IntelとMicronが開発した次世代メモリ技術である「3D XPoint」を用いた「Optane」ブランドの製品が現れ始めた。エンタープライズ向けにはOptane SSDとしてリリースされていたが、5月上旬にコンシューマ向けにも「Optane Memory」という形で登場した。今回はOptane Memoryの32GBのサンプルを用いて、PCのパフォーマンスアップにどれだけ効果があるのか調べるとともに、賢い使い方を探っていきたい。

コンシューマ向け3D XPointの第1弾は「キャッシュ用」。だから安い

Optane Memoryは、簡単に言えばストレージ用に設計されたキャッシュだ。かつて、SSDの容量が少なく高価だった時代に、小容量のSSDやあるいはUSBメモリをキャッシュとしてHDDを高速化する技術があった。

ただし、どちらもNANDフラッシュメモリを用いているため、キャッシュとして頻繁に書き換えを行なうと、NANDの書き換え寿命の点で不安があった。3D XPointは、NANDと比べると書き換え寿命が長いために、この問題が緩和される。

また、メインメモリをキャッシュとして用いる手法もあるが、電源を失うとデータが消えるメインメモリに対し、3D XPointは不揮発なのでデータを保持できる。こうしたところが従来の技術に対するアドバンテージとなる。

現時点で投入されているOptane製品のスペックを以下にまとめておこう。スペック表にはデータセンター向けのIntel Optane SSD DC P4800Xと、通常のNANDフラッシュメモリを用いたIntel SSD 750の400GBモデルも添えてみた。

製品名 Optane Memory Optane Memory Optane SSD DC P4800X Intel SSD 750
容量(GB) 16 32 375 400
シーケンシャルリード(MB/s) 900 1,350 - 2,200
シーケンシャルライト(MB/s) 145 290 - 900
ランダムリード(IOPS) 190,000 240,000 550,000 430,000
ランダムライト 35,000 65,000 500,000 230,000
消費電力(アクティブ) 3.5W 3.5W - 12W
消費電力(アイドル) 1W 1W - 4W
インタフェース PCIe 3.0x2 PCIe 3.0x2 PCIe 3.0x4 PCIe 3.0x4
保証期間 5年 5年 5年 5年

まず、シーケンシャルリード/ライトの速度については現行のPCI Express 3.0 x4接続のNVMe SSDの域に達していない。ただしSSDの速度に関してはチップ枚数が大きく関わるため、16GB/32GBという少ないチップ数では仕方がないと言える。

ランダム性能に関して言えば、この少ないチップ枚数でもリードはPCI Express 3.0 x4 NVMe SSDの半分に相当するわけで、3D XPointのポテンシャルをうかがい知ることができる。ライトについても、16GB→32GBで大きくIOPS値が大きく向上している。

ここを見ると、Optane MemoryがOptane SSDになった時にどのようなパフォーマンスになるのかが予想できる。実際、DC P4800Xの500,000 IOPSは、Intel SSD 750 400GBモデルの230,000 IOPSの倍以上である(1.2TBモデルはこれよりも大きい290,000 IOPS)。

消費電力は、SSD自体小さい値なのであまり気にするところではないが、Optane Memoryは容量の小ささもあってIntel SSD 750よりも大幅に小さいようだ。

書き込み上限回数も気になるところだが、これに関しては製品ごとに表記が分かれていたため、説明を交えつつ紹介する。Optane Memoryは、それぞれ182.5 TBと記載されている。一方でIntel SSD 750は、70 GB/日との記載だ。

Intel SSD 750は5年間保証なので、これを基に計算すると127.75 TBとなる。Optane Memoryは容量が小さい分、同じ領域における書き換え回数が増えるわけだが、それでいて400GBのNANDフラッシュメモリ以上に書き換えが可能ということになる。キャッシュとして用いるため、通常の用途よりも書き換え頻度が高まる可能性はあるだろうが、製品としてはOptane Memoryも5年間保証なので、およそこのくらいの使用期間はカバーできるのだろう。

インタフェースについても触れておこう。Optane MemoryはPCI Express 3.0 x2接続だ。最近ではNVMe SSDの多くがPCI Express 3.0 x4接続なのでその半分ということになる。しかし、この点については、チップ数が少なく転送速度もそこまで速くはないため、現状では問題ない。

逆に、3D XPointのポテンシャルからすれば、Optane SSD側がPCI Express 3.0 x4で足りるのかどうかのほうが疑問だ。Optane SSDが本格的にコンシューマ市場に降りてくるころには、PCI Express 4.0をはじめとする次世代の接続インタフェースへと置き換わっていることも予想できる。

スペックの紹介は以上だが、Intel Optane Memoryを利用できる条件についても説明しておこう。現状ではなかなか厳しいハードルがある。

CPUは第7世代Coreプロセッサ(Kaby Lake世代、PentiumやCeleronはサポートリストに掲載されていない)、チップセットはIntel Z270/H270/Q270/Q250/B250/C236、そして当然だがマザーボードは、PCI Express 3.0 x2に対応したM.2スロットが搭載されているモデルが必要となる。つまり、最新世代かつそれなりのスペックが求められている。また、現状では起動ドライブにのみ適用できるようだ。