今年で2回目を迎えたアドバタイジング・ウィーク・アジアで、4月に社名を改めたばかりのSUBARU(スバル)の代表取締役社長、吉永泰之氏が基調講演を行なった。テーマは「個性を活かして生きる」。マーケティングや広告のイベントで、自動車会社の社長は何を話したのか。講演後の取材を含めて報告しよう。

アドバタイジング・ウィーク・アジアの基調講演に登壇したスバルの吉永社長

自動車メーカーから異例の登場

5月29日から6月1日まで、東京・六本木の東京ミッドタウンで開催された「Advertising Week Asia 2017(アドバタイジング・ウィーク・アジア)」は、ニューヨークやロンドンなどで開催されているマーケティング、広告、エンジニアリング、エンターテインメントなどをテーマとしたイベントのアジア版だ。

このイベントの基調講演に、スバル代表取締役社長の吉永泰之氏が登壇することを知ったのは1カ月前。マーケティングやデジタルエンジニアリング関係の登壇者が多い中では異例だ。何を話すのだろうか。興味があって六本木に足を運んだ。

吉永氏が掲げた基調講演のテーマは「個性を活かして生きる」。我々は何者か、スバルの戦略、我々は今後何を目指していくか、というテーマで話を進めていった。

5年で売上高が倍増、販売台数は100万台を突破

まずはスバルの最近の状況が紹介された。売上高は5年前の倍以上となり、2008年度には赤字だった営業利益は、2016年度実績で4108億円の黒字にまで成長した。利益率は製造業としては異例の高さだ。5年前に64万台だった販売台数は、2016年度実績で100万台を突破。2009年に「レガシィ」の全幅を広げたことが成長のきっかけになったという。

販売台数を示すグラフは右肩上がりだ

我々は何者かという説明では、ちょうど100年前に飛行機会社としてスタートし、第2次世界大戦後に飛行機の生産が禁止される中でさまざまなものづくりを始め、その中からスバルブランドの自動車が主力に育ったことを紹介。今年4月に社名をスバルに変更したという説明を行なった。この過程で吉永氏は、スバルの特徴として次の3点を挙げた。

飛行機会社としてのルーツを紹介するスライド

「飛行機会社の思考回路を持つこと、その結果として技術オリエンテッドな会社であること、そして高コスト体質であることです。つまりコストで戦うのは厳しいと感じていました。ただ、高コストというと一般的には欠点と捉えられますが、逆にこれを個性として戦略を考えることもできると思っていました」(以下、かっこ内は吉永社長の発言)