた。それはレーダーではなく、ステレオカメラによる広角の視野をいかした成果であった。

2014年にアイサイトはバージョン3(Ver.3)に進化し、ステレオカメラはカラー画像となった。これにより、前を走るクルマのブレーキランプ点灯を認識することが可能となり、車間距離が縮む前に減速する準備を整えられるようになった。レーダーで車間距離を管理する他のシステムに比べ、初動が早くなり、追突を予防するブレーキ操作が急でなくなることから、システムを利用する際の安心感は高まった。

実際にアイサイトを公道上で利用して実感するのは、まさしくクルマも目で前を見てくれているという感触があることだ。前のクルマのみならず、その前や、さらに先のクルマが減速し始めたのを運転者が目で捉えるのと同じように、アイサイトも、減速が必要になるかもしれないと構えるかのような感覚を覚えるのである。

そこに、自分の運転に近いという親近感も生まれる。あるいは、自分よりずっと安全に気を配ってくれているとの信頼も生まれるのだろう。