役作りが第一

――今回の撮影にあたって、土屋さんが函館でウィークリーマンションを借りて臨んでいたという話を聞いたのですが、生活はいかがでしたか?

原作もので大事なのは、再現性だと思うんですけど、どんなにカコちゃんの外見に近づきたいと思っても近づけない瞬間があって。だからこそ心はカコちゃんに近づきたくて、ウィークリーマンションを借りました。今回は結婚から始まるラブストーリーなので、自分でごはんを作って一人暮らしをして、という感覚で、少しでも近づくことができたのかなと思います。

――新婚生活の役作りあっての一人暮らしだったんですね。

それが第一で、ウィークリーマンションを借りさせていただきました。実際にすごく楽しかったです。そんなにお部屋が広いわけでもないんですけど、なるべく良い香りがしたらいいなと思って、香りものを充実させました(笑)。

――廣木監督も「カコちゃんが家を飾っているシーンが良かった」というお話をされていました。

よかったです!

神は細部に宿る

――舞踊学を専攻されている土屋さんは昨年末の紅白歌合戦では、郷ひろみさんのステージにダンサーとして参加されていましたが、ダンスと演技、表現として共通する点はありますか?

感情を出す回路としては似ているのかもしれません。あとはお芝居をする時も、感情だけにならないように心がけています。手先がどうしようもなく震えてしまうとか、指先まで神経を入れる、感情を巡らせるというのは、ダンスから演技につながる点かなと思います。

ただ、そうなるにはやっぱり、練習が必要で。『鈴木先生』という作品で長谷川博己さんが「『神は細部に宿る』という言葉が本当に大事だと思う」と言ってくださって、自分も本当にそうだなと思います。ちょっとした動きで、より細かい感情が出てくるときもありますし、本当に修行ですね。

――ダンスが演技に生きているんですね。逆に演技がダンスに生きることもありますか?

踊りでいったら、私は本当に未熟者で、私より上手い人は大学にもいっぱいいるんです。でも自分にできるのは、女の子の感情を伝えることだと思います。

紅白歌合戦の時は、郷ひろみさんと感情を通わせて、郷ひろみさんがより素敵に見えることが大事だなと思って、気持ちと表情と動きをつなげることを意識しました。私はもともと陸上やバスケを行っていたのでガニ股なんですが、演じた女の子はすごくかわいらしい子なので、内股を意識したりとか(笑)。指先が丸まりやすいんですけど、薬指に神経を巡らせると、気持ちも遠くまで行く。そういうことが、すごく大事なんだなと思います。

――様々な作品でヒロインされていますが、演じ分けなどで気をつけていることはあるのでしょうか。

そこが苦しくて……。どの作品もすごく大事だし、次に入る作品も大事にしたいですが、切り替えがどんどん苦しくなってくる部分もあります。でも、一つの役が終わった後に本当に悲しいと思うくらいまで行った方が、切り替えはしやすいなと思います。もう少し技術があれば、うまく調整ができるのかもしれないのですが、今の私にはやりきることしかできません。一つのシーンをいかに考えて、一つ一つ真実にしていくのか。考えることは大事だなって。

――それは何かきっかけがあってそのようになったんでしょうか。それとも、はじめからですか?

一回一回ぶち当たりながら、「こうした方がいいのかな」とか、「もっと愛情をたくさんもってやった方が気持ちが入るな」など、考えるようになってきました。ただ、演技でも人と話をするときでも、相手の目の奥を見るように心がけるのは、最初に出演した『トウキョウソナタ』の時から思っていました。より大事なシーンは、自分が自分が、にはならずに、目の奥を見て相手がどう思っているのか、受け取るということを目標にしています。

映画『PとJK』情報

女子高生で恋愛初心者のカコ(土屋太鳳)は、ある日、警察官の功太(亀梨和也)と出会う。カコは男らしい功太に惹かれ、ふたりの恋愛がスタートするかに見えたが、功太はカコが実は女子高生だと知り戸惑う。職務上付き合うことができないので、いきなり「結婚しよう」とプロポーズ。ふたりの内緒の結婚生活が始まった。3月25日公開。