現在、豊洲の新劇場・IHIステージアラウンド東京で上演されている『髑髏城の七人』。“花・鳥・風・月"と4つのシーズンに分け、それぞれ異なるキャスト、脚本・演出で1年3カ月にわたる長期公演が行なわれている。1年以上の公演でありながら、チケットはすぐに完売。当日券を求める人が列をなす事態となっている。

『髑髏城の七人』は、劇団☆新感線の代表作で、1990年の初演以来、7年ごとに再演されている。なぜ『髑髏城の七人』がここまで求められるのか、演出家のいのうえひでのりに話を聞いた。

■いのうえひでのり
劇団☆新感線 主宰・演出家。80年に劇団☆新感線を旗揚げ。以降、ドラマ性に富んだ外連味たっぷりの時代活劇"いのうえ歌舞伎"、生バンドが舞台上で演奏する音楽を前面に出した"Rシリーズ"、作・演出を手掛ける笑いをふんだんに盛り込んだ"ネタもの"など、エンターテイメント性にあふれた多彩な作品群で"新感線"という新たなジャンルを確立させた。ホリプロ公演『熱海殺人事件』(15-16)の演出において第50回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。

『髑髏城の七人』しかなかった

――今回、1年3カ月という長丁場に、『髑髏城の七人』を選んだ理由を教えてください。

最初話があった時にまず、1年以上同じ作品をやるのは、日本では難しいなと思ったんですよ。だから何本かやらなければいけないという話になり、同じ作品で何本かやるなら、うち(劇団☆新感線)のレパートリーには『髑髏城の七人』しかなかった。やってみて正解でしたよ。この作品しかないです。

話の骨格がしっかりしているので、応用が効く。七人のキャラクターの設定をちょっとずついじっても、骨格がぶれないので、面白く4シーズンで見せられます。

――4シーズンに分けて、出演者や演出を変えるというのも、驚きでした。

海外と違って、ロングランできるような演目がなかなか日本にない、というのが大きいですよね。例えば『エリザベート』のようにチケットが取れない作品でも、1年以上の公演は難しいと思うんですよ。やっぱり日本は、作品より俳優さんにお客さんがついてるので、ロングランで、しかも豊洲の辺鄙な土地に人を集めようと思うと、改めて「『髑髏城の七人』を4シーズンやる」という作戦しかなかったと思います。

――『髑髏城の七人』があってよかった、というお気持ちですか。

本当に、『髑髏城の七人』しかなかったですね。阿修羅(『阿修羅城の瞳』)じゃ難しかったと思います。このシアターの醍醐味として、場面転換がいろいろできて、しっかりと作りこんだセットで見せられるという点でも『髑髏城の七人』しかなかったなあと、"Season花"が開いてみて、改めて思いました。なんだかんだ言っても、ずっと再演している作品って、これだけなんですよね。キャストを変えて、新たに創造できる、間口の広さがこのホンにはあるんだと思います。